ジャッカルの日 (角川文庫 赤 537-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (540ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042537014

作品紹介・あらすじ

暗号名ジャッカル――ブロンド、長身、ひきしまった体躯のイギリス人。プロの暗殺屋であること以外、本名も年齢も不明。警戒網を破りパリへ……標的はドゴール。計画実行日”ジャッカルの日”は刻々と迫る!

感想・レビュー・書評

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  • 名も分からぬ殺し屋がドゴール大統領を狙っている。唯一分かっているのは、彼が一流のプロであるということ。
    ジャッカル目線の展開もおもしろかったのだが、何よりルベルが着実にジャッカルを追い詰めていく過程がハラハラドキドキした。
    最後、ジャッカルだと思われていた人物が全くの別人だと分かるオチはよかったな。ジャッカルの正体は永遠の謎である。だからこそ本作は今もなお多くの人を魅了し続けるんだろうな。

  •  大統領暗殺をもくろむ敏腕スナイパーVS警察の息詰まる追走劇。展開はもちろんのこと、史実や当時の世相を交えてのリアリティある設定も見事でした。

     特に目を惹いたのが前半部のリアリティ。フランス国内の反体制派が大統領暗殺のため、プロの暗殺者・通称「ジャッカル」を雇い、そのジャッカルは虎視眈々と準備を進めていく。

     表向きにはほとんど動きのない前半部ではあるけれど、そこを徹底したリアリティで詳細に描くため迫力があります。パスポートの偽造や銃の準備など、ここでの徹底した準備があるからこそ、後半の追走劇に一進一退の攻防の感覚がより詳細に伝わってくるのです。

     警察の威信をかけた捜査と、徹底した準備で捜査の網の目をかいくぐる殺し屋ジャッカル。息詰まる戦いは、ハラハラさせながらクライマックスへ流れ込む。

     本国での出版は1971年と50年以上前の作品なので、自分の読んだ版は翻訳に若干古臭さは残っています。しかし話の展開は、全く古臭さを感じさせないどころか、現代で映像化しても、まったく違和感がないように思えます。

    時代を超える傑作というものは、こういう作品をいうのだろうな、としみじみ感じました。

  • 「プロは一時の熱狂では行動しない。だから、冷静でありうるし、基本的なエラーを犯す危険も、より少ないと言えるでしょう。また彼は主義主張に振り回されないので、最後の瞬間になって、これで他のだれかがけがをしやしないだろうかとか、もっとほかにやり方があったのではないかとか、逡巡することもない。仕事には偶発的な手違いがつきものですが、プロならそれをとことんまで計算しているから、成功の可能性は、他のだれの場合よりも高いのです。しかしプロは、任務を達成し、しかも無償で逃亡できるというプランが見つかるまでは絶対、行動には移りません」

    ――初読。本作がフォーサイスの小説デビュー作。自身のプロ論を語るジャッカルだが、警察の捜査の手をかいくぐり、ドゴールを射程に収めた最後の瞬間、「偶発的な手違い」に足を掬われることになる。

  • 1962年8月、アルジェリア独立を支持した当時のフランス大統領シャルル・ド・ゴールを排除すべく、OASによる暗殺未遂事件(プティ=クラマール事件)が起こった。
    OAS(Organisation de l’armée secrète)とは、アルジェリアはフランスの領土であるとして、その独立を阻止するため武装闘争を行っていた実在のフランス極右民族主義組織の名称である。
    プティ=クラマール事件の後、首謀者が逮捕され、銃殺されたことに伴いOASはほぼ壊滅状態に。
    そんな歴史的背景と実際の事件からはじまるサスペンス小説の傑作。

    相次ぐ失敗で窮地に追いこまれたOASは一計を案じ、フランスにいまだ一切情報のない外国人の殺し屋を雇い、ド・ゴール暗殺を目論む。
    暗号名はジャッカル。
    ジャッカルは速やかに、合理的にド・ゴール暗殺に向けて準備を進めてゆく。
    しかしその計画もやがてフランス官憲に漏洩。ルベル警視たちよる暗殺者捜索が始まる――。

