黒牢城

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 9948
感想 : 921
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041113936

感想・レビュー・書評

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  • 黒田官兵衛の息子を殺された恨みと有岡城、城主の村重との知恵比べと思いきや、ある真犯人が起こしていた数ある事件が有岡城、城下町を混沌とさせていた。
    人は死ぬことよりも、死んでなおも地獄が続くことが最も恐ろしいことでそれから逃れるために仏に心の平穏を求めていた。いろんな話が絡みあっていたが、官兵衛の罠で村重はついには城からでで毛利の助けをもらいにででいったが帰ってはこなかった。
    時代劇ものは初めてでしたが伏線もあり面白かった。

  •  「安楽椅子探偵」ならぬ「土牢探偵」。信長に反旗を翻した荒木村重に有岡城に監禁されていた黒田官兵衛が探偵役。有岡城内での事件を官兵衛が解く四つの短編からなる連作集だが…。

     これら事件の謎とともに、なぜ村重は信長に謀反したのか? なぜ官兵衛を殺さなかったのか? なぜ一人で城を脱出したのか? これらの歴史的な謎(?)についても書かれている。さすが米澤穂信先生だ。単なるミステリーではなく、歴史小説になっているところがスゴイ。

  • 戦国時代×ミステリーは完成度が高すぎの超良作! ★5

    戦国時代、信長を裏切った荒木村重が有岡城に籠城する中、城内で様々な難解な事件が発生。牢に幽閉していた策士黒田官兵衛に知恵を借り、難事件を解決していく歴史小説×本格ミステリー。

    史実にベースに進む歴史小説で武将たちが暗躍する描写がお見事。でも中身は本格ミステリーになっているスゴイ作品。相変わらず作者は世界観やリアリティを出すのが大変上手で、序盤から一気に大河ドラマに引き込まれます。
    いつも日本語が美しい作者ですが、本作は歴史小説のために、より一層情緒的で素敵すぎる! 日本人に生まれて良かった。

    そして中終盤からの重厚な展開は、読み手を熱中させ、さらに隠された真相には驚きと切なさが心を突き上げます。ああすごかった…

    なんといっても本作は、単に歴史モノとミステリーを組み合わせただけでなく、ちゃんと歴史小説になっているのがビビる。これから読む方は日本史の知識があるほど楽しめる作品なので、荒木村重、黒田官兵衛あたりの知識をつけておくことがおすすめです。

  • 史実ミステリー。
    実在した武将、荒木村重が、織田信長に謀反し、有岡城に籠城。その城で起きた4つの事件を荒木村重が解く。

    といったあらすじです。

    史実通りに物語を進めながら、そこにキレイにミステリーを織り交ぜています。凄いの一言。

    登場人物の言語に当時の言葉が入っている為
    、多少の読みにくさがありましたが、臨場感が出る良さもありました。

    現代と違い死が当然の様に生活の中にある戦国時代の武将や民の死生観。
    ただ名誉を望む武将の勇ましさ。
    元々戦国時代が好きな私ですが、今回は違った視点から戦国時代を覗く事ができ、新たな知見を得られました。

  • そうだ! 久々にミステリーを、と手にした一冊。
     
    天正六年十一月。
    天正がいつなのかは知りませんが、とにかく戦国時代。織田信長が本願寺の一向宗と戦っているそのとき。
    摂津(現在の大阪あたり)国を任されていた信長の家臣、荒木村重は謀反を起こして、有岡城に籠城する。そこに信長の使者として訪れた黒田官兵衛を土牢に幽閉するところから物語は始まる。
     
    序章と終章を除けば四章建ての連作短編。
    籠城中の城内で不可思議なことが起こり、それを捨て置けなくなる城主の村重は幽閉中の官兵衛の知恵を借りることになる、というのが各章のパターンです。
     
    う~~~ん……。
    青春ミステリーの「氷菓」「本と鍵の季節」
    本格ミステリーの「満願」
    暗黒ミステリーの「儚い羊たちの祝宴」
    等々。いろいろなミステリーに挑戦する著者。
    今回は戦国時代を背景に、しかも智将として名高い黒田官兵衛を“安楽椅子探偵”として用い、しかもしかも籠城中の城の中で土牢の中という二重のクローズドサークル。
    非常にそそられる設定です。
    なんですけど……、戦国時代物×ミステリーのはずが、どっちつかずの印象。
    戦国時代の情景や籠城中の城の中という空気感は良く感じられた。けど、かんじんのミステリーに惹かれない。第一章から「は?」と思う。第二章も「ふうん」で、第三章に至っては「うそーん」と思った。第四章でもそれほどの驚きは得られず、残念でした。
     
    これはどちらかと言えば、時代物として読んだ方が楽しいかな。
    偶然だけど少し前に読んだ「村上海賊の娘」と時代背景が一緒。共に信長を前にしての籠城で「毛利はまだ動かぬのか~」という話。
     
    にしてもこの時代における織田信長という存在は巨大ですな~。
    ラスボス感が半端ない。
    一族郎党、降伏した者だろうが、女子供だろうが容赦のないその殺戮ぶりは“魔王”と畏れられる所以でしょうね。
    いったい、その采配ひとつで何万人を殺したのか。
    後を継いで日本を統一した秀吉や、長く幕府を安定させた家康よりも信長の方が存在感が強いのはなぜだろう?
    そのうち信長の物語をガッツリ読んでみようかな。なにがいいだろう? 司馬遼太郎先生でなにかあったかな?
     
