まほり 下 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 374
感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041120521

作品紹介・あらすじ

主人公裕は、膨大な古文書のデータの中から上州に伝わる子間引きの風習や毛利神社や琴平神社の社名に注目し、資料と格闘する。裕がそこまでするには理由があった。父が決して語らなかった母親の系譜に関する手がかりを見つけるためでもあったのだ。大した成果が得られぬまま、やがて夏も終わりに近づくころ、巣守郷を独自調査していた少年・淳が警察に補導されてしまう。郷に監禁された少女を救おうとする淳と、裕の母親の出自を探す道が交差する時――。宮部みゆき、東雅夫、東えりか、杉江松絶賛の、前代未聞の伝奇ホラーミステリーにして青春ラブストーリー! 感動のラストまで目が離せない、超弩級エンターテインメント。

感想・レビュー・書評

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  • 下巻冒頭から裕の文献探索の続きが描かれますが、紙媒体だけでなく、マイクロフィルムやデータベース、国立国会図書館デジタルコレクションなどなど、さまざまな形で保存されている資料を駆使して調査を進める過程に鳥肌が立つくらいしびれました。
    裕に助言をくれる2人の歴史資料の専門家もかっこいいです。
    1人は史料の存在自体を重視して歴史解釈には中立を保つという立場、もう1人は大胆に史料を批判してその裏に隠された歴史を読み解くという立場。
    この2つのスタンスが史学の両輪になっているということを、物語の中でたっぷり味わうことができました。

    文献の中から明らかになる史実と現在進行形で進む不穏な事態がだんだんと結びついて、最後まで息もつかせぬ展開でした。
    本書のタイトルの意味が明らかになった瞬間にも、物語最後の裕の一言にも、不気味さと静かな興奮でぞくぞくしました。

    『図書館の魔女』の続編も心待ちにしているけれど、本書のようなミステリーももっと読みたい…!
    改めて高田大介作品を追い続けていくことを心に決めたのでした。

  • 話がグッと進み始めた後半。やっとテンポが良くなった。
    まほり、というタイトルが実はどのような意味を持っていたか。そこが判明するまで、主人公と一緒に大変な史料の点検をしてきた感じ。ある意味すごい臨場感。もちろん実際の研究はもっとじっくり文書を読み込むはずだから、読者側の私は楽をさせてもらったと思う。

    伝奇ミステリという分野が昔流行った。似ているが、口伝より史料から謎を読み解く感じが、新しかった。
    作中の古文書の文章は、実在のものなのか、創作なのか。どちらにしてもすごい。普段から作者さんはこういう文書に触れているのだろうと思った。楽しそう…

    準主役の少年淳の出会った着物の少女と、裕のルーツ、両方がスッキリする。
    古い因習による凄惨な過去を明らかにする話、かなり好物なので、楽しめた。

  • 民俗学ミステリ 下巻です。

    わかってはいたけれど、さすがは言語学者さん。
    難解です・・・が、面白い。
    歴史を遡れば残酷無残に行き当たる・・・
    裕は、自分が発信源にならぬよう注意された。
    スキャンダラスで差別的な事は広がりやすい。

    ある程度の考察が整ったところで、村の少年:淳が
    帰ってこないと連絡があり、急遽、山に向かう。
    そこに、紹介してもらった先生から連絡が来て、
    裕の考察を真っ向から否定する。
    聞いているうちに、淳と少女に危険だと判断。

    ここから怒涛の展開がすごかったぁ~
    久しぶりに焦りと緊張で心臓バクバクでしたよぉ~
    「まほり」の意味が分かった時の恐ろしさったら!