    目的のために手段を選ばず、合理的かつ論理的に行動し、周到に準備を重ね、偵察を行い、巧妙な変装と工作でフランスに入国し、ド・ゴールに迫るジャッカル。
    政治に翻弄されながらも地道な捜査を粘り強く積み重ね、鋭い推理のもとジャッカルの包囲網をせばめてゆく老練のルベル警視。

    狩る者と狩られる者。フランス大統領を殺そうと決意している人間と、それを阻止しようと決意している人間の壮絶な相剋は必見。
    イギリス首相チャーチル暗殺を目論むドイツ軍部隊を描いた『鷲は舞い降りた』と同様に、暗殺されないという歴史的事実があるため、失敗することが最初から分かっている暗殺劇だが、「もしかして成功するのではないか」というスリリングな展開に、約540ページを最初から最後まで一気に読んでしまう。

    思えば、1960年代というのは、ド・ゴールやチャーチルなど、第二次世界大戦、その戦中戦後を牽引してきた巨頭と呼ばれた政治家たちが、年齢的、時代的にも退場の時を迎えていた時代だったのか。

  • スパイ小説の傑作。あのJ・ディーヴァーが絶賛するのもよくわかる。

    標的のドゴール大統領は実在の人物で、無論暗殺などされていない。よって、作中での結末はわかっているものの、圧倒的な緊迫感とスピードでぐいぐい引っ張られる。こんなぴりぴりした緊張感で一気に読んだのは何年ぶりだろう。しかも、この大作をわずか35日で書き上げたとは。まったくもってフォーサイスは変態。

    ストーリーは至極シンプル。追う側と追われる側の攻防戦、ただこれだけ。だが、この判りやすい鬼ごっこを取り巻くディテールの精巧さは芸術品。ノンフィクションかと見紛うほどの背景にがっちりと固められ、中断は不可能。首謀者、暗殺者、刑事──彼らの徹底した仕事ぶりは、一流を超える鬼レベル。このプロフェッショナルたちにシビれます、ルール違反です。

    陰謀、探偵、アクションと、みっつのテーマで展開するストーリーは圧巻。特に、暗殺までの下準備にほぼ半分以上が費やされてるのが印象的。終了間際のちょっとしたサプライズや余韻に浸れるラストシーンなど、隅々まで旨みが詰まっており、骨までしゃぶり尽くせます。「読まずに死ねない」「徹夜本」の王道をいく作品。フォーサイス、リピートするぞ!

  • 父の大好きなシリーズ
    映画もとても面白かった
    イギリス人暗殺者がイメージ通りのイケメン
    暗殺は失敗に終わったけど、運次第でどっちに転がってもおかしくないのでは。
    という展開がたまらない。

  • 1990/8/3
    フォーサイスはどれも面白いが、やはりこの作品が無かったらここまではまることはなかったのではないか。
    冷戦下であったからこその一連の作品ではあるが、その面白さは今でも変わらないと思う。

  • いやー面白かった。
    映画も面白いので、原作を読んでから見て欲しい。
    このジャッカル、めちゃかっこいい

  • まさに名作! 初読時はそれ程面白いとは思わなかったが、今回は終始興奮しながら読んだ。若い世代にも是非読んで欲しい。

  • フランスの秘密軍事組織OASは、6回にわたってドゴール暗殺を企てた。だが失敗に次ぐ失敗で窮地に追いこまれ、最後の切札、凄腕のイギリス人殺し屋を起用した。
    暗号名ジャッカル--ブロンド、長身。射撃の腕は超一流。
    だがOASの計画はフランス官憲に知られるところとなった。
    ジャッカルとは誰か?暗殺決行日は?ジャッカルのフランス潜入地点は?
    正体不明の暗殺者を追うルベル警視の捜査が始まる--


