方丈記 (角川文庫 黄 31-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044031015

感想・レビュー・書評

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  • 『序文』がマジで最高。

    “ざっと三五年、私は長明とつき合ってきた。私にとって、こんなに長い人間関係は、長明をおいてはないのである。そして、私も長明が出家をした年齢をこえて、方丈記を書いた時に近づいている。こんど、角川書店から方丈記を文庫に入れたいという依頼があった時、では、私流のやり方で、自由に書かせていただきましょうということでお引き受けしたのが、この本である。今まで私は、長明の伝記の考証、作品の蒐集と文献学的研究などを主としてやって来たので、多くの研究者の数々の業績も、大方は理解しているつもりである。そして、それらから計り知れないほどの恩恵を受けつつも、私自身の長明との長いつき合いから得たところをもとに据えて書いてみたのである。そこで、長明が遠いあの世から、なんと言うかに問題がある。よもや、ほめてくれることはあるまいが、まあねとか、ごくろうさんだったなとか、皮肉まじりなまなざしで、親愛感を示してくれるかも知れないと思っている。いたって未熟なものであるがというふうに書くのが、自序のエチケットであることは知っているけれども、私にはそんなしらじらしいことばをはく気にはなれない。これが、この本を書き終わった今の気持ちである。型破りの序文を許していただきたい。”

    マジで最高。

  • 「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」でお馴染みの方丈記。

    冒頭部分は福岡伸一氏の動的平衡の説明でも度々登場するので、続きが気になって読んでみた。しかし、この調子で事物の存在、生命について掘り下げていくのかと思いきや、どちらかといえば社会的なテーマから仏教的無常観を綴ったものであった(そもそも、そのように学校で習っていたはずではあるが)。

    鴨長明の生きた時代、火事や飢饉、疫病、地震や台風などの災害に対して、人間は今とは比べ物にならないほど無力だった…。以前なら、そんな感想で終わっていたかもしれない。しかし、近年の大規模な震災や豪雨、新型コロナを経験した後では、現代も本質的には何も変わっていないと言わざるをえない。

    また、社会的な地位や富を求め、それを良しとする人間の価値観というのも、当時とあまり変わるところはなさそうである。いつの時代も、無常を感じるための「材料」は事欠かないようだ。方丈記が古典として残ってきた所以だろう。

    この方丈記、冒頭だけ読めば、長明が悟りの境地で書いてるようにも思える完成された文章である。しかし、続きを読めばそんなこともない。最後は悩みをみせて終わっており、親近感が湧いた。

  • 実際には青空文庫の旧字旧仮名版を読んでいますが、内容を手っ取り早くつかめる(だろう)訳付版にリンク。角川版は未読ですが、古語辞典で定評があるのだから大丈夫だろうと・・。
    年に何回かは読み返す定番の文章。「行く川のながれは絶えずして・・」の出だしは有名だけれど、フルバージョン完読している人はあまりいないかもしれないので、2011年の1冊目として選抜。内容は「鴨長明の哲学と事件簿」といいったところで、火事があった、遷都してみたけれど失敗した、干ばつで飢饉が起こって大量の死者が出た、大地震があって以下同・・というようなことがつらつらと書かれています。日本って800年前とあまり変わっていないのかも。でも大飢饉がなくなったのは良かったな。「無常観」の文学ということになっていますが、この「無常」という感覚は学生より社会人の方がしみじみするかもしれません。同様の無常観を持った「小屋文学」の米国版は、ウォールデン(別掲)にてどうぞ。

    青空文庫の方丈記へのリンク
    http://www.aozora.gr.jp/cards/000196/card975.html
    ipod touchでは豊平文庫使用、Kindle DXでは青空キンドルさんのサイトで変換したPDFで読んでいます。DXだと本文はたったの8Pにおさまります。

  • 冒頭の「・・・よどみにうかぶ、うたかたは、かつ消えかつ結びて、ひさしくとどまりたるためしなし。・・・」などの韻律が心地よい。「知らず、生まれ死ぬるひと。いずこより来たりて、いずかたへか去る」も良い。名文も多く、歌うように読める。文章のリズムを学ぶ本。

  • この頃と現在とでは世の中は大きく変化したように思われるのに、人間というのはあんまり変わらないものなんですね。私が今苦しんでいるこの悩みも、きっとずーっと昔から沢山の人たちが何度もぶち当たってきたものなんだろうなあ。

  • 鴨長明(によって書かれた中世文学の代表的な随筆。

  • 昔古文の教科書として購入。
    今もたまに読みます。

  • 何のことはない。人間はいつの時代も変わらないのである。中世文学独特の文体から浮かびあがる平安の世。そして自然の美しさ。鴨長明のような「社会」を見る力こそ、現代の人々が持つべきものではないだろうか。

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著者プロフィール

平安時代末期から鎌倉時代にかけての日本の歌人・随筆家。建暦2(1212)年に成立した『方丈記』は和漢混淆文による文芸の祖、日本の三大随筆の一つとして名高い。下鴨神社の正禰宜の子として生まれるが、出家して京都郊外の日野に閑居し、『方丈記』を執筆。著作に『無名抄』『発心集』などがある。

「2022年 『超約版 方丈記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

鴨長明の作品

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