最後の晩ごはん 後輩とあんかけ焼きそば (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 49
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041115275

作品紹介・あらすじ

芦屋の定食屋、ばんめし屋で働く海里のもとに、俳優時代の後輩・李英がやってきた。俳優修業で滞在していた関西から、東京に帰ることになったという。しかしばんめし屋での送別会の当日、李英は現れず……

感想・レビュー・書評

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  • つい最近シリーズ第15作を読んだばかりなのにもう第16作が出ていた。

    前作での役作りの結果がどうなるのか楽しみにしていたのだが、正式デビューはまだ先らしい。次の回だろうか。
    今回は海里と、役者時代の後輩・里中李英の物語だった。

    李英といえば海里がミュージカルでデビューした時も、その後バラエティー番組に進出して人気が出始めた時も、スキャンダルに巻き込まれて芸能界を追放された時も、〈ばんめし屋〉で働き始めた時も、そして再び役者への道を歩もうとしている今も、ずっと海里を慕い応援してくれる可愛い後輩。
    一方で李英自身は海里と同じミュージカルでデビューしながらその後はパッとせず、しかし地道に舞台での経験と稽古を積み重ね、舞台以外の仕事も次々舞い込む人気俳優となった。だが彼は舞台俳優一本で生きることを決め、今回事務所も移り東京進出することにしたのだが。

    何という運命の皮肉…李英に思いもよらぬ病が発覚。難しい手術が必要で、しかも例え手術が成功しても日常生活を送るのがやっとだという。それは李英の役者人生を諦めろということ。
    この苦しい状況から逃げ出したかのごとく、李英は生霊として身体から離れてしまう。

    シリーズの元々の設定からまさか李英が…と不安になったが、少し読み進めればそんな最悪の結末にはなりそうもなくホッとする。
    これは〈ばんめし屋〉のメンバーの不思議な運命の物語でもあった。

    〈ばんめし屋〉の店主・夏神は恋人を救えないまま一人生き残り苦しんでいたところを洋食屋の師匠に救われ、その夏神は芸能界を追放され行き場のない海里を救い、海里は消失寸前だったメガネの付喪神ロイドを救い…と奇妙な縁で繋がった三人はいまや家族同然に暮らしている。
    そして今回、生きる意味を失って彷徨う李英の生霊を救おうと三人それぞれの立ち位置で向かっていく。

    努力家なのに謙虚な李英の屈託にも踏み込んだ今回は、李英が単なる優等生キャラクターではないことを示してくれた。彼にも表には見せない苦悩があり、それを越えるために頑張ってきたことが分かる。

    無事に手術が成功しても、激しい動きを要求される舞台俳優の仕事ができるかは分からない。しかし李英の将来に一つのヒントが示される。海里のこれまではここに繋がる壮大な伏線だったのか?
    これから海里と李英がどんな道を進むのか楽しみな一方、時折描かれる夏神の寂しさも共感出来るし、どのような結末を作家さんが考えているのか注目したい。

    ※シリーズ作品一覧
    (全作品レビュー登録あり)
    ①「最後の晩ごはん ふるさととだし巻き卵」
    ②「最後の晩ごはん 小説家と冷やし中華」
    ③「最後の晩ごはん お兄さんとホットケーキ」
    ④「最後の晩ごはん 刑事さんとハンバーグ」
    ⑤「最後の晩ごはん 師匠と弟子のオムライス」
    ⑥「最後の晩ごはん 旧友と焼きおにぎり」
    ⑦「最後の晩ごはん 黒猫と揚げたてドーナツ」
    ⑧「最後の晩ごはん 忘れた夢とマカロニサラダ」
    ⑨「最後の晩ごはん 海と花火とかき氷」
    ⑩「最後の晩ごはん 駆け出し俳優とピザトースト」
    ⑪「最後の晩ごはん 聖なる夜のロールキャベツ」
    ⑫「最後の晩ごはん 秘された花とシフォンケーキ」
    ⑬「最後の晩ごはん 閉ざした瞳とクリームソーダ」
    ⑭「最後の晩ごはん 地下アイドルと筑前煮」
    ⑮「最後の晩ごはん 初恋と鮭の包み焼き」

  • 李英…
    まさかそこまでなってしまうとは、、

    この先輩後輩の信頼関係は素敵すぎる。
    ネガティブとポジティブが入り乱れて心が忙しくなりました。

  • シリーズ第16弾。
    主人公、五十嵐海里に大事件が発生する。
    と言うか、彼の後輩である李英の身の上に起こる危機。
    苦しむ海里を、優しく見守り、何とか励まそうとする夏神とロイド。
    この作品の登場人物たちは、いつでも相手の心を思いやり、優しい気持ちに溢れている。
    あちこちに名言が飛び出して、グッとくるのです。
    今回は、いつも礼儀正しい李英の内面が見えて、ますます応援したくなりました。

