テロリストのパラソル (角川文庫 ふ 20-1)

著者 :
  • 角川書店
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本棚登録 : 1709
感想 : 210
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043847013

作品紹介・あらすじ

新宿に店を構えるバーテンの島村。ある日、島村の目の前で犠牲者19人の爆弾テロが起こる。現場から逃げ出した島村だったが、その時置き忘れてきたウイスキー瓶には、彼の指紋がくっきりと残されていた……。

感想・レビュー・書評

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  • 淡々と話が進んでく中に皮肉と格好良さもあって海外小説のような雰囲気でした。他の作品も読んでみます。

  • 面白いんやけど、読むの時間かかる…たまにあるな。こんな感じ。
    ミステリー要素もあるけど、ハードボイルドって感じやな。

     主人公:アル中のバーテンダー
    紅一点:ツンデレ(元同士の娘)
    もと警察官のヤクザ
    学生運動からの同士の爆弾魔
      その他色々…

    それぞれ個性的な登場人物。
    解説ではキャラ立ちしてるって。

    学生運動って言っても、今の人は分からんな。という私もあんまり分かってないけど。

    その頃にやってもうた事で、姿を隠して20年、酒飲んで、のんびり公園で寝てたら、爆弾がボ〜ン!
    爆弾テロやん!犠牲者には、昔の馴染みが何人も!
    おかしい!犯人探すで!物語スタート!
    ヤクザとは思えん浅井。主人公島村との会話は知的な感じで良い。この2人のタッグはなかなかでした。
    でも、直木賞と江戸川乱歩賞の同時受賞の作品なんで、少し期待値高過ぎたかもしれん…

  •  '95,'96の乱歩賞&直木賞W受賞作! 
    評価に違わぬ、素晴らしい小説でした。

     本書は、世間一般でいうところのハードボイルドの位置付けのようですが、特定感情に流されず、精神的・肉体的にも強靭で、時に冷酷非情とも言えるような、所謂〝カッコいい〟主人公とは趣きが違います。
     中年でくたびれたアル中のバーテンの主人公を始め、他の登場人物も個性が際立っていて、その設定にも感心します。
     ストーリーも、客観的で簡潔な描写が淡々と展開され、どんどん引き込まれます。ミステリーを超越し、他のハードボイルドからも一線を画している気がします。
     最後は怒涛の驚愕の連続でしたが、破滅の道へ進んだ友人と主人公の想いを中心に、多くの登場人物へ感情移入しながら、哀愁漂う主人公のカッコよさに酔いしれました。
     素晴らしい読後感で、しばらく余韻を引きずりそうです。

  • 雫井脩介著「犯人に告ぐ」を読んだ後、ちょっとハードボイルドな物語に魅力を感じて手に取った本作。
    主人公がアル中のバーテンという「え?大丈夫?」と思ってしまうような設定にも関わらず、どんどん惹かれていき……
    最後には「アル中でも構わない!かっこいい!」なんて感じてしまいました(笑)

  • この『テロリストのパラソル』の冒頭数ページを読んだだけで「ああ、これは好きな小説だ」となりました。

    アル中の中年バーテンダーの島村は朝起きると、いつも通り公園に行きウイスキーをいれたカップを傾ける。そんな島村を見つめる一人の女の子。会話の流れから、女の子がバイオリニストを目指していることが分かり「わたし、バイオリニストになれると思う?」とその子は問う。「なれるかもしれない。ツキに恵まれたなら」と島村は返し、そして女の子は……

    昼間からアルコールの臭いを漂わせているため、世間の人からは白い目で見られることの多い島村。そんな島村が無垢な女の子との会話から思った世界のこと。そして淡々と無骨ながら、どこか色気やリズム感のある島村の語り口と、彼の視点から描かれる日常世界。そして最初の少女とのやり取りで浮かんでくる、彼の人間性や人生観。

    派手ではないけれど、文章や場面、人のやり取りや会話、思考、すべてがいいふうに自分の中で受け入れられた最初の場面。後は流れに任せて、一気に読むだけだった気がします。

    女の子との会話は静かなシーンでしたが、そこから一転、物語は一気にギアがかかります。その直後、公園で起こった死者19名の爆破事件。そして島村の元に現われるヤクザに、元交際相手の娘。そして死者の中にいたのは、大学時代の島村の友人。そして警察は島村の過去から、爆破事件と島村の関係を疑い……

    爆弾事件の犯人捜しの物語の本筋はもちろん、そこにヤクザや警察からの逃走劇というサスペンスも加わります。そして事件の展開も読ませる。事件は徐々に闇社会の奥深くに入っていく一方で、島村個人の過去とも密接に関わってきます。

    島村以外の登場人物たちも魅力的です。なぜか島村を気に入り、事件に入れ込むヤクザの浅井。事情があり、カタギからヤクザへ鞍替えした彼の矜持。一方で島村との関係性は、立場や損得関係を越えたバディものの雰囲気があって、しかし一方でこの浅井もまた事件と密接に関わってきて、この関係性はもちろん、先が読めない展開も面白かった。

