雪と珊瑚と

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041101438

感想・レビュー・書評

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  • 自己と他者みたいなテーマについてとても考えさせられる。
    他者に施すこと、施されること、優越感、劣等感、施す人のエゴ、施される人のプライド、他者に頼らない強さ、頼る強さ、親との関係、子への思い、自分への認識、アイデンティティ、他者との距離感、踏み込んでいい線・よくない線、公と私、仕事と私事、など。
    十人十色。正解はない。
    だから、それらの事柄に真摯に向き合いながらも、人は人、自分は自分で丁寧に生きる。
    丁寧に生きるとは自然と共存すること。四季を感じ、生き物に関心を持って、丁寧に料理し感謝して食べる。

  •  梨木香歩「雪と珊瑚と」、2012.4発行。山野珊瑚、21歳、赤ん坊の雪を抱えたシングルマザーの頑張り、それを支える薮内くらら、五島由岐をはじめとする沢山の人たち。総菜を売るカフェ「雪と珊瑚」のオープンに辿り着く物語。テンポよく一気に読了しました。63歳のくららが素晴らしいです。ただ、終わり近くに、相性の悪い美知恵からの「あなたは同情を引いて生きていく傲慢さがあり、嫌いです」という手紙は、必要だったのかどうか・・・。珊瑚に自省を促すにしても厳しすぎる感がしました。

  • シングルマザー、ネグレクトをされて育った、カフェを開業する、と自分に重なることが多く、ページをめくる手が止まりませんでした。

    サクセスストーリーと思いきや、めっちゃイヤなやつも出てきて、そういう現実的なところがすごく良かった。

    潔い生き方をしている人たちもたくさん出て来て、読後感、爽快です。

    梨木香歩さんっぽくないテイストなのも、印象的。


    【本文より】
    ・そう、ウィトゲンシュタイン。『語り合えないものについては沈黙を守らなければならない』。

    ・付き合って初めて、相手の人格レベルはわかってくる。様々な場面の相手の喜怒哀楽に付き合ううち、興ざめもし、愛しくも思う。

    ・大なり小なり、皆それぞれの破綻を抱えながら、かろうじて社会は回っているのだろう、きっと。

    ・すべてのことに解決がつかないまま、けれど生活はそんなことはお構いなしに次から次へと続いていく。朝が来て夜が来て確実に日々は流れる。

  • 珊瑚、雪ちゃん、くららさんがそれぞれ魅力的で心がほっこりする一冊。

    珊瑚は不遇な生い立ちにも関わらず、悲劇的悲観的ではなく冷静で行動力があるのがすごい。
    お料理や食べることにも無頓着に見えた珊瑚が本当にカフェ開業に漕ぎつけたのはちょっと驚いたけど、夢があるので良し。

    くららさんは「西の魔女が死んだ」のおばあちゃんを思わせるキャラクター。
    物知りで率直で温かくて、特にお料理の描写が素敵。

    雪ちゃんはひたすら愛らしく描写されていて、妊娠中に読んだこともあってか、雪ちゃんが可愛くて仕方なかった。

    読後感ほっこり、妊婦さんにもおすすめの本です。

  • 若いシングルマザーが体に優しい惣菜屋さんを始める話。

    母親との関係、人からの親切を受け取るかどうかなど、繊細な人間模様が書かれていました。
    登場人物のこれからが気になりましたが、いい終わり方で読了感が良かったです。

  • シングルマザーの珊瑚、21歳。
    親に育児放棄された過去を持つ彼女が、周囲の人に支えられながらカフェをオープンさせる話だ。

    梨木香歩の作品はストーリーを追うことを主眼としていない。
    私はいつも、行間と自分が対話しながら読んでいるけれど、それもまた正しい読み方なのかはわからないが。

    しかし、それにしても、この作品はさすがに。
    まず、くららのような人に出会えるのが奇跡。
    保育士の資格は持っていないけれど、生きるためのさまざまな知識を持ち、海外経験も豊富で、一軒家に住み、無農薬野菜を栽培している甥を持つ人が、「預かり料は払えるようになったらでいいわ」なんて、夢ですか?

    生活のために子どもを預けなければならないのは事実だが、子どもを預けるということには、もうひとつ意味があると私は思っている。
    ”雪に、自分以外の信頼できる大人がいる、というのは大切なことのように思えた。”

    一つの出会いが次の出会いを生み、一つの行いが次の行動を呼ぶ。
    21歳で、シングルマザーで、頼れる親族はなく、貯金もなく、国民健康保険すら未加入で、でも、カフェを開く。
    実際にはこんなにトントン拍子に行くはずはない。

    ”どんな絶望的な状況からでも、人には潜在的に復興しようと立ち上がる力がある。その試みは、いつか、必ずなされる。でも、それを、現実的な足場から確実なものにしていくのは温かい飲み物や食べ物――スープでもお茶でも、たとえ一杯のさ湯でも。
    (中略)
    でも、こうやって他者から温かい何かを手渡してもらう――それがたとえさ湯であっても――そのことには、生きていく力に結びつく何かがある。それは確かなことだ。”

    ひとりで立って歩くために支えてもらうことは、恥ずかしいことではないんだよ。
    私はそう読みました。

    奥付を見ると2012年4月発行。
    うん。なるほどね。

    施し。憐れみ。無力感。プライド。
    そういう心の向きや持ち様と、どう折り合いをつけていくか。
    いや、つけることでどう生きていくのか。

    くららのようなスーパーおばあちゃんは身近にいなくとも、見渡せばだれの周囲にもきっと、手を差し伸べてくれる人や差し出される手を待っている人がいると思う。
    豊かに生きるかどうかは、自分次第だ。
    差し伸べられた手を使って立ち上がって、次の人に手を差し伸べることができるなら、それはとても有意義なことなのではないだろうか。

    周囲の手や社会のシステムに支えられてここまで来た私は、次の人を支える立場にならねばならぬ。
    ああ、子守したい~。(おかずケーキは作れません)

  • シングルマザーのプライドと意地が描かれている。ちゃんと施す側と施される側、自分のなかの葛藤が表現されてたから嫌味なく読むことができた。

  • 不安の渦の中で
    たった一つの希望にすがりながら生きて行くような
    主人公の姿がリアルで少し怖くなった。
    私には子どもはいないけれど、
    自分を削ってでも守りたい大事な存在、というものに
    少し興味が持てた気もします。

  • 梨木香歩の書く文章は美しく、作者自身生きる上で散らばっている細やかな光に気付ける人なんだろうと思うのですが、作品の中に色々な要素が複合していてもう少しシンプルでも良いのかな……という気もする。あっさりした導入に対して内容が散らばってるというのは「からくりからくさ」を読んだ時にも同じことを思った記憶。手紙のくだりは正直酷いなあと思う、例え的を射た内容でも相手が反論できない状況で悪意をぶつけるのは卑怯ですよ。そんな人間から学ぶことなど無いし自分を顧みる必要なんてない、と思ってしまう……。

  • 途中で飽きた
    描写は綺麗だけど刺激が足りない

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著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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