冷静と情熱のあいだ Blu (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.55
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043599011

作品紹介・あらすじ

あのとき交わした、たわいもない約束。10年たった今、君はまだ覚えているだろうか。やりがいのある仕事と大切な人。今の僕はそれなりに幸せに生きているつもりだった。だけど、どうしても忘れられない人、あおいが、心の奥に眠っている。あの日、彼女は、僕の腕の中から永遠に失われてしまったはずなのに-。切ない愛の軌跡を男性の視点から描く、青の物語。

感想・レビュー・書評

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  • こちらは男目線の物語

    やはり同性であるからか、
    感情移入しやすい。

    男は名前をつけて保存
    女は上書き保存

    だから男は過去の恋愛を思い出しは浸り、引きずり、未練に溺れる。そういうもんなんですかね。

    そしてこちらはRosso(赤)より
    気持ちのいい、希望の見いだせる結末でした。


    男性と女性とで
    それぞれ青と赤、どっちが良かったかとか
    どっちがどうのこうのとワイン飲みながら議論したいと思いました。以上!

  • 順正もまた、あおいのことを忘れられずにいた。
    忘れられないほど愛した人。もう二度と会えない、でももしかしたら会えるかもしれない約束が、元恋人の存在を心の中で膨れ上がらせ、過去の二人よりも高尚な場所へとどんどん向かってしまう。
    どんなにお互いを求めていても、その存在を過去にすがり求める限り、未来で共に生きていくことはできない。共に未来を生きるためには、現在を一緒に積み上げるしかないんだ。
    「過去に囚われ過ぎず、未来に夢を見すぎない。現在は点ではなく、永遠に続いているものだ、と悟った。ぼくは、過去を蘇らせるのではなく、未来に期待するだけではなく、現在を響かせなければならないのだ。」という文に心打たれた。
    Rossoは違った印象を受けたけれど、Blueを読んだ後は、どうか、二人が、二人で幸せになれますように、と思ってしまった。

  • 江國さんの赤本があるからこの本も良いって感じかな。
    映画はチープ感がありましたが、本はおススメです。
    ミラノやフィレンツェは本で読むだけでなく実際に行ってもいいところです。

  • 『Rosso』の感想では、ド定番な展開のメロドラマと書いたけど。
    こっちは、さらに、イモくさいメロドラマって感じ(^^ゞ
    たぶん、主人公がつき合っている(三枚目役である)芽実が、子供っぽさのある純な性格で体つきがふくよかに対して、ヒロインのあおいは正直すぎて辛気臭さく体型は細身という、男のド定番願望の対極のキャラ設定に、ダッサーって思っちゃうんだと思うw
    ていうか。
    小説でもドラマでも、コメディでない恋愛物でヒロインが太めという話って、はたしてあるんだろうか?

    あと、二人が再会してから、あおいの性格や言葉づかいが急に幼くなっちゃうのも、まさにありがちな男の願望そのままで、ドッチラケだったかな?w
    ま、つき合っていたのが20歳の頃だから、どうしても話し方が戻っちゃうっていうのはあるのかもしれないけどさ。
    幸か不幸か自分にはそういう経験がないからw、その辺はよくわからないな(爆)

    まぁ、自分が男だからかな?
    つい、こっちに辛口の評価をしてしまうっていうのはあるのかもしれないけど、まだ「Rosso」の方が読めるかな?と思った。


    そういえば、かつて決めた日にちと場所にそこで男女が逢うといったら、映画の『ビフォア・サンライズ』シリーズだけど(もっとも、あっちは逢わなかったんだけどさ)。
    あれと比べちゃうと、こっちは二人がパッツンパッツンすぎちゃうんだよね。
    恋って、もちろん頭の中がパッツンパッツンだから恋なんだけどさ。
    でも、これって、冷静と情熱の「あいだ」なわけじゃん(^^ゞ
    二人とも、ひたすらパッツンパッツンで、冷静なんて欠片もないじゃん(爆)

    無為な日常を淡々と描いて、そこから少しずつ少しずつ過去を記憶を入れていくことで盛り上げていって、クライマックスでバーン!とやるのはお決まりなんだろうけどさ。
    ていうか、読む(見る)方もそれを期待して読む(見る)んだろうけどね。
    自分は、『ビフォア・サンライズ』のあのシリーズにある、パッツンパッツンじゃない、一種の「引き(=茶化すユーモア)」がないと「アホくさ…」って思っちゃう方かな?
    だってさ。
    他人の恋愛なんて、どーでもいいことじゃんw

    いや、これ(恋のパッツンパッツンさw)を求めている人にとっては、二人がパッツンパッツンすぎるからこそ感涙に咽ぶことが出来るんだろうけどさ(^^ゞ
    それは求めずに、でもラブストーリー(パッツンパッツンの恋を過ぎた恋愛)を味わいたい人からすると、こういうのって、どうしてもイモくさい話になっちゃうんだよw
    それは、ミステリー小説もそうだし、特にSFなんかがそうだけど、コアのファンが「名作」と評価するものほど、コアのファンじゃない人にとってそれは「またこれ?」と感じるものだし。
    そのコアなファン向けの喜ばせ臭に、「クサ…」、「ダサ…」と思っちゃうものなのだw
    もっとも。
    それは、自分というユーザーが、たんに商品選択を間違えたってことなんだろうけどね。