    作中に登場し、島村に協力するホームレスたちもよかったなあ。それぞれ詳しく書かれるわけではないけど、会話などのやり取り、そして事件や物語の展開で、彼らにもそれぞれの人生、プライド、矜持といったものを抱えて、泥臭く生きていること、そして人生の哀愁も感じさせます。

    島村と友人の桑野の回想の場面も良かったです。時代背景もあって、彼らの青春はかなり特殊なのですが、お互いがお互いに一目を置き、そして構築された唯一無二の友人関係が魅力的。完全に理解しきれるか、といえば微妙なのですが、その描写のみずみずしさは、なにか懐かしい気持ちにさせる力があるような気がします。

    そして真犯人もなんだか憎み切れない。カリスマ性というか、彼の抱えた闇と空白、社会の不合理や矛盾、そして嫉妬。改めて設定を考えると、なかなかのとんでも設定ですが、それを無理と感じさせない、スケールの大きなキャラでした。それがなんだか惹かれる理由なのかもしれません。

    粋な会話や文章、なかば世間から隔絶しているような男主人公、ヤクザや闇社会、男の友情、そしてなぜか主人公はモテる(笑)と話や設定、キャラは今から見ると古さを感じます。ただその古さは、アンティークのようなもので、古さを感じるからといって、まったく出来に影響するものではないと思います。

    そして良い意味で男くさい、男のロマンが詰まったハードボイルドだった気もします。本格ミステリや最近のキャラミステリも面白いけど、こういう良い古さと、男くさいロマンが詰まった話も面白いのだなあ、と改めて感じました。

    第114回直木賞
    第41回江戸川乱歩賞
    1996年版このミステリーがすごい! 6位

  • 図書館で借りて読んだのはかなり昔のこと。
    こんなにおもしろそうで、直木賞と江戸川乱歩賞の両方を獲っていて、でも、印象に残っていない?
    なぜだ……自分に問いたい。
     
    最近読んだ本の中では「犯罪者」に似てるかな。

  • 全共闘世代、団塊の世代の学生運動を背景に持つハードボイルド小説。

    東大卒かつアマボクサーで、とある特定の電子機器に強く、しかもアル中でいて素敵な女性達、男性達にモテるというてんこ盛りキャラクターだけど、現状は独りで都内の狭いカウンターバーを切り盛りする一介のバーテンダーに過ぎず、店では酒とホットドッグしか出さないという主人公。
    脇を固める登場人物たちもかっこいい。

    乱歩賞新刊、数ヶ月後に受賞する直木賞は発表前という段階で読んで以来ずっと、本棚のお気に入りスペースに鎮座ましましている名作です。

    昭和と平成初期のハードボイルドを感じてみたい方は是非。

  • 【2023年22冊目】
    読んでる途中から「いや、これもうよっぽどのことがない限り★5です、満点です」って思ってたんですけど、めっちゃ面白かった〜!

    江戸川乱歩賞と直木賞ダブル受賞ね、ふーんて思いながら読み始めましたが、ダブル受賞伊達じゃなかった。

    のどかな公園からスタートする物語が、どんどんと複雑化していき、途中で相関図書いて整理しつつ、結末がどうなるか全然わからなかったので、最後までドキドキしながら読み切りました。

    「私」の受け答えがいちいちかっこよすぎる、あと頭が切れるのと同じくらいダメっぷりが光る人間味が良すぎました。

    あと、あの、浅井ー!浅井かっこよすぎるでしょー!途中から浅井が出てくるたびに「浅井!!」って思いながら拍手してました。

    学生闘争の頃とかについて、少し前知識入れておくとより楽しめると思いますが、やー本当面白かったです。

  • 面白かった。アル中でバーテンダーの主人公島村と奇妙なヤクザ浅井のキャラクターと関係性が魅力的。読み応えのあるハードボイルドミステリー。

  • 一気読み
    久しぶりの活字だったけど先が気になってするする読めた!
    ちょっと難しい
    完全には理解して無さそう
    おもしろい
    登場人物がみんな魅力的!
    頭が良いから会話がおもしろい

  • 詩 が印象に残った作品だった。

  • Kindleにて読了。
    まさに今月のテロとまで言われた事件をきっかけにずっと積んでたこちらを手にとった。
    最初から最後まで夢中になった。
    終始島村こと菊池目線で語られる。
    島村、桑野は東大生と思われるような頭がいいと感じる考え方と話し方。さすが東大、と何度も感じました…
    ただ、浅井もそうだけど、登場人物はみんな賢いというかこれはもう作者の賢さが出てます。
    ただただ望月には失望しましたな。
    テロリストのパラソルは短歌に出てきたワードだった。

  • 2016.0214
    最後まで楽しめたが、中盤位までが特に面白かった!
    たくさんの登場人物で若干混乱したが、人物を書くのが上手いのでよい。

    主人公とヤクザの浅井のキャラが秀逸!

