うちの父が運転をやめません

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041079706

感想・レビュー・書評

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  • とても現実的な話だった。
    免許を返納しない父にも、プライドや田舎の過疎問題、生きがいがなくなるなど理由がある。子供の雅志にも親に事故を起こして欲しくない気持ちがある。妻の歩美は都会暮らしで田舎の暮らしを想像できない。

    また、雅志の第二の人生を田舎で生計を立てて過ごす決断や息吹の進路などは親と自分の年齢層なので、共感できた。

    この小説の良いところは現実的なところだ。何事も綺麗ごとで終わるのではなく、リアルな妥協点を見つけて折り合いをつける。それが現実世界を再現していると思った。

  • 交通の不便な過疎地に住む高齢ドライバーと、都会に住む息子(主人公)一家の物語。

    私の両親も現在70代。父は60代で病気で目を悪くしてから運転が怖くなって、自ら運転免許証を返納した。母はペーパードライバーで、身分証明書代わりに免許証を更新していたけど、60代で返納。それでも、私の地元は交通の便が良い地域で、家も駅まで徒歩5分で、車がなくても不便はあまりない。

    この物語の主人公の両親は田舎に住んでいて、公共交通機関は赤字路線で廃線になり、集客が悪いからスーパーが潰れ、さらに遠くのスーパーに行くためにはやっぱり車が必要。友達に会うにも車が必要で、人と会えなくなると心も元気ではなくなる。

    私の両親も、今は不便がないけど、そのうち足腰が弱って徒歩や電車での移動は難しくなるかも。私は実家からそんなに遠くないところに住んでいるからいつでも助けられるけど、もしこの物語の主人公みたいに遠くに住んでたらどうなっていただろう。

    いつでも自分の身に降りかかり得る物語で、読みながらいろいろ考えさせられた。

  • 高齢者ドライバーの課題をフックにはしているけど、家族の分断、地域コミュニティーの崩壊、遠隔地にいる親の介護、地方の交通インフラや買物弱者、少子高齢化や都市と地方の二極化に絡めた社会問題、あと、子供に与えられるものとか時間の価値、自分の人生や働き甲斐とは?などなど、諸々の課題がストーリーに緻密に組み込まれてて、終始そうだよな~と思いながら、気づいたら読み終わっていた。自分自身の課題感をかなり代弁して貰えた。過疎地での移動販売のビジネスモデルはどこかで聞いたことがあったけど、ニーズは高いだろうな。

  • 面白くて一気に完読。

    恒例の父親が運転を辞めないことや今後を考え、実家に帰りひまわり号を始めることにした雅志。高校生の息子の関係も変わり、息子の方が先に農業や田舎暮らしを気に入り、最後にはまさかの農業の高校にまで編入。

    皆がイキイキと変わってきて、雅志自身もストレスが少なくなり、仕事を楽しんでいる姿が良かった。お客さんとの交流、中でも疎遠になっていた母娘の話がウルっときた。高齢の両親と仕事ができたり、助手席に乗るのを取り合うまでになり、微笑ましい。孝行息子。私もこの仕事、助手席に乗って体験したいなと思いました。おすすめの本です‼️

  • 高齢者の自動車事故から、親の老後を題材にしたお話。
    親の面倒をみるといっても、離れていると大変ですよね。自分の仕事もあるし。
    主人公は自分の仕事も見つけながら、高齢者の支えとなって活躍する姿が、生き生きとしていて良かった。私も自分の親とは離れて暮らしているのですが、田舎ではなく歩いて買い物も病院も行けるところに住んでいるので、このお話のような悩みは少ないかなぁっと思いました!

  • この作家さんはタイトルの付け方が秀逸ですよね。
    「そうなのよー!」と心の中で語りながら手にした垣谷美雨作品2作品目。

    目的は、田舎の高齢父親に運転をやめさせるための助言ができれば、、だったけど、読んでいるとなんだか肯定的な考えに変わってしまって。

    主人公の息子エピソードとしては、
    親子で努力と苦労して入った中高一貫校が必ずしも正解とは限らない、、って、身につまされる内容だけど、まぁ進学校だけが正義じゃないし、将来の夢が見つかったなら転校大いにアリだよね!
    って思うけど、いや、これ、我が子だったら、、ほんとにそう言える!?とかドギマギして、これぞ小説の醍醐味。

    私はこの小説で
    高齢者にも
    ・(買い物で)選ぶ楽しみ
    ・外出して他者を見る楽しみ
    ・何かの役に立つ喜び
    というのが大切なんだと学びました。

    この話のラストみたいに、みんながいっときでも幸せに思える結末があると、
    いいんだけどねぇ。。

  • 題名から胸が痛む。

    大多数の日本人が抱える問題。

    父だけでなく親兄弟とか、とにかく親しい間柄が運転やめない問題。

    今年84歳になるうちの父も、もちろん運転やめてません。

    ニュースを見るたび冒頭で「もしかしてうちの?!」って冷やっとするよね。

    それで地元と違うエリアの出来事だとわかってほっとして。(あぁうちの父じゃなかったってね)

    その後、被害を見てぞっとしたり、あぁコンビニに突っ込んだだけね、と思ったり。

    もちろんお店側にとっては大ごとですが、人身事故ではないならお金でどうにかできる問題ではある、などと無責任にも思ったり。

    そして最悪の結果だった場合は、もう言葉がない。他人事じゃない。

    そんな気持ちを都会で子供(アラフィフですよ)が抱えているなど親は考えてもいないだろう。

    自分はまだ大丈夫、と思っていることがすでに老化ですよと声を大にして言いたい。

    必要なのは自動化ブレーキじゃないだろ?

    教科書乗せるべき。絶対。

  • 高齢者ドライバーの事故が社会問題になっていて、最近大きな裁判もあったことから、そういう社会問題についての話かな?と思い読み始めたが、それだけではなかった。
    高齢化社会や過疎地域での生活、都会の核家族の生活、田舎暮らし、早期リタイアなど様々なテーマを扱っている。
    免許返納したいが車がないと買い物にも行けない。そんな高齢者の助けとなるヒマワリ号、こういうものがもっと増えて欲しいです。

  • 田舎に高齢の親がいる人なら誰でも思い当たるであろう作品。やめろ、と言うのは簡単だけど実際のところは本当に難しいよね。
    便利になったとは言え、人と会ってコミュニケーションすると言う事は大事なんだと改めて思った。読後はなんだかスッキリとした感じで良かった。

  • 高齢者の運転免許問題というだけでなく、過疎地の買い物難民問題とか、働くということの意味なども扱っている。

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著者プロフィール

1959(昭和34)年、兵庫県生れ。明治大学文学部卒。2005(平成17)年、「竜巻ガール」で小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー。結婚難、高齢化と介護、住宅の老朽化などの社会問題や、現実に在り得たかもしれない世界を題材にした小説で知られる。著書に『リセット』『結婚相手は抽選で』『七十歳死亡法案、可決』『ニュータウンは黄昏れて』『夫のカノジョ』『あなたの人生、片づけます』『老後の資金がありません』『後悔病棟』『嫁をやめる日』『女たちの避難所』『四十歳、未婚出産』などがある。

「2023年 『うちの父が運転をやめません』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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