- Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043687107
作品紹介・あらすじ
血戦の吉良屋敷から高輪泉岳寺に引き揚げる途次、足軽・寺坂吉右衛門は内蔵助に重大な役目を与えられる。生き延びて戦の生き証人となれ。死出の旅に向かう四十六人を後に、一人きりの逃避行が始まった。
感想・レビュー・書評
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最後の可女の嫁入りの行列のシーン
暗い闇夜から星が、一つ一つでてきて暗い夜空に天の川が出現する映像がでてきました。
また、一筋の涙が…
二人の足軽が貫く忠義。
一人の足軽が大事を終えて、主人のもとへと旅立つ。
武士の一分。重い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
連作小説集『四十七人目の浪士』(新潮社)の角川文庫版版改題。「仕舞始」「飛蛾の火」「命なりけり」「最後の忠臣蔵」の4編からなる。
「島津!奔る」でへぇと感心し、「遁げろ家康」で池宮彰一郎の虜となってしまい、次に読むべきは何かと探していたら、
<blockquote>道に迷った。
江戸の直(す)ぐな道はない、という。
</blockquote>
という出だしに引き込まれてしまった。
吉良家討ち入りみごと成就後、大石内蔵助が討ち入りメンバーである寺坂吉右衛門に密命を下した。
お前は我らから離れ、この一大事が誤って世間に喧伝されぬよう、また残された赤穂の武士たちが路頭に迷わぬよう面倒を見よと。
自らの命を惜しむより、足軽とは言え武士である寺坂吉右衛門。武士本来の面目である切腹の列から切り離された心象はいかがばかりであったか。切腹を恐れて「逃げた」という世間の耳目は、侍の矜恃を持つ者にとって死ぬより辛いものであった。
その汚名を引っ被りながら元国家老の大石内蔵助の命令を忠実に果たそうとする寺坂吉右衛門を軸に話は展開する。そして、最後まで読み進んでいけば、大石内蔵助とはいかに偉大な人物であったのかが彷彿される仕掛けになっている。
ラストの、大石内蔵助の想い者であった可留の生んだ娘、可音の嫁入りシーンは圧巻である。そしてその可音を慈しみ育てた孫左衛門の最後に、危うく涙を落としそうになった。
文体流麗、博覧強記。
「文章を読むのがすき」なら、池宮彰一郎は絶対外せない作家の一人であろう。 -
映画は観てないけど小説をと思い。
よくある忠臣蔵とはまた違う良さだったし、たぶん映画より小説の方がいいのでは?と思う内容。
ちゃんと描ききれたのかしら…?って。思う。
討入りに参加したけど参加してない人
もしくは途中で逃げた人、お家大事でじっと堪えた人
愛する人を待っていた人などなど
色んな人が出てくるけどそんな寺坂吉右衛門。
最初も途中も最後も泣けるやん…
まぁマニアな人が横から、いや史実云々言うかもしれんが
そんなのは百も承知。うるせぇよ!!と。
討入りした志士ももちろん壮絶だけど
残された家族や、参加していない300人の藩士達のこととかも含め
今後の活計まですべてお見通しな大石内蔵助。
とにかく物語の見せ場が上手いというか、ジーーーーンときた。 -
佐藤浩市と役所広司の映画は見たことある。今度(16年4月)から04年に作られた上川隆也と香川照之のドラマがBSプレミアムで再放送されると云うので原作も読んでみた。なるほどなあ・・・ 寺坂吉右衛門、「ちかえもん」でもやたら名前が出てましたなあ~
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予定のない寂しいクリスマスイブに一気読みしました。良かったです。最後の見せ場がうまい。
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吉良家討ち入り四十七士のうちの1人で足軽身分だった寺坂吉右衛門さんが、大石内蔵助さんの指示で捨てたはずの命を死ぬより過酷な生き証人として生きていくお話。
みんなから誤解されて、本当につらかったと思う。
同じように討ち入り前に内蔵助さんの指示で「抜けた」形になっているおじさんのお話も良かったよ。
らじが好きな浅田次郎さんと同じで、本当に悪い人はいないってスタンスのお話が良かったです。
現実には本当に悪い屑みたいな人間もいるからさ。
せめて物語のなかでは、環境とかタイミングが悪かっただけで、本当の悪人がいない世界を楽しみたいじゃない?
良いお話でした♪ -
吉良邸討ち入りの後、一人生き延びて後世に真実を伝えるよう命じられた、寺坂吉右衛門を主人公とした連作。「命なりけり」では、吉右衛門を幕府に自首させた上、綱吉にうまく働きかけて、浪士遺児の赦免を勝ち取った進藤長保の手際は見事。
全編を通じて、失業した赤穂浅野家の全家臣やその家族の活計が立つようさまざまな手を打った大石内蔵助の深謀遠慮が光る。