紙屋ふじさき記念館 あたらしい場所 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041141397

感想・レビュー・書評

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  • 終わってしまった…世捨てハイスペック紙オタクだった藤崎さんが、冗談を言ったりにっこり笑ったりする姿におばちゃんホロリ。百花ちゃんはずっとずっとそばに居て、廃材の和紙の如く都度都度蘇らせて上げてほしい。ほしお作品の人々が川越に集結してきたのでシリーズまたいだビックイベントが開催されると良いなぁ。
    このシリーズで知り、訪ねた場所、探した物は数知れない。作中の紙屋さんがどんなものなのか名古屋の「紙の温度」さんに行ってよく分かった。ネパールの和紙「ロクタ紙」即刻購入しましたとも。
    うだつの上がる町並みを実際に訪れて、あるお店の方に言われたのは、紙の種類の違いはネットでは伝えられない。だからうちはネット販売はしていない。確かに目の前の2つの物は形こそ同じようだが明確に違いがあった。色、質感、紙の厚さ、重さ、カメラには同じように写るのに。作中にあるように、ネットは視覚と聴覚情報に偏っている。実感としてよく分かった。
    今年は名古屋に知己を得たし、次回の美濃旅行は絶対に火曜日(定休日)じゃない日に行くぞ(涙)

    紙媒体の世界を維持してゆくのは今とても難しくなっている。だけどデジタルデータは完成していてもそれ単体では存在できない。内容を現すには必ず電力と機械が要る。私の体でもってすぐにアクセス出来る物。実体の力は絶大だ。人間が身体から解き放たれることは無いから。データと物は役割が違うのだ。
    ほしおさんの作品はただの紹介ではなく、羅列ではく、物の本質を見つめようとする姿勢がある。
    決して古きを崇め、新しきを否定したりしない。今ある技術を生かしたまま、どのようにしたら未来に活かしていけるのかを模索する。そこがとてもとても好きだ。

  • アルバイトから正社員になって、コロナ過も経てという事で、だいぶ百花も成長して、内容も凄く真面目で少し硬い感じになってます。とはいえ又紙小物市に出たり記念館も動き始めてたりと、今までどおりの部分もあって、繋がりながらしっかり進んでいくのが嬉しい。

  • 大好きなシリーズの最終巻。
    主人公だけでなく、他の登場人物の成長も感じられたお話でした。浩介さんの場面では改めて、コロナ禍が人と人の関係だけでなく、個人の考え方にまで与えた影響を考えさせられました。

    物語は新記念館の開館を迎え、前へ進む形で終わりを迎えるのがすごく好きだなと思いました。あと著者の他のシリーズの登場人物や建物・店の名前が出てくるので、ふふふっと口角が上がってしまいました。

    このシリーズは個人的に、自分と共通点や近い点が多い(紙雑貨好き、川越と日本橋の立地、百花の大学の場所、1つ違いの学年……)ので、終わってしまうのが、少し寂しいです

  • シリーズ遂に完結。
    リニューアルした記念館が、漸く川越でオープン。
    百花も新入社員となり、プロジェクトの一員として奮闘する。
    藤崎さんは百花と関わることで世界が開けたようで、とても前向きになった。
    藤崎さんを敵視していた浩一もコロナ禍を経て自分を見つめ直し、会社を盛り立てようと共に歩んでくれそうな気配。
    この先を感じさせてくれる、とても心地よい終わり方だった。

  • シリーズ7作目で完結編。うまくまとめられたと思う。このシリーズ、コロナ禍の状況もうまく取り入れられており、好感を覚えた。さて、次はどんなシリーズを立ち上げてくれるのかな?

  • 紙屋ふじさき記念館シリーズ7作品目で、この巻で完結です。
    藤崎産業に入社した百花が、記念館準備室に配属になり、一緒に配属された同期入社メンバーと協力し、模索しながら新しい記念館の開設に向けて取り組んでいく過程が、ちょっと駆け足気味に描かれます。
    新しい記念館は川越。元は呉服店だった店蔵を改装することになり、記念館のコンセプト、展示構成、内装などを、イチから組み立てていきます。
    一成がトップにいるとはいえ、新卒新入社員達で、会社にとってそれなりの規模であろう新規プロジェクトに、これだけガッツリと、しかも割と自由にやらせてもらえれば楽しいだろうなぁ。その分プレッシャーもあるとは思うけど。
    途中、物語ペーパーの題材となっていたお父さんの著書の復刊が決定したり、過去のシリーズ作品で登場した人たちや、旧記念館でプロデュースしてきたブランドが次々と登場(回想)してきたり、ちょっと総集編っぽく「まとめに入った」印象を受けました。
    ラストも、新記念館のオープン記念式典が始まるところで終わっているので、個人的には、物語としての「余韻」や、「未来への展望」を感じさせるというよりは、少し物足りなさを感じる幕切れに感じました。もう少し続きが読みたかったなぁ。
    ただ、シリーズ全体としては、とても好きな作品です。

  • いまを生きる私たちのために和紙を役立てる

    小説家ってすごい
    イマジナリーの中で経営なんかもできちゃう
    そして読んだ人を洗脳しちゃうんだよね
    まぁほしおさんの世界好きだから良いんだけど笑

    今までの物語がスクロールされて
    大団円に近づいている気がする

    とはいえ急いだ展開と聞いていたので
    後半が飛ばし気味になってくると
    とうとう来たかという感じ
    終わって行くのが惜しくなる

    和紙と人々のつながりの物語
    …のはずだったのでしょうけど
    思わず時代を感じさせる内容にもなりました
    感染症で疲弊していたあの頃の記録は
    後でどんな印象に変わるのでしょう…?

    ともあれシリーズ完結です
    おめでとうございます(^^)

  • 今までとは違い、一つの事を掘り下げるというよりは今まで行ってきた事の集大成?お浚い? そんな感じでした。
    駆け足感は否めないかな。。

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著者プロフィール

1964年東京都生まれ。作家・詩人。95年「影をめくるとき」が第38回群像新人文学賞優秀作受賞。2002年『ヘビイチゴ・サナトリウム』が、第12回鮎川哲也賞最終候補作となる。16年から刊行された「活版印刷三日月堂」シリーズが話題を呼び、第5回静岡書店大賞(映像化したい文庫部門)を受賞するなど人気となる。主な作品に「菓子屋横丁月光荘」シリーズ、『三ノ池植物園標本室(上・下)』など。

「2021年 『東京のぼる坂くだる坂』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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