私自身の見えない徴 (角川文庫 ヘ 14-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (351ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784042968023

作品紹介・あらすじ

10歳の誕生日から、「止めること」をはじめたモナ。大好きなピアノも何もかも。20歳を迎え、ある町の小学校で算数を教えはじめた時、閉じていた彼女の宇宙に変化が起こる――。

感想・レビュー・書評

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  • 「病気」になってしまったパパ。算数の先生になって出会ったあの子。いつかはみんな死んでしまうと受け入れることへの悲しみ。モナ先生の数字は何にでもなれる、悲しみを掬う言葉にもなれる。最後の物語を声にしたら、モナ先生のしるしに触れられるかもしれない。触れたい。

    ベンダー作品はほんとに管啓次郎氏の訳が良い この方の言葉にしてベンダーの作品は日本語にされるべきという強い共鳴がある 薄い膜を一枚隔てたような悲しみと寂しさの音が鳴って、みんな鈴のような声で話す 小説なのに長い詩を読んでるみたいだなとずっと思ってたら管氏は詩人であったですよね!!そうだろうと思っていた!!!

  • 感受性豊かな表現で途中読み進めるのがしんどかったけど、さいごの童話はとてもいい。

  • 『燃えるスカートの少女』は結構気に入ったのになぜかそれきり読んでなかったエイミー・ベンダーの長編。

    正直、自分の精神状態によっては、読むのがとてもしんどい本だったろうなあと思う。それほどでもないときに読んだので、さほど主人公の言動にキリキリしないですんだ。それでも途中までは、主人公ふくめ、その両親も、近所の人も、生徒たちも、全員ちょっと病んでて、それが伝染していくみたいで、きつかった・・・。

    基本的に主人公は、病気の父親の「死」がいつくるかと怯えており、それを知った頃からどんどん人格崩壊してるとしか思えないし、石鹸食べるのもどうかと思うし、自分の娘に冒頭のグロテスクな寓話をかたってきかせたそのお父さんも、そもそも医者なのに自分の病気に怯えすぎててちょっとどうかと思うし、つまりお父さんは自分の「病気に夢中」で娘のことも妻のことも見ておらず、娘のほうは「私に気づいて」という鬱屈をずっと持ち続けておかしな行動に走り、あげくヤンチャでしかも一部病んでる子供たちのいる教室にオノを持ち込むなどし、当然マザーグース的な怖いことが起こりそうでずっとそわそわするし、案の定起こるしで阿鼻叫喚。

    しかしラストで、主人公はかつて父親から聞かされたグロテスクな寓話を生徒の一人に語りなおす。この冒頭とラストの寓話の内容の変化が、すなわち主人公の変化であり成長で、実は前向きな終わり方だったことは救い。山田緑の挿画が好きだったので星ひとつ多めにつけたい。

  • 読めば読むほど寂しい気持ちになって困った。
    燃えるスカートの少女ではあんなに癇に障った翻訳、今回は全然気にならなかった。

    『ねえジュディ、そうしたかったら、と父はいった。きみひとりで旅行にいってもいいよ。カメラを持っていって、撮った写真を見せてくれよ。
    会話のあいだ母は別に何も感じていないようだったが、突然、声がぽきんと半分に折れるのが聞こえた。だってあなたと行きたいのよ、と母はいった。
    母のそんなに幼い声は聞いたことがなかった。』
    『あなたを愛しているだれかが、これは少なくとも部分的にはうそだとお互いにほんとうは心の底でわかっていることを何とか信じようと無理しているのを見るのは、やっぱりすごくひどい、すごくいやなことよ。』

  • エイミーベンダーは短編集を持っているので作風は知っていたけど、あまりにシュールでファンタジックで、途中でページをめくるのが辛いとさえ感じた。

    なのに不思議なことに、読後感は悪くない。
    登場人物たちの言動や世界観はほとんど理解できないけれど、感情の根っこの部分はわかるような気がした。
    恋のきらめきと気まずさとか、越えられない尊敬すべき存在だった父が病に打ち勝てず老いゆく姿をみて焦って心配したり、悔しいような気持ちになったりするところとか。
    奇妙な魅力をもった小説です。

    ちなみにジェシカアルバ主演の映画版は予告編をみる限り「新人数学教師の子どもたちとの交流と、同僚との恋」という設定だけ抜き出した可愛らしいストーリーの模様。
    どこかでみれる機会ないかなあ。

  • この評価は妥当ではないことを予めお伝えします。訳者後書きを読ませていただいても、なかなか難しいものでして、私がどう解釈すれば良いのかわからないということが正直な感想です。でも何かわかるような気がするが言葉で表せないのです。不甲斐ない。

  • 『燃えるスカートの少女』で打ちのめされたはずのに、どうしてこの本を手に取ったのか、いまとなっては思い出せない。

    細部に突っかかって仕方がないので
    詩を読むように、あまり細かい部分は気にせずに
    長い時間をかけて、雰囲気を味わうようにして読んだ。

    なんだか詩人になった気分だ。

    やはり受け入れない。相容れない。
    センチメンタルは凡人には厳しい。

  •  “先生の目ってちいちゃな青い0みたい”