  • シリーズ、第16弾。
    しばらくは、五十嵐海里が芝居の道に戻るべく、倉持悠子の元で朗読の修行をする話が続いていた。
    今回は、海里が芸能界を追われた後も変わらずに、先輩先輩と子犬のように慕ってくれた、里中李英がクローズアップされる。

    李英とは、海里が人気タレントとなるきっかけを作った、2.5次元ミュージカル公演で共演し、ともに稽古で苦労を重ねて交流を深めた仲。
    ロングランが終わった後、海里はタレントとしてテレビ出演をするようになり、やがて身に覚えの無いスキャンダルのせいで芸能界を追われた。
    そして、夏神に救われて「ばんめし屋」で働くようになり、ようやく心の傷も癒えて、少しずつ演劇を勉強し直すようになっていた。
    一方、その間も李英は舞台一筋。
    なかなか大きな役が付かない間も、コツコツと小さな芝居に出て、努力を続けていた。

    せっかく積み上げてきた夢が、自分ではどうすることもできない力で崩されようとする時、人はどう生きればいいのか。
    まわりの人間は、大切な人の苦しみや悲しみを支えたいと思った時、どんな言葉を掛ければいいのか。

    夏神の師匠・舟倉が夏神を思い、
    海里の師匠・夏神が海里を思い、
    李英の先輩・海里が李英を思う。

    波乱万丈の人生があっても、いつか思い出の飯を食べながら笑い合いたい。
    それが願いだ。

  •  大好きな最後の晩ごはんシリーズ。
     今回は後輩の李英くんが出てくるということでどんな話かと思っていたのですが、なかなかヘビーな展開に……。

     師匠と弟子。先輩と後輩。
     そういった関係性の間に受け継がれるものの話なのかなと思いました。誰もが自分勝手に相手の幸せを狂おしいほどに願う。そんな優しさに満ちている。
     夏神さんの料理にもそんな気持ちが満ちていましたね。

     「別れの辛さは、それまでの幸せが大きかった証拠やないか。それは、受け取らんとしゃーないもんや。幸せとつらさの収支が合うたっちゅうだけのことやで」

     この師匠の言葉が好きです。
     別れのつらさと出会えた幸せは等価。だからこそ、私たちはきっとその人に出会えたことを最高に感謝をするのだと、そう思うのです。

  • 泣きそうになった。

    思い入れが強い相手だったから
    いつも以上にグッときた。

    大事な人が大変な事になったら
    全然動けないだろうな、と海里の姿を見て思いました。

    こちらの我が儘でこうしてほしい、こうあってほしい、という見方は
    いいなと思うので真似したいです。

  • このシリーズは、挫折した人たちの再生が大きなテーマだと思うのだが、今回は李英くん。彼を案じる余りなのはわかるが、海里が異様に使いものにならず、びっくり。

  • 最後の晩ごはん、16巻目。
    今回は海里の弟分、李英の話。着々と舞台俳優への道を歩んで、やっと夢の一歩を踏み出しかけた李英を突然の病が襲う。有事の際のロイドの落ち着きっぷりや、さりげに見せる包容力が頼もしい。できる眼鏡だ。李英は優等生キャラすぎてあまり好きじゃなかったけど、今回海里に本音でぶつかったシーンを見てちょっと見直した。最後の晩ごはんの登場はやや唐突。それ食べたら成仏しちゃうんじゃ…!?と心配したけど、安定のハッピー大団円でよかった。
    会社近くのお気に入りの定食屋のメニューに木の葉丼があって、木の葉丼って何だろ…と思ったけど、かまぼこのどんぶりなのか~美味しそう。今度食べてみよかな。

  • シリーズ16冊目。
    えっ、こんな展開になって‼︎
    と驚きつつ仲間の絆の強さに心揺さぶられたり。
    とりあえず今回は「最後の晩ごはん」登場がなくてよかった…のかな。

  • 登場人物それぞれがそれぞれを思いあう絆がものすごくきれいだった。

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著者プロフィール

作家。監察医。講談社ホワイトハート「人買奇談」にてデビュー。代表作は「鬼籍通覧」シリーズ、「奇談」シリーズ(講談社)、「最後の晩ごはん」(KADOKAWA)、「時をかける眼鏡」(集英社)など多数。

「2023年 『妖魔と下僕の契約条件 5』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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