    正体不明で凄腕の暗殺者…そう聞いただけでワクワクします。
    しかも、OASの誰にも頼らず自分の才覚だけでドゴール暗殺の下見や準備を徹底的に行い、まるで自分の庭であるかのようにヨーロッパ各国を自由自在に飛び回り、しかも見た目は暗殺者とは程遠いエレガント風。
    対するルベル警視は地道な捜査を厭わず、見た目も行動も地味ではありますが、頭脳の明晰さと柔軟さ、圧倒的に不利な状況から、よく見つけ出せたと感動です。

    立場は違いますが、ジャッカルとルベル警視双方のプロフェッショナルさに脱帽です。

    この作品は映画化されており、「ジャッカルの日」(1973年:ユニヴァーサル映画製作)と「ジャッカル」(1997年:『ジャッカル』としてリメイク)の2つがありますが、私は俄然、原作に近い「ジャッカルの日」をおすすめします。

  • 古典。
    当時のフランスの政情・雰囲気がわからないので、最初は読むのも遅かったが、ジャッカルが登場し、暗殺までの準備を開始したあたりから、急激に面白くなる。
    現代だったら不可能な抜け口が色々あるが、それでも見事。
    この事件はは果たして、本当にあったことなんだろうか?
    迫真の物語。

  • むかし、一度読んだことがあるものの、再度読みたくなって購入。忘れていたストーリーもあり、ドキドキしながら読み進めた。

  • 約30年前に職場の先輩からもらった本。仏国ドゴール大統領を筆頭とした体制派と、大統領を暗殺しようとする反体制組織OASの暗闘を描くサスペンス。OASの幹部に雇われた凄腕の殺し屋・暗号名ジャッカルが、ただ一人で下準備から、暗殺適地の下見、暗殺を実行するための変装、移動などを読んでいると、この悪役に感情移入する自分がいた。体制派は、敏腕刑事・ルベル警視がお偉方の嫌味にも負けずに困難な職務を遂行していく。大統領は暗殺から守られることになるのだが、最後の引き金を引く直前の攻防が最高の見せ場だった。

  • そもそもド・ゴールというフランス元大統領自体を知らず…といった状態で読み始めたため、序盤はなかなか入り込めず。実際に起きた大統領暗殺未遂事件に着想を得た話ということだが、どこからどこまでが事実で、どこからがフィクションなのかがわからない位に緻密な描写。とにかく情報量が多くて読み進めるのに苦労したが、中盤以降のヒリヒリとした緊迫感は一気に読まされた。始めはジャッカル贔屓で読んでいたけど、途中からは完全にルベル警視の奮闘ぶりを応援。とはいえ、ジャッカルが追い詰められていくのは複雑な心境。面白かった。

  • 有名作であり、その評判に違わぬ傑作。緻密にミッションを進めるジャッカルの手際と、それを追いかけていく警察の有能さが、緊迫感のある筆致で描かれている。60年代の設定ゆえ、現在のテクノロジーがあればもっと簡単にできるのにと思う場面も少なくないが、登場人物らがアナログ的な手法でクリアしていく様もそれはそれで味わい深い。

  • 現代史を授業で学べず、リアルタイムでは子供の目でしか見ていなかった1960年代という怒涛の時間。
    第二次世界大戦の戦後処理は「一応」諸裁判で決着し、次なる勢力分布図の塗り替えに、各国虎視眈々としていた時間・・面白く、生臭く、実のところは真相が見えていない。

    「鷲は舞い降りた」のとてつもないスリリングな展開と比し、こちらの「突き詰める様な相克の時間」がひりつく。
    もっともフォーサイスの最高傑作とも言うべき筆致がそうさせているのだが。

    一見、ぱっとしないルベル警部がひたひたと追い詰めて行く流れに、フランスらしいセックスの場面たっぷりを伴って挿入されるジャッカルの動き。ジャッカルという「架空存在」を作り上げていくプロセスがリアルかつ作り物めいていない。ジャッカル⇒シャカル⇒チャールズ⇒カルスロップの捻りで「おお!!!」と思って、スルリ・・・でラストでもスルリには唸った。