     10歳の時に父親が原因不明の病になり、モナは「止めること」を始めた。唯一続けたのは木をノックすること、そして数学。父の病は癒されず、世界は色を失いながら彼女は大人になった。20歳を過ぎたある日、小学校で算数を教えることになったモナ。個性ばらばら、手に負えない子供たちと交わりながら、閉じていた彼女の世界が否応なく開かれてゆく―。


     「15が沈んでゆくのが見えた」

     あなたを愛している誰かが、これは少なくとも部分的にはうそだとお互いに本当は心の底で分かっていることを何とか信じようと無理しているのを見るのは、やっぱりすごくひどい、すごくいやな事。

     「42のときには、そんなことかまっちゃいないさ」

     プラスチック・カップと要求の多い親たちでいっぱいの明るい部屋に私はいた。彼は外にいて、空気は暗く透き通り、つかのまの薄い惑星を作り出そうとしている。

     「1かける世界はなんだ?」

     死というものは、私たちの身体のどこかに隠されているのかもしれないと考えていた。まとまりのない、薄い色の小粒。今では私は、私自身の見えない看板を背中にしょっているのだった。

     『燃えるスカートの少女』で知られるエイミー・ベンダーの初長編作。今はまだ見えなくても、やがて訪れる別れの影を感じたとき、少年少女は何を知るのか。守るものと守るべきもの。悲劇も、空想も、快楽も全部ふくめて。『ジェシカ・アルバの“しあわせの方程式”』という邦名で映画化もされています。


     そんなお話。

  • 数字。感情。

  • すべてが順調に進行していくなら、私たちはさびしさを抱えつつも生きてゆくーまず泣きそれから歩くのだからーだろうが、私たちを何よりもこてんぱんに打ちのめすのは、順番をはずれて何かが失われるとき。
    p269より

  • 小学校で算数を教えることになったモナが、自分のクラスで「数と物」というゲームを始める。毎日その日の気分を表す数字を首からかけるジョーンズさん。灰色の家族。母親が入院している生徒のリサ。

    作者の独特の世界観をそのまま長編小説にしたという感じ。そういう印象はあるけど、きちんとクライマックスがあって、寓話を使ってきれいにまとめているから、長編小説としてきれいにおさまっていると思う。

  • モナが理科教師とセックスする直前でバスルームに駆け込んで石鹸を食べるの、わかる気がした。

    燃えるスカートの少女と同じ翻訳者による長編。
    詩的でなおかつさみしいような、褪めたような文体は、エイミーベンダーにぴったりあっていると思う。翻訳者の管さんがいてこそ、この小説は素晴らしいものになっている。ありがとう

  • 「燃えるスカートの少女」を読んで好きになった作家の本だったので購入。
    短編同様に現実世界のどこかにあり得そうな、不思議な感覚に陥る話。
    ただあらすじから子どもたち各々と関わり合う中でモナが変わっていく感動モノかしらと予想していたら、重要な子どもはリサくらいだったなあという感じ。

  • 川の流れるような話
    シュールだけれど心地よい

  • エイミベンダーの小説は、訳書特有のカクカクさがすくなくて、よみやすい。
    本書は少々退屈だった。
    ものすごくうるさくてありえないほど近いの映画をみたときの感覚。
    読み込めばおもしろいんだろなーていう。

    短編のほうが好きだったな。

    童話から始まり童話に終わるところは
    よかった。

  • 著者の短編がどストライクだったので読んでみた。短編の面白さに水を加えて薄く伸ばした感じ。エイミー・ベンダーの特徴のある比喩や不思議な話は、きっと短いからこそ心地よいのであって、長いと少し疲れてしまった。期待していただけに残念。

  • 斧は持つな。危ないぞ。

  • 恵文社一乗寺店にて購入。

  • あたしは大きな検討違いをしていた。
    短編集『燃えるスカートの少女』を経てからのこの長編だったのだが
    予想をはるかに上回った作品だった。

    ふわふわと不思議な世界観が、ページをめくる度にいろんな時間軸で描かれていて、この掴み所のないまま話は続くのだろうかと思ったいたのだが
    仮にそこで投げ出した人がいたら、嘲笑ってやりたい。
    ページが終わりに近づくにつれ、主人公モナの感じるちょっとした動揺やら安堵やらが痛いほど感じられるのだ。苦しくて、息が詰まった。

    彼女の魅力は本当に未だ未知数で、もっと知りたい。もっと読みたい。

    この作家はあたしの中で今年一番といいたい。

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  • エイミー女史の物語はいつも、「わたしをみつけて」と言っている気がする。

  • 前作、「燃えるスカートの少女」が面白かったので。
    今度は長編らしいが、短編の時と同じように独特な世界観と言語感覚で書かれている。
    日本で言うとちょっと小川洋子っぽいのかな。
    細やかな描写や観察力に感服。

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著者プロフィール

1969年生まれ。カリフォルニア大学出身。小学校教諭をつとめた後、最初の短篇集『燃えるスカートの少女』(角川文庫)で鮮烈なデビューを果たす。2010年に刊行した長篇第二作目となる本作は全米ベストセラー入りを果たし、新たな代表作に。邦訳に長篇『私自身の見えない徴』、短篇集『わがままなやつら』がある。2013年には三作目の短篇集『The Color Master』を刊行。南カリフォルニア大学で教えながら精力的に執筆活動を続けている。ロス・アンジェルス在住 。

「2016年 『レモンケーキの独特なさびしさ 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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