    そして、対する一向宗も半端ない。
    「進めば極楽、退かば地獄」の合言葉で半ば洗脳し、ろくに訓練も装備もない者を死を恐れない「死兵」として利用する。
    恐ろしい。
    でも戦って、戦争って、お互いに知らない者同士で恨みも何もない同士が集団で殺し合わねばならないのだから、まともな神経じゃあ無理なんだろうな。
    きっとある種の狂気が必要で、そのための装置として宗教が都合がいいのか。
    なんて思った。

    • 土瓶さん
      まっちゃん、ありがとー。
      でも、あれは、やっぱり……。
      「うそーん」て、なるわ。
      ( ̄□ ̄;)!!
      まっちゃん、ありがとー。
      でも、あれは、やっぱり……。
      「うそーん」て、なるわ。
      ( ̄□ ̄;)!!
      2022/07/20
    • hiromida2さん
      どんちゃん、こんにちは。
      お〜!ミステリーだけでなく、時代物にも通じているのですね、恐るべし(*ꆤ.̫ꆤ*)
      本当に織田信長の存在感は半端な...
      どんちゃん、こんにちは。
      お〜!ミステリーだけでなく、時代物にも通じているのですね、恐るべし(*ꆤ.̫ꆤ*)
      本当に織田信長の存在感は半端ないですよね!
      随分前に私も司馬遼太郎さんの「国取物語」
      夢中になり読みましたよ!面白い(^ν^)
      私は「国取物語」の一、二の斎藤道三編が好きでした。
      信長編はやっぱり恐ろしい人物ですが…

      やっぱり人気があるというか、圧倒的な存在ですよね。
      どんちゃんの「うそ〜ん」の下りにはまっちゃん同様
      笑っちゃいましたよ( ´∀`)爆笑
      2022/08/07
    • 土瓶さん
      ひろみさん、こんばんは~^^
       
      通じてませんからっ! 時代物。
      ただ、おもしろそうだな~って思ったものは何にでも手を出すだけです。
      ...
      ひろみさん、こんばんは~^^
       
      通じてませんからっ! 時代物。
      ただ、おもしろそうだな~って思ったものは何にでも手を出すだけです。
      知り合いに「どんな本を読んでるの?」って訊かれても返答に困るので、いつも「絵本からエロ本まで幅広く」と答えるようにしてます。
      ほとんど変態ですね((´∀`*))ヶラヶラ 
       
      「国盗り物語」読まれたんですね。
      ひろみさんの方こそ幅広い。いやいや、隅に置けませぬな(ー_ー)!!
      斎藤道三というとマムシの二つ名があったような。
      大名なのにマムシ呼ばわりって凄いよね。
      けっこう興味深々。
       
      「黒牢城」の第三章のラストは……やっぱり今思い返しても「うそーん」(゚Д゚;)ってなります(笑)
      2022/08/07
  • 【感想】
    素直に面白かった!戦国時代×ミステリーという奇抜な題材でどうやって話を転がすのかと不思議に思っていたが、読み進めてみたら2つが驚くほどピタリと調和している。舵取りを間違えればあっという間に取っ散らかってしまいそうなテーマを軸に、よくぞここまで綺麗にまとめたなぁ、と感心してしまった。

    ミステリー小説に欠かせないのは「犯行の動機」である。しかし、世の中には多くの推理小説が存在し、復讐や私利私欲といった理由は手垢がつきすぎている。かといって奇をてらいすぎれば「そんな動機で?」と消化不良に陥るため、ストーリーやトリック以上にバランス取りと地固めが必要になってくる。
    しかし本小説の犯行動機は「面子を守るため」、「功名争いのため」、「謀叛を隠すため」といった戦国時代特有のものであり、これが絶妙に先の展開を読みづらくしている。加えて、探偵である村重の捜査も「兵士の士気を下げない」、「籠城をしながら手柄を立てさせる」、「己の真意を家中に悟らせない」といった特殊な思惑にもとづいて行われており、これが合わさることで全く新しいタイプのミステリーが生み出されている。

    「新しいタイプ」なのは犯行動機だけでなくストーリーにおいても同じだ。普通は探偵が謎を解いて一件落着、となるが、むしろ謎を解くたびに村重は追い詰められていく。表向きは城内で起こる奇異な事件を解き明かしながら、裏では自分が企む犯行(織田との和睦)を感づかれないよう気を配らなければならない。主人公である村重は探偵であると同時に犯人でもあるのだ。
    そしてその犯人の心の内を暴いていくのが、真犯人であり真探偵でもある黒田官兵衛だ。この二人は探偵と助手でありながら敵同士という奇妙な関係を持っている。数々の謎解きを通じて、黒田が村重の孤独を見抜き、その喉元に手をかけていく。村重は身の危険を感じながらも、自身の言葉を真に理解できる者は黒田をおいて他にいないと確信し、その知略に頼る。この奇妙な互恵関係が物語をつなぎ、「探偵:村重」の立場と「犯人:村重」の立場から二重の面白さが生まれていく。

