- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041072363
作品紹介・あらすじ
洗濯する背中にもたれて感じたぬくもりは死別した母のたいせつな記憶、毎晩兄弟で取り合った父のあぐら、そこできいたオノマトペをまとう物語、ブラジルで出会った赤毛の魔女、「普通のおかあさんになってよ」と娘からいわれた日、昭和・江戸川の土手に住みついていた浮浪者のハーちゃん、紀伊國屋書店本店の喫茶室で見たフランス帰りの岡本太郎……。
喜びだけでなく、悲しみも人に力を与えてくれる。みんな、私を作った「集まっちゃった思い出」。
50年の作家生活で各紙・誌へ寄稿してきた中から選んだ、珠玉のエッセイ集!
感想・レビュー・書評
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幼い頃によく読んだ『小さなおばけシリーズ』なかよしのエッちゃん、のらねこのボン、ぞびぞびぞー、懐かしい涙 そしてジブリのなかで一番好きな『魔女の宅急便』角野さんの世界観、紡ぎ出すオノマトペや言葉のリズムが大好き。その素敵な感性を育んだルーツを辿れます。『ニルスのふしぎな旅』も懐かしい…
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角野栄子さんの思い出や日常や原点が集まった本。物の見方、受け止め方が素敵です。
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2019年9月角川書店刊。54編のエッセイと国際アンデルセン賞作家賞受賞スピーチとあとがき。エッセイの主軸が、全て同じで、ブレが無いというか、ひとつのことを追う姿勢が美しい。というか、そういうエッセイで、統一したということなのかもしれません。
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角野さんは幼い頃母親を亡くされている。
母の思い出についての文章はどれも切ないが、「母の贈り物」ではリアルに母親を感じるときは、父親がお盆の迎え火を焚いて母をお迎えするところだったという。その一文の最後に、角野さんの児童文学を描くところの資質が表わされていて、ハッとさせられた。それこそが母からの贈り物だったのだ。
それが発揮されるのは30才を過ぎてから。デビュー作の「ルイジンニョ少年 ブラジルをたずねて」は700枚にもなった。何度も書き直して短くするうちに、書くことの喜びを知った。
不思議な女性、クラリッセとの出会いも印象的だ。角野さんは彼女を魔女と表現する。
角野さんの目が何を捉え、それをどう感じているのかがよくわかる、貴重なエッセイ。 -
忙しい仕事の合間にもさらっと読めるかと思い手に取りました。
角野栄子さんの読書の原点はお父様だったのだとのこと。
それから、やはり(?)幼い頃から想像力が発達していたようです。
一緒に収められていた、国際アンデルセン賞作家賞受賞スピーチから引用
「物語は、私が書いたものであっても、読んだ瞬間から、読んだ人の物語になっていく。読んだ人一人一人の物語になって行き続ける。そこが物語の素晴らしいところだと思います。そして、その時、感銘を受けた言葉、その時の空気、その時の気持ち、想像力などが、一緒になって、その人のからだのなかに重なるように入っていき、それが、その人の言葉の辞書になっていく。その辞書から、人が与えられた大きな力―想像力が生まれ、そして創造する力のもとになっていくと思っています。それはその人の世界を広げ、つらいときも励ましてくれるでしょう。」
「その人の言葉の辞書」っていい表現だなあと思いました。
そして、「日本語の『そうぞう』という言葉には『想像』と『創造』の2つの意味がある、これは偶然ではない」というような文を読んだことがある気がしますが、角野さんのスピーチを読んで、それを再認識しました。
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自伝的エッセイです。
絵本作家らしく子供時代のことも今の生活のことも、日々こんなことが起きたら面白いんじゃないか?と考えてみたり思いついたことを書かたちにしていく、そんなお仕事の仕方が垣間見れて面白い。
この人は仕事が大好きに違いない。日々の暮らしも楽しかろう。
羨ましい。私もそうなりたい。いや、そうなる。
NHKの番組で角野栄子さんの特集があってすっかり魅了されてしまったから。それで借りたんだけど。
後半の魔女のことあたりはパラパラとしか読みませんでした。
魔女を題材にした絵本が完成して大ヒットした。
思いつきから生まれた物語だけど、魔女には古い歴史があるから知らなくてはいけないと旅をしたり本を読んだり人に会って勉強していく。
そういうふうに探究を重ねていくと、世の中には全てが境界線があって、両方を見ることができるかどうか、という問題に集約してくる気がする、のだそう。
その結論は私にはよく分からないが、私も自分のそういう発見をしていきたい。
つまり角野栄子さんのように働いて生きていきたい。絵本の世界でもないしファッションでもない。でも要素として真似したい物がたくさんあるのが角野栄子さん。
素直な疑問、ばっと思いついた楽しいこと、膨らむ妄想、そんなものを形にしていくような仕事をしてお金を稼ぎたい。。。
すみません、感想というより私の心の叫びになってしまった。
この本はちゃんと読むにはちょっとついていけない世界観があったけど、私もいつかこんな本を書けるような人になろう。
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児童文学作家・角野栄子のエッセイ集。子どもの頃の思い出、魔女について、海外で過ごした日々、創作活動と物語について、日々の暮らし、などなどが独特の目をもって書かれています。
その独特の目こそが作家・角野栄子の根源となるものでしょう。それは幼い日の思い出にも現れます。
暗いところに何かを見る目、杉並木に何かを感じる目。父の優しさを見付ける目、幼い時に死に別れた母を思い出す目。
それだけに留まらず、海の向こうの国に想いを飛ばす目、生まれも言葉も違う人と交わす目も。その目は他の人には見えないものを見て取り、物事の奥の奥を見透かすのです。
その様々な見てきたものが積み重なり熟成されて、物語が生まれていくのでしょう。
それぞれの文章のほとんどには、書かれた年月日やどこに掲載されたのかが記されていません。そのため思い出との距離が計りにくく感じることもあります。20代の思い出も20年前なのか50年前なのかで感じ方も変わります。また書かれたときの時代背景によっても感覚も変わるでしょう。
しかしダンボールにどっさりと詰められていつ書いたのかもあやふやになっているとあとがきに読む頃には、そこにかかれているようにこれもまた角野栄子その人らしく思えるようになっているのです。
80年以上の時代と歴史と思い出を、1冊の本で共にしたからこそ思える境地なのかもしれません。読み終えたときには、もっと知りたいもっと共にいたいと思わされました。 -
角野栄子さんは鮮やかなワンピースで素敵な女性というイメージからの入りだったが、幼い頃から湧き出すような想像力・好奇心の持ち主だったよう。
それも幼い頃より父から豊かなイマジネーションを受けてもいたらしい。
幼少期より、とても自由な心の持ち主の上に、その心を今でもしっかり持ったままでいる、とても軽やかな生き様。
ほんの少しのことにも心を躍らせ、柔軟な感性で異文化も吸収する、わたしもこんなおばあちゃんになりたいものだ。