    ジャッカルという名称を持つ生き物の灰色の目を暗殺計画のテーマカラーに仕立てた35日の傑作だ。
    最後・・でドゴールって穏やかに亡くなったよなぁ‥と変な疑問を感じたほどに。

  • 他のレビューにもありましたが、一気読みしました。1960年代のフランスあまり詳しくないので、簡単に調べつつ読みました。ジャッカルは一体誰だったのかを書かずに読まされていたことに気づきました。映画も見てみたいです。

  • たまたま、会社の同僚と話していて、「ジャッカルの日」がとても面白かったと言っていたので、購入した。 
    ハメットを続けて読んだり、ジェフリー・アーチャーを読んだりして、少し海外のエンタメ小説に馴染んで来たせいもあるだろう。
    いきなり、処刑のシーンから始まるが、僕もドゴール大統領の名前くらいは知っていたが、このようにカタカナの名前や用語の頻出で、最初は期待したほど面白くないのではないかと思ったが、ジャッカルが登場してから、俄然面白くなる。
    大藪春彦の小説を思い出した。
    作品中にも出て来るが、ドゴール暗殺は失敗すると先に結果は分かっているのに、ジャッカルの計算し尽くされた計画と実行。
    そして、それに相対するフランス警察の刑事の努力。
    クライマックスで、ほんの些細なことで、ジャッカルは初弾に失敗する。
    これが成功していれば、歴史が変わってしまうのだ。
    暗殺が失敗に終わった後、更にどんでん返しが用意されている。
    「ジャッカル」とは何者だったのか。
    作品を読んでも、永遠に分からない。

  • 面白いが古さは否めず

  • 30年ほど前に会社の同僚に借りて読みました。臨場感がすごく貪るように読みました。のちに、映画化されましたがこれもまた素晴らしかったです。

  • スパイ小説が映画より面白いとは思いませんでした。
    今まで手を出していなかったのが残念。
    しばらくマイブームです。

  • すごい。

  • 一気読み。自宅安静待機中だった20年前だけど。
    映画を観た後だったので、状況の映像が浮かび、影に隠れるとか車が走るシーンがバンバン浮かぶ。

  • 結末がわかっていてもページをめくる手が止まらない。いわゆるラストのどんでん返しというものは個人的には好まないけれど本作ではあっと言わされた。

  • 1

  • 今まであまり海外のスパイ小説を読まなかったが、綿密でスピード感のある展開に引き込まれ一気に読んでしまった。
    最初から結果がわかっていたが、ジャッカルがどのように計画していくのか、ルベルがどうやって追い詰めて行くのか、最後まで飽きさせない展開。どこまでが真実でどこからがフィクションだかがわからず、それが臨場感を引き立てていた。
    フォーサイスの他の本も読んでみたい。

  • 訳:篠原慎、原書名:THE DAY OF THE JACKAL(Forsyth,Frederick)

  • 昔、映画だけは観ていた。
    日経新聞のコラムで題名があり、気になって読んでしまった。

    素晴らしい作品!
    完璧な小説で一晩で読み終えてしまった。
    この本を読んで後悔する人はいないはず。

    もう一度映画を観てみようと思った。

  • だれもが絶賛する名作ということだから、楽しみにして読んだ。数年前に購入してずっと積ん読だったから、満を持してという感じだった。まず時代が古い。フランスとイギリスの警察の気質の違いがわかる。海の中に落ちた針を探すようなジャッカルを見つける作業は、警察の偶然やひらめきに支えられていく様子はおもしろい。

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著者プロフィール

1938年イギリス生まれ。空軍のパイロットなどを経て、ロイター通信、BBC放送の記者を勤めた後、作家に。71年ドゴール暗殺をテーマに書いた長編『ジャッカルの日』で小説家としてデビュー。綿密な取材とストーリーテリングの天賦の才で世界をわかせ続けている。著書に、『オデッサ・ファイル』『戦争の犬たち』『神の拳』『アフガンの男』『キル・リスト』、小説のような半生を描いた自伝『アウトサイダー』など多数。

「2022年 『ジャッカルの日 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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