    あらためて、時代設定の妙が為せる技だと思った。全ては表裏一体なのだが、そんなありえない関係が成立してしまうのも、面子や建前、謀りごとがぐちゃぐちゃに入り乱れる戦国時代ならではであり、それを本当に効果的に使っていると感じた。

    なんとなくだけど、バットマンとジョーカーが手を組んだらこんな感じになりそうじゃないですか?

  • 情けないことに歴史には疎い。
    戦国時代の武将達の関係性やら来し方行く末は、ほとんどぴんとこない。
    そんな自分でも大いに楽しめた。

    戦乱の世を生きる将の生き様を熱く描きつつのミステリ要素との融合。
    疎いのでどこまでが定説に基づいているのかわからないけれど、ある程度下絵があるが故にどのように著者色に染めるのかが力量を問われるところかと思うが、自分的には素晴らしいの一言。

    ハンニバル・レクター、ニッチなところではジャック・カーリイのジェレミーを彷彿とさせる、有岡城に幽閉された黒田官兵衛の、異様なまでの囚われの天才感、そして最初は泰然自若とし自信に満ち、また周りもそのカリスマに呼応していた荒木村重が、次第に求心力を失い惑い行く様に味がありすぎる。

    さすが直木賞受賞作、軍師官兵衛を観ていたり、この時代のことに通じていたりするともっと楽しめるのかな。
    タイトルもまたにくい。

  • 織田信長に叛旗を翻した荒木村重は毛利の援軍を待つ籠城作戦を開始。しかし援軍はなかなか訪れず、城内では人々の心を惑わす不可思議な事件が次々と起こる。その謎を地下牢に囚われた黒田官兵衛が村重の話を聞くだけで解いていく。謎がメインかと思っていたら村重の籠城作戦がどう展開していったかという戦国小説成分が多め。始め読みにくかったがどんどん引き込まれてしまったのは流石。人質の少年や使者の廻国僧が密室状態で死んだ謎やどの首が大将首なのか?といった謎が小粒で無理あるんじゃ?と思っていたら“何故”発生したのかを村重が考察する際に今までの背景が過不足なく噛み合いそれしかない真相に辿り着いたのは天晴天晴。大河の「軍師官兵衛」を見ていたら役者さんで想像出来たのかな。私は村重が敵陣への夜討ちの際に弓で狙いを定めた時に唱えた祈りの所で「ドリフターズ」読み返したよ。新刊はよ出ないかな。

  • 土牢に入れられた黒田官兵衛の元に、荒木村重が訪れる。そこで官兵衛に城内で起こった事件のあらましを話し、解決のヒントをもらい、事件を解決するという話。こういうのを安楽椅子探偵と言うのかな?とにかく、官兵衛の頭の良さに感心してしまう。

    有岡城に籠城していた荒木村重たちも、日に日にいつか織田軍に攻められるという事に疲弊と不安が増していく。負のオーラが漂う中、不可解な事件や天罰が下ったかのような出来事が起こる。そんな時、人々は宗教に頼ってしまうんだろうと思った。こういう人々の心が病んでいく心理描写が上手だ。

    設定は面白いと思うんだけど、文章が難しくて私の力では読み進めれなかった。あと、主人公の荒木村重にどうしても感情移入ができなかった。大河ドラマ『軍師官兵衛』を観てたので、ドラマでこの有岡城の話は、官兵衛=岡田准一くんが苦しんだ場面だったので、どうしても荒木村重が好きになれない。私は岡田くんが好きなので…。そういう理由から星が1か2だったんだけど、最後の伏線回収が見事で星3になった。事件が解決しても何か違和感を感じてたんだけど、その違和感の正体が分かった時、「お〜」となった。さすが米澤穂信さん。荒木村重も本当はどこかで気付いてたのかも。でも、無意識に考えないようにしてたのかな?と思いました。

    最後に官兵衛が、もしあれをしてれば、これをしてれば、と考えてたんだけど、乱世ではそれを考え出すとキリがないと思う。結局、原因があって結果があり、今があるから。

  • 信長の畿内平定直近の関西での大事件とも言える荒木村重の謀反、有岡城の戦いを舞台に描いたミステリー作品。

    有岡城の戦いがミステリー??って思い読んでみたらしっかりと戦国クローズドサークルがでてきたり戦国安楽椅子探偵的な感じやし戦国ならではのトリックを使ったバリバリのミステリー作品やのに歴史の本筋も外していない歴史好きもミステリー好きも楽しめるさすがは直木賞受賞作って感じの戦国ミステリー作品!

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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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