過ぎる十七の春 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 735
感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041127513

作品紹介・あらすじ

運命の春が来る──。従兄弟同士の直樹と隆は、まもなく十七歳の誕生日を迎えようとしていた。毎年同様、隆の住む花の里の家を訪れた直樹と典子兄妹。そこは木蓮や馬酔木や海棠や空木などに埋もれた野草の里。桃源郷のような場所にも関わらず、心優しい隆の目は昏く、なぜか母親の美紀子に対して冷淡な態度をとってしまう。母子に一体何があったのか――。「あの女が、迎えに来る…」毎夜部屋を訪れるなにものかの気配に苛立つ隆。息子の目の中に恐れていた兆しを見つけて絶望する美紀子に異変が。直樹と隆──二人の少年を繋ぐ悲劇の幕が上がる!!

感想・レビュー・書評

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  • 主人公たちに降りかかって来る災厄から逃れる方法があるのか?災厄の根源を探り当てことが出来るのか?徐々に解き明かされていく。ジワジワと恐さが増していく。そんなホラー、ミステリーです。

    母の姉の美紀子と従兄弟の隆の家に遊びに来た、兄の直樹と妹の典子。伯母たちが住む場所はまるで桃源郷。花々が咲き誇り、綺麗で直樹と典子が感動してしまうほど。私も読んでてそんな場所見てみたいと思ってしまう。でも私はあまりにも綺麗過ぎて、逆に何か不吉さを感じてしまった。何か悪い事が起こるだろうと。読み進めてくと、はじめは明るい感じなのに、やっぱりだんだんと不穏な空気が流れてくる。家中でピリピリしてた時に事件が起こる。あとは悪い方向にまっしぐら。何かとは言えないけど、"悪い気配"を感じるっていうのは恐いな。実体が近づいてくるのは目に見えるからまだいいと思うけど、"気配"というのは正体が分からない、見えないから不安と恐怖しかないな。この"悪い気配"に隆と直樹は呑まれてしまうのか…。

    キーワードは"17歳"。母親たちの旧姓は菅田。菅田家の長男が"17歳"になる時に起こる謎。この"17歳"の謎を解いていくのが読んでて面白かったな。正直、前半の直樹と典子のやり取りがどうにも嫌だったんだけど、後半にこの謎解きが面白くて気になって気になってしょうがなかった。後半から面白くなった感じ。美紀子の息子への想いが切ない。1人で秘密を抱えて暮らしてたのは辛いな。

    私は、隆の飼い猫の三代が好き。直樹と隆の守り神。老猫なんだけど、2人を守る姿は勇ましい。

  • 17歳、運命の春の一冊。

    従兄弟同士の直樹と隆が迎えた17歳の誕生日。
    それは紛れもない二人にとって運命の春だったというストーリー。

    春という季節をうっとりするほどの美しい色彩溢れる言葉で堪能し、抗えない運命と言える17歳を迎えることの意味を恐怖と共に堪能した。

    ホラー感は小野さんらしく、肌が粟立つような描写が絶品。
    そこに重なる母子の関係が不安感と謎をより高めていき、次第に紐解かれていく運命の原点はミステリ要素で満たされる。 

    母の、子への深い愛、そして決して屈しない強さが春の陽だまりと眩しさに溶けあうような読後感。

  • 1990年7月朝日ソノラマパンプキン文庫刊呪われた十七歳を加筆修正、改題し、2016年3月講談社X文庫ホワイトハート版の過ぎる十七の春刊行。さらに加筆修正し、2023年1月角川文庫化。前半の展開は冗長。後半はそれなりの展開があり、怖いけど驚きは少なかった。

  • 2016年刊の新装版。

    雰囲気たっぷり。饒舌な掛け合いのない、あさのあつこさんみたいな文章だった。

  • 最初のうちは桃源郷のような花の里で従兄弟同士の平和な日常、綺麗な世界観に浸っていたら徐々に怖くなってきて、ゾクゾク、ゾワゾワと目が離せなく、明らかになっていく真実に驚愕…!怖く哀しくも母親の愛に心温まるお話!

  • 小野不由美さん初期作の新装版。先に出た「緑の我が家」と並んで著者の原点とも言えそうな作品。山間の隠れ里、数寄屋造りの古い日本家屋、先祖代々の因縁、そして猫…ベタといえばベタな設定だけれど、情景描写の巧さはやはり格別。レトロ感たっぷり、純和風テイストの青春ホラーミステリーを堪能した。

  • 小野不由美さんの以前の作品をあらためて収録されてるそうだけど、相変わらず怖い。何かひたひたと迫ってくる人間でないものが怖い。でも結局人間も怖い。

    最初のうららかな桃源郷のような世界が少しずつ、気づいた時には何かが確実に変わってしまってる。

    怖いのに読み止まれないのもまた、文の力ってすごいな、と思わされる作品でした。

  • 前半が読みづらいなと思ったら、90年刊行の作品を加筆修正したものですか。若いときの筆では無理なからんと感じると同時に、小野不由美さんならではの才気もありありと。

  • 小野不由美の十二国記が名作なのはわかったから、とりあえずホラーを読んでくれ…。彼女の真骨頂はホラーだ!
    小野不由美先生のホラーはジャンルでいうと心霊ホラーとミステリーのかけあわせ感がある。
    怪異にも怪異なりの理屈があるというもので怪異がなぜ起こるのかの突き詰め方は完全にミステリー小説。
    だからひたすらになんかやばいものが出てきてうわー!って感じではなくて、めちゃくちゃ好み。おもしろい。
    情景描写の綺麗さと空間に恐怖を湛えさせるのがすっげーうまい。
    小野不由美、小説がうますぎる(あまりにも不敬)。
    表紙がぱっと見ホラーものに見えなくて切ない青春物っぽく見えるがちゃんとホラーなので…

  • 序盤で挫いてしばらく積読状態でしたが、
    ある程度、読み進めると先が気になって仕方なくなり一気に読めました。

    安定の面白さでした。

    このように昔の良作を改めて出版していただくのは目に触れやすくてありがたいです。

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著者プロフィール

大分県出身。講談社X文庫ティーンズハートでデビュー。代表作に『悪霊シリーズ』 『十二国記シリーズ』『東亰異問』『屍鬼』など。重厚な世界観、繊細な人物描写、 怒濤の展開のホラー・ミステリー作品で、幅広いファンを持つ。

「2013年 『悪夢の棲む家 ゴーストハント(1)特装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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