  • Rosso Blu の順番で読んで良かった。逆だと全く違う読後感になるところでした。
    同性だから、ってのもあるんでしょうが、Blu の方がだいぶ読みやすく、感情移入もし易かったかな。
    Rossoのラストは、辻仁成の為に、敢えて江國香織さんが前振りに徹してあげたんだろうか、、と思うくらい、Bluのラストには、やられた〜感とともにホッと出来ました。
    映画は見てないけど、本を超えることは無いだろうと思える素晴らしい筆致でした。

    アルバイトのあおいがICに乗り、お坊っちゃんの順正がEurostarに乗る、というのは、中々生々しい描写か? ここぞというときにはお金より時間が大事。。

  • 江國香織さんのRoseを読んだのが確か11月。
    あの時の情熱が冷めないうちに辻仁成さんのBlueを手に取った。


    Roseのラストであおいは「ひきとめてくれない順正の正しさと誠実さを、考えてみれば私は愛したのだ」と考えていたようですがそれは勘違いだとわかりました。

    順正は再会してからお互いの事を話していく上で、あおいの変わらない冷静さと芯の強を再確認し、彼女が今回の再会を期に全てを清算しようと思っていると勘違いしていた。
    だから引き止めれなかった・・・

    本当に些細なすれ違いで人の人生は大きく変わってしまう。

    Roseではその一瞬だけ交わる情熱が美しく思える反面、愛する人と結ばれないことがやはり悲く感じたのを覚えています。

    てっきり2人はそのまま別れたのかと思っていました・・・

    でもBlueのラストには諦められない順正の走る姿がありました!

    そうこなくっちゃ!!(o^^o)

    その後どうなったかはわかりません。
    でもこのBlueを読んだ上で私は静かに祈る。
    順正の8年越しの想いが届きますようにと。

  • あまり内容に言及してなくていけないんですが、順正のやっている絵の修復というのは、とても重要な意味を持っているのだと改めて思いました。特に美術館とかに行くとそう感じます。

  • 8年もの間、満たされない思いと孤独を抱えていた順正。彼の心には常に、あおいがいた。

    人に何を言われても、現在のパートナーに求められても、「自分の本当の居場所は彼女のとなりなんだ」と感じながら、冷静に孤独を選んでいた。

    しかし、いざあおいと出会うと、8年もの年月の中でおこった彼女の変化を突きつけられたような気がした。彼女だけは今を生きていて、自分だけが8年前のまま切り取られた子どものような。
    そんなみすぼらしさや、劣等感から冷静に彼女と別れることを選ぶ。芽実に対するそれとは気持ちはまるで違うのに、同じように、冷静に。

    彼が修復士という仕事を選んだのは、過去の美しさは過去であっても尊いものだという意識があるからだと思う。今や未来を向くことだけでなく、過去に思いを馳せること、自分の軌跡と向き合うこと、忘られられない時間だけを大切に持って生きること、そんな人生でいいじゃないか。

    既に亡くなった画家の名作のように、過去として切り取られたあおいを神格化した彼だからこそ、そう感じたんだと思う。

    ただ、8年越しに出会ってしまった。
    あおいが現在になってしまった。過去の点が今に飛び越えて、繋がった。

    動き出した今は点ではない。
    今から、1秒先の今につながる線になる。
    ただここで別れてしまえば、また今日という日もあおいの思い出もまた点になる。氷漬けてはいけない、そんな思いで彼は動く。

    切なさの中に情熱と希望を感じるエンディングだった。

    3.8
    ----
    私はタモリの言葉を思い出した。

    「明日のことを語れるヤツはゴマンといるが、昨日までのことをキチっとやれるヤツはほとんどいないんだよ。」

    自分のコンプレックスや情けなさから逃避するかのように、未来にだけ目を向ける人はある意味で魅力的に見える。

    ただ自分を形作るこれまでの経験に目を向けて、自分と向き合うこと、ダラダラしていたとしてもそれを受け入れて自分として消化できる人。そんな弱さを自分の一部にしている人っていいなって思う。


  • 青と赤でひとつの作品だなと思った。両方読むと二人の心情がよくわかり、深い恋愛小説だった。赤は江國さんの小説よく読んでたのでかなり昔に読んでた。その後映画見て青も読むことに。ヨーロッパのアートが好きなので、個人的には青の方が好みだった。フィレンツェには随分昔に行ったので、小説読みながら情景が浮かんだ。本当、エンヤの音楽が赤と青に合っている。

  • 4.4

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著者プロフィール

東京生まれ。1989年「ピアニシモ」で第13回すばる文学賞を受賞。以後、作家、ミュージシャン、映画監督など幅広いジャンルで活躍している。97年「海峡の光」で第116回芥川賞、99年『白仏』の仏語版「Le Bouddha blanc」でフランスの代表的な文学賞であるフェミナ賞の外国小説賞を日本人として初めて受賞。『十年後の恋』『真夜中の子供』『なぜ、生きているのかと考えてみるのが今かもしれない』『父 Mon Pere』他、著書多数。近刊に『父ちゃんの料理教室』『ちょっと方向を変えてみる 七転び八起きのぼくから154のエール』『パリの"食べる"スープ 一皿で幸せになれる!』がある。パリ在住。


「2022年 『パリの空の下で、息子とぼくの3000日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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