いまさら翼といわれても (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
4.11
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感想 : 239
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041081648

感想・レビュー・書評

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  • 〈古典部〉シリーズ第6弾は、古典部の4人それぞれが語り手となる短編集。
    第1弾目の「氷菓」から彼ら4人の高校生活をずっと追ってきて、本書では彼らの今まで語られなかった一面を知ることができます。

    「鏡には映らない」
    中学の卒業制作の時にとったある行動によって、同級生に誤解されてしまった折木。
    同じ中学だった伊原がその真相を解き明かす。
    実は折木はヒーローだったなんて、かっこ良すぎます。

    「わたしたちの伝説の一冊」
    伊原が漫研をやめたその裏に、こんな凄まじい出来事があったなんて。

    「長い休日」
    奉太郎が省エネ主義になった理由は?

    少しほろ苦く重めで、悩みを抱えた高校生の物語から、心に刺さるところや学ぶことがたくさんあります。
    謎を解いたあとに残るさわやかさとか、必要以上に深入りしないところとか。

    そして、作者の米澤穂信さんのあとがきがまたさり気なくて、いいです。

  • ほろ苦いを通り越して、ビターだなあ!が最初の感想。
    読み終えてみると前々巻の「遠回りする雛」というタイトルも、色々な意味合いがありそうですね。
    「雛」を読んだ時の、あの桜の下の旧家の跡取りであることの想いと決意が、切なく、そして違った形で甦りました。でも、彼女達は、まだ高校生、「今さら」ではない、まだまだ拡がる翼が背中にあるのです。
    久しぶりの古典部のメンバーに会えたのは嬉しかった。
    個人的には、翼も好きですが「鏡に映らない」が好きですね。
    ただ、残念なのは「女帝」入須先輩が出てこなかったこと(笑)

  • 久々に読み返そうとしたら、高校生の時に図書室へリクエストをして入荷してもらったものを読んだため手元になかった。調べてみると驚いたことに2ヶ月前に文庫が出ているではないか!これは運命なのでは?と思い次の日には買っていた。
    読み返すにあたって全シリーズを読み返した。もはや高校生ではない私にとって奉太郎や里志の生活信条は高校生にしては重すぎるのではないか?今時の高校生はこんなに深く考えて生きてないぞと感じたり、思ったより摩耶花がオタクっぽかったり可愛らしかったり、えるたそはこちらが恐縮してしまうほどえるたそだったりと面白かった。あと中学生の頃の私は2日に一冊本を読む奴だったので不思議に思わなかったけれど、奉太郎本読みすぎじゃね?高校生の頃は部活に部活と忙しかったため本を読む暇はほとんどなかった。省エネではない学生生活だったのかもしれない……。
    遠回りする雛と同じく短編集であるけれども、こちらの方が少しほろ苦い話が多い気がする。どれもいい感じに内容を忘れていたので逐一奉太郎の推理に感動した。
    久しぶりに古典部シリーズを読むのにこの本を選ぶのもよいとは思うが、個人的には最初から最新刊まで一気読みをオススメしたい。古典部の四人が一見淡白そうに見える仲を年月を経るごとに深めていることが体感できると思う。そして奉太郎が信条に頑なではなくなってきているのも気づける。えるたそのおかげか。
    ずいぶん前から思っているけれど、どうして作家は無意識な万人の持つ感情の起伏を拾って言語化してしまえるのだろう?最高やん……

  • 読後は胸が締め付けられる思いになった。
    アニメ化した時に私も高校生だったので、あの頃と同じような時間を奉太郎も過ごしたんだろうなと思う。
    そんな自分の生きた時間を重ねて考えるとやはり胸が締め付けられる。
    何故票はかさ増しされたのか、雷に3回うたれたその時の出来事の詳細、摩耶花の決断の理由など、多くの語られなかった部分が気になる。
    その不確定な要素が、胸を締め付けるのだと思う。
    里志の摩耶花への気持ち、奉太郎の真意、えるの悩みも、私の考えが及ばないところがある。
    私はあの頃を脱して(思春期の渦巻く悩みから脱したのだ)大人になったけれど、その描写はこの作品の段階では描かれていない。
    それが苦しいのだ。
    続きが気になる。
    早くあの頃を脱してほしいのだ。
    どうか最後まで描いてほしい。

  • 時の流れの中であるエピソードだけを語ることのできる短編集もたまにはいい。その中で重要な局面を迎える人々も。どうにもならない状況から逃れ、得た自由を謳歌しようとする人がいれば、今まで無いと思っていた自由を突然告げられ路頭に迷う人。でも今はまだ突然開けた視界に戸惑っているだけ。そのうち羽ばたいてゆく道を選べるだろう。その時は長い休日を終えた人が隣にいるだろうか。

  • 将来への不安、自分の夢、同級生・部活の部員たちとの確執……。
    高校生が抱える悩みは、大人たちと変わらない。
    ただ、大人たちとの大きな違いは、大人は経験の差から、ある程度の悩みの解決方法を知っていることだ。
    学生たちにはそれがない。
    でも、だからこそ、突っ走っていくことができる。
    それは大人になるにつれて失われていくものであり、だからこそ、悩みを抱えながらも前に進んでいく学生たちが眩しく見える。
    本作の登場人物たちも、悩みを抱えながらも、前に突っ走っていく。主人公である折木奉太郎も、側からはそう見えなくても、自分の悩みと向き合いながら前に進んでいっている。
    惜しむらくは、千反田えるの、その後だ。
    きっと、彼女も、前に進むことができたのだろう。
    叶うならば、その姿を見てみたいものである。

  • 読んだ後に、少し悲しくて甘酸っぱい気持ちになる。これからも時々この世界に浸りたくなると思うから、買って正解!

  • 古典部シリーズ第6弾。

    ここまで呼んで、
    どんどんこのシリーズ、、、というか、
    4人のことを好きになっていっていることに気付いた。

    4人が4人をとても大事にしているなと感じる。
    大袈裟に仲良しではないけど、困ったら助け合う。

    こういうチームは憧れます。

    早く次が読みたい!

  • ホータローがホータローである所以とか、ホータローの良さとかいろいろわかってとてもいいお話だった。
    どのお話もリンクしててすごい。
    摩耶花がホータローに当たり強いのはそのせいだったのかと。
    省エネ主義なのになんであんなに推理力あるんだと思ってたけど、昔の性格を知って腑に落ちた。
    ホータローのメロス解釈たまらん。ホータローの読んだ本の感想をひたすら聞きたい。絶対面白い気がする。
    ホータローの長い休日を終わらせるのは千反田なんだなと。
    そして、千反田に寄り添えるのはホータローだからなんだと。
    それぞれの関係性が見えて素敵だし、少しずつ関係性が変化しているのが良い。
    ホータロー、そして古典部のみんながもっと好きになる。
    特に好きなのは「箱の中の欠落」「鏡には映らない」「長い休日」「いまさら翼といわれても」

  • 氷菓を読み続けている人は触れて欲しい一冊。
    キャラクターの意外な一面を知れたり、
    そのエピソードきっかけに見方が変わるものもある。
    そして、知れば知るほど、その人物に惹かれる。
    切ないけど青春て感じでいい。
    いまさら翼といわれても、長い休日、は必読です。続編書いて欲しいな。

著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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