    裕の本題である、母親の事。
    何一つ語られることはなかったけれど、最後の一言で
    その理由がわかってしまった。
    いやぁ・・・またもスゴイものを読んでしまいました。
    この著者の作品の重厚さは、やっぱりスゴイなぁ~

  • 半分からは続きが気になってドキドキしながら読み終わりました。出てくる単語や専門用語が少し難しくて読む人を選ぶかもしれないですが、テーマは非常に興味深く登場人物を含めた『場』の雰囲気を描くのがすごく巧い作家さんだなと思いました。

  • 上巻に続き、前半は幾つかの謎の核心に迫る文献資料を追う長い道のりにペースダウン。
    飢饉や間引きといった悲惨を予感させるワードから覚悟はしていたものの、“まほり”という言葉に隠された陰惨な因習に寒気を覚えずにはいられなかった。
    多くが語られないままの裕の母の形見がもたらす終わりもこれ以上ないインパクト。彼女が何を感じて生き、どういう経緯を辿って裕の父と出会ったか知りたい気持ちは山々だが、母親を苦しめていたであろう辛い過去の鎖を息子が時を越えて断ち切ったことに救われた思いがして、痛ましさと共に胸が熱くなる。

  • もう、何を言ってもネタバレそう・・・
    閉ざされた村の歴史と、今も行われる儀式とは。
    ホラー調だけど、呪いとか霊とかは出ない。
    そして言葉が難しい。世の中には私の知らない言葉がこんなにあるとは。
    語源とか、候文とか、知らないことがいっぱい。
    難しいので躓きつつではあるが、最後の一章は途中で止められません。

  • 卒業研究グループでの飲み会、メンバーの一人が、友人によく怖い話として聞かされていた話があると言う。上州の某町では、二重丸が描かれた紙がいたるところに貼られ、好奇心からその紙の探し回った子供達は、岩場の斜面にお堂のようなものを見つける。細い隙間から覗いた子供が叫んだ。誰かいる!
    ある者は痩せ細った子供が正座して何かに謝っていた、ある者は正座して屈んだまま何かを結いていたと言う。顔は見たか?の問いにはこう答えた。「眼帯をしていたようだった」「目隠しをしていたか、包帯をしていた」

    これはねえ!!!上下巻を一気に読んだ方がいいですね!!!!!なんというか、途中のところというか中盤の結構な部分が「自分は民俗学か何かの教科書(民俗学の研究の仕方とは的な)を読んでるのかな?」と思うところありつつも、その民俗学な所がこの話の根幹と不気味さを支えていて、全体の仄暗さを際立たせて感じさせてくれる〜!そして第十五章からの怒涛のラスト〜!!!そうか〜!!!そうきたかなるほどね〜〜!!!!そういうことね〜〜!!!最後の第十八章を読んだ後に「あああああ」ってなって第四章を読み返して「ああああああ」ってなるってわけですよなので上巻の内容が薄れないうちに下巻読み終えてください。はあ〜そりゃあね〜お父さんそういう反応するよねえええて

  • 大学生の裕が母の出自を探るためある村を調べる話。探していくうちに怪しげな伝承が浮かび上がり、別口で調査する少年と出会い、どう終着するのか気になる。裕の成長や、学者達のスタンスも個人的見所。民俗学の奥深さを知る、まほりってそういう意味なのか。

  • 古文書部分も慣れると雰囲気は伝わるもので、何となく意味も伝わる。物語の後半先が気になりはじめると読み飛ばしたくなるのを我慢しなくてはならないのが、逆にマイナス要素か。蘊蓄万歳で、京極夏彦的で良かった。ただ超弩級のエンターテイメントって煽るなら上下巻で分冊しないで一巻本にして欲しかった。

  • 日本語学をかじっている私は種明かしの前に「まほり」の意味を理解してしまったため、衝撃度は低くなってしまったことが残念。

    それよりもストーリー展開がどこかで読んだことがあるように思えてしまうことの方が残念かも。

    大好きな「図書館の魔女」ほどの心の震えには至らず。それがそもそも残念。

    「図書館の魔女」は私の心の中の金字塔だったので、高田さんの次作に期待し過ぎたかもしれない。

    かなり現実に寄せた物語であり、多くの配慮が働いていたように思う。それは…まるで自己規制。表現の無限の自由を奪いかねないような。

    ファンタジーのほうが自由に表現を羽ばたかせられるのではないでしょうか。それができなかった不自由さのようなものを感じました。

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著者プロフィール

2013年『図書館の魔女』(第一巻~第四巻)でデビュー。デビュー作が和製ファンタジーの傑作として話題となり、「図書館の魔女シリーズ」は累計32万部を記録。著書に『図書館の魔女 鳥の伝言』(上下)がある。『まほり』は著者初の民俗学ミステリ。

「2022年 『まほり 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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