- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041069196
作品紹介・あらすじ
大坂の炭問屋・木津屋の主の吉兵衛は、稼業は番頭らに任せ、自らは放蕩の限りを尽くしてきた。そこへ実の兄・久佐衛門の訃報が伝えられる。実家である薪問屋・辰巳屋へ赴き、兄の葬儀の手筈を整える吉兵衛だったが、辰巳屋の大番頭・与兵衛や甥の乙之助に手を引くように迫られると、事態は辰巳屋の相続争いに発展する。上方で起こった相続争いの噂はやがて江戸に届き、将軍・徳川吉宗や寺社奉行・大岡越前守忠相の耳に入る一大事に。将軍までも巻き込んだ江戸時代最大の疑獄事件の結末は――。
感想・レビュー・書評
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久しぶりの朝井まかてさん。このところ初めての作家さんが多かったので、故郷に戻ったかのような馴染みの良さに、すぐに物語の世界に没頭することができた。
前半はのんびりした大阪のお店ものかと思いきや、一転、恐ろしい展開に。これは時代小説というより、ミステリーかサスペンスか。読み終わってから知ったのだが、史実を元にしているとのこと。実際にあったことだとは信じ難いほどの恐怖譚だった。
起きていることは一つなのに、人によって見え方は全く違う。朝井まかてさんの力で、しぶとく逞しく生き抜く力強い物語として締められていたが、実際の恐怖と悲憤はいかばかりだっただろうとの苦みは消し去れなかった。 -
大坂の商家の相続争いが発展し、江戸で裁かれるに及ぶという大ごとになってしまった、“辰巳屋一件”が題材。
12年程前に、松井今朝子さんの「辰巳屋疑獄」を読みましたが、そちらとはまた違った切り口での展開でした。
この本では吉兵衛寄りな感じに描かれていることもあって、吉兵衛に同情的な気持ちを持ってしまい、彼がどん底まで落ちていく様が読んでいて辛かったです。
江戸の大岡越前守忠相サイドからも描かれていますが、大坂商人と、江戸の武家との価値観の違いが興味深く思いました。 -
まかてさんの時代小説は、相変わらずの読みごたえ。特に牢屋の描写がエグかった!
『光圀伝』の樽ネズミを思い出しました。 -
いつもながらの文章の美しさは堪能できましたが、ストーリが好きでない。主題がはっきりしないので語りたいことがぼやけて散漫な印象。著者作品には珍しく凡庸な一作。
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浅学な私ゆえ辰巳屋騒動など知る由もなく上方の商家のボンボンの相続争いの冒頭はクッソ詰まらない物語にしか映らなかった。
そんなことで出鼻をくじかれるものの巧みなペン捌きに徐々に引き込まれ真の面白さに気付くのは吉兵衛が投獄されるあたりからか。
吉宗、大岡越前らビッグネームの登場とともになぜこれほどの公儀世間を巻き込む大騒動になるのかのミステリー要素も加わり囚われの身の吉兵衛の一挙手一投足から目が離せなくなる。
女流が描く一世一代の男意気は痛快そのものなのだがラストはやっばり恋女房の手のひらで転がされ…まかて姐さん天晴れである -
司馬遼太郎賞
第22回受賞作!
江戸時代最大級の贈収賄事件「辰巳屋騒動事件」を描いた大作が堂々の受賞!