- Amazon.co.jp ・本 (652ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041334010
感想・レビュー・書評
-
2021年6月2日読了。不時着した宇宙船に出くわしたクララと麟一郎。未来社会イースの文明・文化に触れた恋人たちの運命は…?「天下の奇書」と呼ばれ三島由紀夫激賞などの逸話を多く持つSFを気になって再読。今読んでもこの刺激的だがやりすぎ・バカバカしさ漂う舞台設定と淡々とした文体は大変おもしろい。発表当時はさぞ不快に感じる読者もいて議論を呼んだことだろう…。不気味なヤプーの黄色い肌に囲まれた生活が白人にとって快適なものなのか?疑問があるが、「ヤプー」を「電気」に置き換えると、なんでも電気にやらせようとする現代人たる我々だってイース人と似たようなもので意識が全くない分タチが悪い、とも言えるのではないか?マゾヒズムあふれる前半はある種のマゾ男性には「こんな物語を読みたかった!!」と直球ど真ん中なのだろうか。日本神話をパロディ化する後半は、日本人のアイデンティティを徹底的に突き崩す究極の形態がこれ、なのかもしれない、が、他人事のように「おもしれーなー」と冷めた目で読める私は本書の著者が真の読者として想定した存在ではないのだろうな。補記された「続・家畜人ヤプー」の章は初めて読んだが、「これぞ蛇足」の極みだった。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
問題作らしく序盤の気持ち悪さ、中盤までの自分もその「設定」に慣れてしまう衝撃など、そこまでのテンポは良い。ただし中盤以降はややダレてしまっているような感じを受ける。
完結しているように見えるものの、まだ続きがあるようで、そこまで読むかちょっと悩んでしまう。 -
特殊な社会、身分制度を除けば、良質なSF作品として楽しめる部分もあるが、ヤプーの家畜化等の詳細な設定はよくまぁここまで考えたものだと思う。70年近く前の作品なのが驚きだが、70年前だからこそ書けたとも言える。
-
20年以上も前に読んだけど、便器まで人間って…。正直其処しか憶えていないな。
-
第1章から28章まで。未完。「これでやっとその序章を終えたといえます」と作者の弁。
-
白人女性をヒエラルキーの最上階に頂く社会に飛び込んだ、日本人青年とドイツ人女性の顛末。女性に奉仕する畜人の詳細な飼育方法、価値観が描かれる一方で、部外者であった二人が徐々に調教されていく様も精緻に描かれる。展開は、やがて神話世界とのかかわりを明らかにしながらも、中途で終わる。
広く言って、これはSFに属する話であると感じる。現実に入り込む異端を描く幻想小説ではないし、サドマゾ小説でさえない。筆致は詳細であり、その世界の成立の根源を極めて科学的に描こうとしているという意味で、SFがもっとも近い。
といって、では同じく独自の神話世界を生み出したラヴクラフトのようなものかというと、これもまたまったく異なる。ラヴクラフトにおいてはあくまで神の世界は神の世界として存在していた。
だが、こちらのほうでは、神の世界は存在しない。むしろ神の世界は人間の世界だった、というネタばれ話であり、徹底的に分解され解説された神話読解本とも言える。
この小説がグロテスクであるとするなら、おそらくそれぞれの人間の心変わりと、潜在的な支配欲求を白日の下にさらし、書き尽くそうとしているところなんだろう。