彼らは世界にはなればなれに立っている

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 76
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041095652

感想・レビュー・書評

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  • 4人が語る異世界の物語。だけどこれは戦前の日本が陥った世界であり、今の日本の現実かもしれない。

  • 羽虫と呼ばれる流民を母に持つ少年トゥーレ,映画館の受付のマリ,葉巻屋の覗くコンテッサ,流れ着いた魔術師によって語られる始まりの町の崩壊の物語.全体的に説教臭いところが気になるといえば気になるが,この第3帝国的な忍びよる足音の不気味さを現在に当てはめて警鐘を鳴らしたいのかもしれない.でもそれはそれとして,それぞれの語り手が魅力的で,その人生の中で夢見た奇跡の思いが胸にしみた.

  • 始まりの町。 以前は光る石を産出し、繁栄していたがそれも過去の話。 
    今は、当時の栄華をよすがに人々は生きている。 
    本来の自分たちはもっと輝かしい存在であるはずなのにという満たされない自負心を抱えて悶々とし、『羽虫』を差別し、踏みつけることでなんとか誇りと自尊心を保っている。 
    『羽虫』と町人のハーフである少年。 色つきの肌のマリ。 葉巻屋の男。 不死の魔術師 それぞれの視点で物語は進んでいく。 
    始まりの町の人々は、自らの自治すらも放棄し、破滅の道を突き進む。 
    最後に残るのは、瓦礫の町。 救われない最後。 
    『彼らは世界にはなればなれに立っている』
    始まりの町は、今の日本か? 

  • めっちゃ面白いというかすごかったんだけど(語彙力!)言葉にするのが難しい。

  • 良かった。
    帯に書かれているとおりである。
    物語であるが、現代と何が違う⁉️

  • こう来たか!と驚愕させられた作品。

    塔の町で育ったトゥーレは、故郷を亡くして町へ流れ着いた羽虫と呼ばれる流民のひとりを母として生まれた。
    差別と偏見の中で暮らす羽虫たち。
    博物館で働く怪力、情報通の葉巻屋、不器用な魔術師、羽虫たちにさえ差別される色付きの女。
    そして町を支配する伯爵と、その若く美しい愛人。
    トゥーレの母はある日突然町から消えた。
    そしてそれからも次々とトゥーレの大事な人たちが消え去っていった。
    塔の町の属する国は、やがて戦争へと突入していき、羽虫の若者たちは使い捨ての戦力として徴兵されていく。
    トゥーレもまた。

    太田愛の新刊だ!と本書を手に取った人たちの多くがとまどうのではないだろうか。
    でも、ファンタジーでありながら、これは間違いなく「幻愛」「天上の葦」と同じ色の魂を描いた物語だ。

  • よく出来た寓話。
    まさに帯に書かれている通り。→これは、過去でも未来でもない「今」だ。目の前にあるのにあなたが見ようとしない現実だ。

  •  誇り高い住民、架空の町『始まりの町』に住む人々が描かれている。4章からなる物語、章ごとに主人公があり、その人の視点で描かれている。
     始まりの町で生まれた人に対し、羽虫と呼ばれる余所からやって来た人々への差別。自分を優位な立場に置く為にそういった対象を作り心の平穏を得る。貧しく差別を受ける日々の中でもわずかな希望を見出し生きていくのが人間。そんな羽虫たちを迫害し続けた住民たちの末路、自分たちの心の拠り所である始まりの町の崩壊、因果応報と思わずにはいられない。登場人物が次々亡くなる中、人との出会いの大切さを知る魔術師と一緒に旅立つナリクに明るい未来があるよう願い結末だった。

  • 語り手の視点が変わることで一つの事象の異なる形が見えてくる、いわゆる「藪の中」構成はさすが。
    登場人物たちのそれぞれの「事情」「特徴」に個性があって感情移入が容易になるキャラクター造形もさすが。
    ただですね、戦時における全体主義の話になると、これはもういろんな小説や映画で読んだことがあるありきたりな展開で非常に興ざめ。
    ストーリーテラーでいずれ直木賞作家となる方だと思うのでこういうのもありなのかもしれないですが。

  • 今までの三作品と比べて、少々とっつきにくい異国の町と思われる最初の描写に驚くが、一気に世界に取り込まれた。プロローグで示される過去の写真。その中の幾人かの視点で物語は進む。視点が変わるごとに伝わってくる差別、貧困といった社会問題…ああ、紛れもなく太田さんの世界だ。羽虫という言葉はなんて悲しいんだろう。これは決してどこかよその国の出来事ではないのだ。読み進めた先、突然これがミステリだったことを思い出す。第4章に入ってからはページをめくる手が止まらなかった。読後の余韻を噛み締め、重いメッセージを受け取った。

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著者プロフィール

香川県生まれ。「相棒」「TRICK2」などの刑事ドラマやサスペンスドラマの脚本を手がけ、2012年、『犯罪者 クリミナル』(上・下)で小説家デビュー。13年には第2作『幻夏』を発表。日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)候補になる。17年には上下巻の大作『天上の葦』を発表。高いエンターテインメント性に加え、国家によるメディア統制と権力への忖度の危険性を予見的に描き、大きな話題となった。

「2020年 『彼らは世界にはなればなれに立っている』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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