彼らは世界にはなればなれに立っている (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 427
感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041138625

作品紹介・あらすじ

「この町はとっくにひっくり返っている。みんなが気づいていないだけでな」〈はじまりの町〉の初等科に通う少年・トゥーレ。ドレスの仕立てを仕事にする母は、「羽虫」と呼ばれる存在だ。誇り高い町の住人たちは、他所から来た人々を羽虫と蔑み、公然と差別している。町に20年ぶりに客船がやってきた日、歓迎の祭りに浮き立つ夜にそれは起こった。トゥーレ一家に向けて浴びせられた悪意。その代償のように引き起こされた「奇跡」。やがてトゥーレの母は誰にも告げずに姿を消した。消えた母親の謎、町を蝕む悪意の連鎖、そして、迫りくる戦争の足音。ドラマ「相棒」の人気脚本家が突きつける、現代日本人への予言の書。高知市の「TSUTAYA中万々店」の書店員、山中由貴さんが、お客様に「どうしても読んで欲しい」と思った本の中から、特に選んだ1冊に授与する賞、第4回山中賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • いつもの作風と大分違うから評価的には割れたって聞いてたから構えて読んだけど、元々ファンタジー行ける口なせいか全然行けた。ただ終盤魔術師目線になった辺りからちょっと直接的な社会批判が多めになっちゃって、”風刺”としてはもう少し読者に委ねてくれた方がジワジワ来るんじゃないかと感じなくも無かったかな 

  • 太田愛の3部作とは全く異なる、若干ファンタジーじみたドラマ。舞台は中世の海外のイメージで、主に身分差による差別や迫害が描かれる。裏には現代への警鐘が流れていて、描写が辛いのでメッセージとしても強い。とは言え相性が悪く、とても読み進め難かった。4部に分かれてそれぞれ語り手も違うが、特にカタルシスもなく、まあまあ淡々としている。作品としてはとても意義があるとは思うんだけど……。

  • 羽虫(移民)達がしいたげられる架空の街でおこったことを、4人の目線で語る。

    『レーエンデ物語』の一章かと思うようなお話。
    太田愛さんの鑓水シリーズとはガラリと違うものの、
    現状を楽な方へ選択していくとこうなっていくのだ、という『天上の葦』でのテーマを彷彿とさせた。
    最後は涙が出そうだった。

  • 太田愛さんの他作品と作風こそ違えど社会への警鐘という根本は一緒だと感じました

    舞台は始まりの町、1人の流れ者が町から姿を消すことから物語は始まる
    なぜいなくなったのか、消えなければいけない理由があったのか

    「この町は根が傷んでいるんだ、もうずっと以前から。深い所から腐っているのに、みんな気づかないふりをしてそれを認めようとしない。」

  • 著者の「犯罪者」からの3部作は、ミステリ系の極上のエンタメだったが、これは作風が違う。
    異国情緒のある導入部で、ファンタジーなのか何か、最初の40ページほどは物語の全体像が見通せずとまどったが、一人の失踪発生後は物語に引き込まれた。
    ミステリ好き、ファンタジー好きとか関係なく多くの人に読んでほしい。
    登場人物一人ひとりの悲しみが伝わってきて、読んでいて切ない。でもそれだけの話ではない。読者に訴える言葉の力が強い。
    読み終えても長く心に残る物語です。

  • ミステリーの太田愛さんを期待して読んだら、今回は作風が違うので驚いたけど、それはそれとして興味深かった。ディストピアの世界観、女性であること、生まれ、肌の色、といったもので奪われ暴力を受け続ける人たち。希望がない物語は、フィクションだけど現実だと感じた。けれどもうひと展開を期待してしまったのは、希望がないからでもあるかもしれない。救われない気持ちがやり場もなく、魔術師に語り継がれるというラストシーンは美しいのだけど。

  • 社会派エンターテインメントの雄が贈る衝撃作

    「わたしたちの過去も現在も未来も写しとられている。恐るべき傑作だ」(解説より) 翻訳家 鴻巣友季子

    「最初のひとりがいなくなったのはお祭りの四日後、七月最初の木曜日のことだった」――
    ここは〈始まりの町〉。物語の語り手は四人――初等科に通う十三歳のトゥーレ、なまけ者のマリ、鳥打ち帽の葉巻屋、窟の魔術師。彼らが知る、彼らだけの真実を繋ぎ合わせたとき、消えた人間のゆくえと町が隠し持つ秘密が明らかになる。人のなし得る奇跡とはなにか――。
    社会派エンターテインメントで最注目の作家が描く、現代の黙示録!

    面白かった。様々な現代の問題が組み込まれた寓話的な作品。架空の街を舞台にしてあるものの、現代に似通う思想や構造である点が良かった。
    民主主義から衆愚政治になり、全体主義的な思想が蔓延るようになるのが、今の日本のようで、この作品の終わり方に通じるものがあるのでは、と思いゾッとした。しかるべき時に声を上げないと、この世界の人たちのように自ら人権といったものを放棄し、ディストピアに陥っていますのであろう。
    また、羽虫と言われるような差別人種や伯爵といった上級階級の人がいることも今に似通っていて恐ろしかった。

  • 有り得ないほどに有り得るかのような物語
    悲しすぎて読むに耐えられない場面もあったが
    それも含めてこの世のどこかで起こりうる現実
    寓話的で引き込まれるストーリー展開は秀逸で
    読み手の視点で考えさせる手法がすごい

  • なかなか読み解くのが難しい寓話だった。
    もう一度読まないと理解できないかも。

  • 始まりの町、が終わるまでを4人の語り手から

    語り手が変わるごとにどんどん絶望的な状況に

    初期の時点で違和感があったら止めないと流されるままになってどうしようもない状況に追い込まれる
    ただほとんどの人はその状況を理解できていない

    戦前はこんな感じだったのかな
    現在もどことなく‥

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著者プロフィール

香川県生まれ。「相棒」「TRICK2」などの刑事ドラマやサスペンスドラマの脚本を手がけ、2012年、『犯罪者 クリミナル』(上・下)で小説家デビュー。13年には第2作『幻夏』を発表。日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)候補になる。17年には上下巻の大作『天上の葦』を発表。高いエンターテインメント性に加え、国家によるメディア統制と権力への忖度の危険性を予見的に描き、大きな話題となった。

「2020年 『彼らは世界にはなればなれに立っている』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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