バック・ステージ (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 89
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041084298

感想・レビュー・書評

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  • パワハラ上司の悪事の証拠をつかんで退治するぞ!
    新人社員の松尾くんは、ちょっと個性的な先輩・康子さんに巻き込まれて…
    お仕事小説と思いきや、舞台は「中野大劇場ホール」で上演されるお芝居?

    芦沢さんの作品は、「許されようとは思いません」と、アンソロジーに収録された短編を一つ読んだことがある。
    手の込んだ心理描写の森に囚われ、最後のどんでん返しで足元をすくわれる、そして、得体のしれない黒いものに抑えつけられているようなそこはかとない息苦しさ…が作風なのかと思っていた。
    この本の表紙も、何だか暗いし、後ろ姿だし。

    …と思っていたら、意外にもアップテンポで前のめりな高揚感があって驚いた。
    主人公の違ういくつかのエピソードが、巧みに絡み合っている。
    カメオ出演を探すのも面白い。
    荷物の取り違えから起こるトラブルや、演劇が絡んでいるところなど、昔に読んだ、恩田陸の「ドミノ」を思い出した。


    序幕
    次長・澤口の、直属の部下・玉の井愛美に対するパワハラが半端ない。
    玉の井の同期・松尾をはじめ、皆憤っているが何もできない。
    そこで、先輩・後藤康子が、松尾を巻きこんで立ち上がる。

    第一幕 息子の親友
    望(のぞみ)は離婚してシングルマザーになってふた月。
    大人しい長男と、幼稚園から保育園に環境が変わって不安定になっている次男を心配する。

    第二幕 始まるまで、あと五分
    「芝居を二人で見た後で告れば良かった…」
    2人分のチケットを握りしめて、焦れる奥田。
    しかし、伊籐みのりに振られる理由が分からない。

    幕間
    なんとかして劇場に入りたい、康子と松尾。
    そこへ、今回の芝居の演出家・嶋田ソウを発見する。
    明らかになる、康子の秘密!

    第三話 舞台裏の覚悟
    十年下積みして重要な役に抜擢された川合春真(かわいはるま)は、演劇という魑魅魍魎の住む世界の扉を開ける。

    第四話 千賀稚子にはかなわない
    75歳の大女優・千賀稚子(せんがわかこ)に認知症の兆しが見え始めた。
    稚子に35年寄り添った、マネージャー・信田篤子(しのだあつこ)の献身と思い。

    終幕
    自分の悪事を悪事とも思っていない澤口は、逆に人事をちらつかせて恫喝してくる始末。
    松尾は、康子は、愛美は?!

    カーテンコール
    読者のご想像にお任せする感じ。
    それにしても松尾くんって、こんな変わった子だったっけ?
    あれ?松尾くんの下の名前って出てきた?
    第二弾などあったら嬉しいです。

    解説は、成井豊(劇作家、演出家)
    舞台人の目から、あるいは芦沢央の読者として作品を味わう。
    “カーテンコール”は、後日譚であるが、その、雲が晴れたような明るさを、
    「芝居のカーテンコールはすべての照明が点いて、ステージは最高の明るさになるのだ」と語っているのが印象的。

  • 軽くさらっと読めて、面白かった。
    主人公?2人のセリフの雰囲気など、伊坂幸太郎っぽいなーと思って読んでいたが終章はほんとにそんな感じ!似てる。テンポの良さや、伏線回収など。短編として見るなら、伊藤さんと奥田くんの話が良かったかな。

  • 上司の不正を暴く話?
    タイトルとの関連が見えずに読み進めると、やはり、舞台関連の話に
    そして悪徳上司も再登場
    短編集のような、軽快さが良いです

  • ある舞台とある会社の内部告発を軸に、多視点で語られる短編集

    ミステリーだけでなく、家族の話も恋愛も仕事の流儀も色々な要素が入っていて贅沢
    突拍子もないことができる人が主人公の相方的ポジションに来る設定はやっぱり面白いなぁと思った

  • 【まさか、こうきたか.ᐟ】

    様々な事件がパズルのピースのように繋がる連作短編集。
    個人的に好きだったのは『第一幕 息子の親友』
    文体も読みやすく、短編集なので隙間時間の読書にもおすすめだ。

    些細な心のザラっとした瞬間を言語化するのが上手くイヤミスに定評のある著者だが、今作は心あたたまる日常ミステリーだ。
    普段ミステリーを読まない人でも楽しめるのではないだろうか。

    まるで1つの演目を観たような読後感が味わえる一冊だった。


    こんな人におすすめ.ᐟ.ᐟ
    ・ミステリーが好きな人
    ・小さな子どもがいる人
    ・群青劇が好きな人

  • 『推しの子』を読んでて、面白いなぁ〜と思いつつ、次の小説は何にしようと本棚を眺めた時、何となく読みたくなった。
    ある意味、推しの子もバックステージの話。まぁ、この話とは何にも関係ないんだけどね。

    芦沢さんの作品は結構読んでる。
    今回は、複数の話が繋がるミステリー。

    あー、ここでこう繋がるのかは、読んでいて面白かったかな。

  • 芦沢央さんの作品はどうも先が気になって入り込んでしまう。どちらかといえば登場人物の不安定さが目立ったり、どうしてそんな危なっかしい行動をしてしまうんだ、とモヤモヤするシーンが多いが(本作もそうだった)、その上手くいかなさみたいなところも人間味があって興味をそそられるのかもしれない。

  • 芦沢先生は初読みの作家さん!
    面白くないわけではないけれど、良くも悪くもちょっと私の中の印象に残りずらいかも…と思ったり

    連作短篇のようでそれとはまたちょっと異なるような物語
    序幕の住人が違う章ではモブBみたいな感じで出ていたりするぐらい
    大きく見たら、物語では事件が5つ起こってる
    それぞれの幕でそれぞれ違う人が主人公で、その人その人が思う大変、辛い、どうしようって思いは違う
    それらが混じって離れて、序幕の物語はエンディングを迎えていた

    好みの物語は、第2幕
    友達以上恋人未満の男女の嘘と恋の物語
    数年ぶりに会った大学生の2人は、好きな本について語り合う
    2人を見てると、好きな物を語り合える相手が羨ましくなる

  • 珍しく爽やかな読了感の芦沢央作品であった。
    序盤では無関係な短編集かと勘違いしかけたが、ひとつの舞台を巡る様々な"裏側"とその繋がりに、終着点への期待が自然と高まる。いわゆるイヤミス作品が魅力のひとつである芦沢央ならではの流れ。しかし既刊とは異なるちょっとした甘酸っぱさや未来への希望を感じさせるラストに、新しい側面を見た。

  • 登場人物を好きになれなかった

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著者プロフィール

1984年東京都生まれ。千葉大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2012年『罪の余白』で、第3回「野性時代フロンティア文学賞」を受賞し、デビュー。16年刊行の『許されようとは思いません』が、「吉川英治文学新人賞」候補作に選出。18年『火のないところに煙は』で、「静岡書店大賞」を受賞、第16回「本屋大賞」にノミネートされる。20年刊行の『汚れた手をそこで拭かない』が、第164回「直木賞」、第42回「吉川英治文学新人賞」候補に選出された。その他著書に、『悪いものが、来ませんように』『今だけのあの子』『いつかの人質』『貘の耳たぶ』『僕の神さま』等がある。

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