- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041095652
感想・レビュー・書評
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4人が語る異世界の物語。だけどこれは戦前の日本が陥った世界であり、今の日本の現実かもしれない。
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羽虫と呼ばれる流民を母に持つ少年トゥーレ,映画館の受付のマリ,葉巻屋の覗くコンテッサ,流れ着いた魔術師によって語られる始まりの町の崩壊の物語.全体的に説教臭いところが気になるといえば気になるが,この第3帝国的な忍びよる足音の不気味さを現在に当てはめて警鐘を鳴らしたいのかもしれない.でもそれはそれとして,それぞれの語り手が魅力的で,その人生の中で夢見た奇跡の思いが胸にしみた.
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始まりの町。 以前は光る石を産出し、繁栄していたがそれも過去の話。
今は、当時の栄華をよすがに人々は生きている。
本来の自分たちはもっと輝かしい存在であるはずなのにという満たされない自負心を抱えて悶々とし、『羽虫』を差別し、踏みつけることでなんとか誇りと自尊心を保っている。
『羽虫』と町人のハーフである少年。 色つきの肌のマリ。 葉巻屋の男。 不死の魔術師 それぞれの視点で物語は進んでいく。
始まりの町の人々は、自らの自治すらも放棄し、破滅の道を突き進む。
最後に残るのは、瓦礫の町。 救われない最後。
『彼らは世界にはなればなれに立っている』
始まりの町は、今の日本か? -
めっちゃ面白いというかすごかったんだけど(語彙力!)言葉にするのが難しい。
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良かった。
帯に書かれているとおりである。
物語であるが、現代と何が違う⁉️ -
語り手の視点が変わることで一つの事象の異なる形が見えてくる、いわゆる「藪の中」構成はさすが。
登場人物たちのそれぞれの「事情」「特徴」に個性があって感情移入が容易になるキャラクター造形もさすが。
ただですね、戦時における全体主義の話になると、これはもういろんな小説や映画で読んだことがあるありきたりな展開で非常に興ざめ。
ストーリーテラーでいずれ直木賞作家となる方だと思うのでこういうのもありなのかもしれないですが。 -
今までの三作品と比べて、少々とっつきにくい異国の町と思われる最初の描写に驚くが、一気に世界に取り込まれた。プロローグで示される過去の写真。その中の幾人かの視点で物語は進む。視点が変わるごとに伝わってくる差別、貧困といった社会問題…ああ、紛れもなく太田さんの世界だ。羽虫という言葉はなんて悲しいんだろう。これは決してどこかよその国の出来事ではないのだ。読み進めた先、突然これがミステリだったことを思い出す。第4章に入ってからはページをめくる手が止まらなかった。読後の余韻を噛み締め、重いメッセージを受け取った。