    しかし、乱歩賞と直樹賞のW受賞はサービス良すぎる気がした。

  • ミステリという観点からみると確かにご都合主義と思うのだけど、登場人物が魅力的でハードボイルド!菊池も桑野も浅野も好きになってしまう。
    ただ私に学がないせいで、学生運動とファルテックの株式の件は難しくて斜め読みした。

    発売当時はとんでもない話題作だったんだろうな。

  • ひさびさに再読して、レイモンド・チャンドラーの「ロング・グッドバイ」を日本を舞台にやりたかったのかな、と思った。ハードボイルドの読み口、嫌いじゃない、むしろ好きだった。

  • 無駄は1文字たりともない。

    人生の半分の逃亡生活は無駄ではなかったし、ここに書かれていること以上に読者が知らなければならないこともないのだと思う。なのに、「私も年をとったのだ」だけが2回繰り返されたのは、決して菊池の生活が無駄だったからではなく、それでも繰り返さざるを得ないほどに長すぎたのだと訴えているからだと思う。

    それほどに長い「習慣」は知りたくはない。だが、読者は知るべきだった。だからこそ繰り返された言葉なのだろうと思う。

    そして、「私はあやまりを口にした」のあやまりとは、と考える。謝りであり、誤りでもあると書かれているように思った。繰り返しとは逆に、一度で2つを伝えたのだと思う。

    2度と繰り返されるかわからない貴重な出会いで知り合えた人間に言いたくはない言葉だ。だがそう思える人間と出会ってみたい。

  • 冷静で勘が冴えているが機械やテクノロジーに疎いバーテンの島村、頼りになる奇妙なやくざの浅井、若くして知性と行動力(それから魅力)を兼ね備えた塔子、ほかにも個性的で生き生きとしたキャラクターが、ハイテンポで展開していく物語を鮮やかに味付けしている。

    展開もハイテンポで目まぐるしく進み、線と線がつながって新たな線が浮かんでくる。島村と共に新宿を駆け回って謎を解いていくような感覚で読めた。

    クライマックスで島村と桑井が出会う場面。それまで物語のキーパーソンとして舞台装置的な印象であった優子が、桑井との会話によって一気に人間味を帯びてくる。島村との関係、桑井の絶望、優子の涙のわけ、NYでのふたり、ひとつひとつ語られていく真相が優子の輪郭を深めていく。切なく、諦念を帯びた人間像が悲しい。それを無二の親友だった桑井から聞かされる島村の心中たるや。

    桑井の動機も、横恋慕の行き着く先と言ってしまえば簡単だが、優子に拘っていたというより島村への複雑な感情と全共闘の異様な雰囲気が綯い交ぜになって醸成されてしまったものではないかと思える。

    自分は全共闘世代が持っているらしいそうした雰囲気、熱気がどんなものだったのかわからない。作中で塔子が言及しているように、オジサンたちの懐古的な口調ばかりが耳につくという印象だ。しかし読後それについて想像するに、瞬間的な熱にうかされた若者たちが、闘争を終えて皆すぐ社会に適合していくとは考えづらい。中には抑えきれない感情を抱えたまま社会とのズレにさらされる者もいたのでは。そうしたある種の屈折が桑井の源流にもあるのだろうか。

  • 4.8

  • 20世紀末の新宿中央公園、オープニング早々から爆発事件が起こり多数の死傷者がでる。アル中の島村の目線で話が展開していくが、島村とヤクザの浅井のキャラクターがいい。
    二人とも見た目によらず頭がキレて、殴りあいも強い。
    うまそうなホットドッグと電気箱の描写が印象的。

  • 江戸川乱歩賞と直木賞のダブル受賞作ということで期待して読んだ一冊。

    ある土曜日の朝、アルコール中毒のバーテンダー・島村は、新宿の公園で爆弾テロ事件に遭遇。
    現場から逃げ出した島村は、公園に自分の指紋がついたウイスキーの瓶を残してしまう。

    テロ事件の犠牲者に、22年前共に学生運動を行った、音信不通の友人の名前を見付け、偶然ではないと感じた島村は、過去、自らが起こした事件故、テロ事件の容疑者として疑われながらも事件の真相に迫っていく―。

    テロ事件が起きた現代と、学生運動があった時代が交互に描かれる形で物語は展開していきます。
    過去に島村と友人が起こした事件、島村が愛した女性、そして明らかになる事件の真相。

    学生運動があった時代を知らないからか、些か理解できない心理や感情はあるものの、興味深く、また早く先を知りたい、という気持ちで読み進めることができました。

    島村と関わるヤクザの浅井が非常に魅力的で、その魅力の理由も後半明かされてみると納得。

    藤原氏の作品は初めて読みましたが、他にも読んでみたくなりました。

    ☆が3つの理由は犯行の理由が、軽すぎたというか、幼稚すぎたため。
    ここまでしっかり書き上げられるなら、もうちょっと何かが欲しかったです。

    それとも人間って、詰まるところは幼稚で短絡的な生き物だということを著者は描きたかったのでしょうか。

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著者プロフィール

1948年大阪府生まれ。東京大学仏文科卒。85年「ダックスフントのワープ」ですばる文学賞を受賞。95年「テロリストのパラソル」で江戸川乱歩賞、同作品で翌年直木賞を受賞。洗練されたハードボイルドの書き手として多くの読者を惹きつけた。2007年5月17日逝去。

「2023年 『ダナエ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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