悪玉伝

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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041069196

作品紹介・あらすじ

大坂の炭問屋・木津屋の主の吉兵衛は、稼業は番頭らに任せ、自らは放蕩の限りを尽くしてきた。そこへ実の兄・久佐衛門の訃報が伝えられる。実家である薪問屋・辰巳屋へ赴き、兄の葬儀の手筈を整える吉兵衛だったが、辰巳屋の大番頭・与兵衛や甥の乙之助に手を引くように迫られると、事態は辰巳屋の相続争いに発展する。上方で起こった相続争いの噂はやがて江戸に届き、将軍・徳川吉宗や寺社奉行・大岡越前守忠相の耳に入る一大事に。将軍までも巻き込んだ江戸時代最大の疑獄事件の結末は――。

感想・レビュー・書評

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  • 【オンライン配信】令和2年度 大阪大学司馬遼太郎記念学術講演会 | 大阪大学 21世紀懐徳堂
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    朝井まかて『悪玉伝』刊行記念インタビュー | カドブン
    https://kadobun.jp/feature/interview/116.html

    悪玉伝 朝井 まかて:文芸書 | KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/321801000186/

  • 久しぶりの朝井まかてさん。このところ初めての作家さんが多かったので、故郷に戻ったかのような馴染みの良さに、すぐに物語の世界に没頭することができた。
    前半はのんびりした大阪のお店ものかと思いきや、一転、恐ろしい展開に。これは時代小説というより、ミステリーかサスペンスか。読み終わってから知ったのだが、史実を元にしているとのこと。実際にあったことだとは信じ難いほどの恐怖譚だった。
    起きていることは一つなのに、人によって見え方は全く違う。朝井まかてさんの力で、しぶとく逞しく生き抜く力強い物語として締められていたが、実際の恐怖と悲憤はいかばかりだっただろうとの苦みは消し去れなかった。

  • 大坂の商家の相続争いが発展し、江戸で裁かれるに及ぶという大ごとになってしまった、“辰巳屋一件”が題材。

    12年程前に、松井今朝子さんの「辰巳屋疑獄」を読みましたが、そちらとはまた違った切り口での展開でした。
    この本では吉兵衛寄りな感じに描かれていることもあって、吉兵衛に同情的な気持ちを持ってしまい、彼がどん底まで落ちていく様が読んでいて辛かったです。
    江戸の大岡越前守忠相サイドからも描かれていますが、大坂商人と、江戸の武家との価値観の違いが興味深く思いました。

  • 時は徳川吉宗の時代。
    大坂で実際に起こった江戸時代最大の贈収賄事件「辰巳屋騒動事件」を描いたもの。

    上方の町人の間では当然のように行われる「ご挨拶」「根回し」として贈り物や饗応の風習が、幕府を敵に回す大疑獄事件に発展するとは驚いた。
    元は単なる商家の相続争いなのに、放蕩息子へのお仕置きにしては随分と手厳しい。
    「質素倹約」の吉宗の時代でなければここまでの騒ぎにはならなかったろうに。
    大坂の常識は江戸の非常識…大坂と江戸の感覚の対比が面白かった。
    そして現代にも通じる「忖度」。
    時代は違っても金や権力が絡むと「よしなに図る」人は何処にでもいるものだ。

  • 江戸時代最大の贈賄事件という史実「辰巳屋騒動」を舞台にした小説、この事件のことはこの本を読むまで全く知らなかった。

    なので、主人公吉兵衛は苦難の数々を乗り越えて、最後には唐金屋と江戸幕閣を向こうに回して訴訟も商売も大勝利!…みたいなストーリー展開だと信じ切っていた。
    だから、正直後味が悪かった。凄惨な牢屋のシーンも唐金屋一味の陰湿なやり口も、逆転劇でスカっとすると思うから辛抱して読めたのになぁ。

    大岡越前も落ち目だし、暴れん坊将軍も贔屓の引き倒しやし、ラストがほのぼのしてるという他の人の感想も俺にとっては「こんなん夫婦愛か?」やし…なんだか歯がゆい小説。
    それでも、読んでる間はグイグイ引き込まれたあたり、朝井まかての小説匠技だろうな。好みではないストーリーだが小説としては上出来。こういうの一番やっかい(笑

  • まかてさんの時代小説は、相変わらずの読みごたえ。特に牢屋の描写がエグかった!
    『光圀伝』の樽ネズミを思い出しました。

  • いつもながらの文章の美しさは堪能できましたが、ストーリが好きでない。主題がはっきりしないので語りたいことがぼやけて散漫な印象。著者作品には珍しく凡庸な一作。

  • 浅学な私ゆえ辰巳屋騒動など知る由もなく上方の商家のボンボンの相続争いの冒頭はクッソ詰まらない物語にしか映らなかった。
    そんなことで出鼻をくじかれるものの巧みなペン捌きに徐々に引き込まれ真の面白さに気付くのは吉兵衛が投獄されるあたりからか。
    吉宗、大岡越前らビッグネームの登場とともになぜこれほどの公儀世間を巻き込む大騒動になるのかのミステリー要素も加わり囚われの身の吉兵衛の一挙手一投足から目が離せなくなる。
    女流が描く一世一代の男意気は痛快そのものなのだがラストはやっばり恋女房の手のひらで転がされ…まかて姐さん天晴れである

  • 司馬遼太郎賞
    第22回受賞作!
    江戸時代最大級の贈収賄事件「辰巳屋騒動事件」を描いた大作が堂々の受賞!

  • 重厚な物語。史実に基づいて書かれているのですが、とる立場が違うと、浮かび上がる人物像も全く違ってくる。この物語で行くと吉兵衛はとても魅力的で、かつ強靭な精神を持ちなおかつ狡猾さも持ち合わせる人。ただ、何となく好きになれないまま読了しました。登場人物の誰一人にもあまり良い印象を持たなかった。どっちもどっち。誰もが皆自分大事。将軍までが出てきて、壮大な騒動。私は辰巳屋一件を知らなかったけれど、それぞれの対立が色んな顛末を生み出していく物語に終始飲まれ気味でした。吉兵衛もその他も皆、じゅうぶん悪玉だと思う。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『朝星夜星』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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