新訳 武士道 ビギナーズ 日本の思想 (角川ソフィア文庫)

  • KADOKAWA/角川学芸出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044072346

作品紹介・あらすじ

深い精神性と倫理性を備えた文化国家・日本を世界に広めた名著『武士道』。平易な訳文とともに、その意義や背景を各章の「解説ノート」で紹介。巻末に「新渡戸稲造の生涯と思想」も付載する新訳決定版!

感想・レビュー・書評

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  • 武士道の定義。武者がその任務において、または日々の暮らしにおいても従うべき規範。
    無形のものであるから一層強く武士の行動を拘束し、心に刻み込まれた。
    戦いにフェアプレイ。やトム・ブラウンの決して小さな子をいじめもしなければ、大きな子に背を向けて逃げ出すこともしなかった。
    武士道が過去の日本の一階級の文化でありながら、現代人にも理解、共感できるような精神的内容のものであること。また西洋社会においても騎士道という共通する性格の文化があったこと。つまり武士道の本質は決して歴史的、民族的に限定された特殊なものではなく、どんな時代、どんな民族にも通用するような普遍的なものであると言う新渡戸の基本的な考え方がある。
    武士道の思想的根拠は儒学であることを述べているが、さかのぼって仏教や神道の影響がある。
    義とは武士がことにあたってどう行動すべきか、その判断の根拠となる考え方を言う。
    一方、義から派生した義理には義本来の倫理性が形式化されることにより、歪められ、むしろ正義を損なう詭弁や偽善に堕落する危険があることが強調されている。
    武士にとって勇気は真っ先に要求される資質であるが、その前提には義があること。義がなければどんなに勇猛な行動も乱暴狼藉と変わらない。
    慈悲は武士道を支える最高の精神的、人格的徳。純粋に自発的な心の動きに従ってのものである。新渡戸はこの慈悲の心こそ、勇や義以上に根本的なものであるとした。このことは武力からスタートした武士道を人格による感化を基本とする徳治の文化に昇華した。
    礼は他者の思いやり。
    忠誠は武家社会を支える根幹ともいうべき倫理。主君に対する絶対的服従、献身を意味する。事例として挙げられた菅原道真公の寺子屋の話は主従関係を知らないとなかなか理解出来ないと感じた。
    自制。心を平静に保つこと。
    日本人の曖昧な微笑みはこの自制の表れとして新渡戸は説明しようとしている。
    自死と仇討ちの章は今回きちんと読み進められなかった。私にとってはつらいものであった。
    刀。抜かざる刀こそ究極の伝家の宝刀。
    女性。武士道に女性に関する章があるとは知らなかった。女性も武士同様の心得を求められていること。ただ当時は性差を感じる記述があり、役割分担とされている。これは区別ではない。ことを力説している。
    武士道の影響。男性ばかりでなく女性にも。そして平民階級にも受け入れられ、影響を及ぼした国民文化であることを説いている。

    著者新渡戸自身は国際結婚をし、女性の教育にも力を入れておられたことを知ると、武士道に女性のことが書かれていることもよく分かる。

    以前から読みたかった著作。解説文が章ごとに書かれており、読み進めやすい。今後も時々読みたい。

  • 『武士道は、日本の象徴である桜の花と同じように、この国の土に根ざした花である』(冒頭より)

    新渡戸稲造(前の5000円札の人)が1900年に海外向けに著した武士道の解説本。
    明治後期、世界では日本に対する関心が高まっていた。開国して30年あまりの小さな島国が日清戦争で中国を破るまでに成長したのはどうしてか、日本人はどんな精神性を持っているのか、というのは世界の関心の的だったようだ。
    日本には特定の宗教があるわけでは無い。ただし、昔から続く道徳観のようなものは国民の間に根付いていた。それが「武士道」である。武士道のお陰で日本人は西洋にも引けを取らない高い水準の精神性を保つことができた。

    新渡戸は、切腹、仇討ちといった西洋から見れば野蛮に見える行動は、実はキリスト教にも通じるような美しい精神性のもとで生じているのだと述べている。武士道の様々な教えが、西洋哲学やキリスト教に共通するような普遍的なものであるというのが彼の言いたかったことのようだ。新渡戸自身、敬虔なキリスト教徒であるが、日本人として生まれ武士道の教えの下育ったことの誇りを本書の随所に読み取ることが出来る。

    ところで、本書は当時の西洋人に向けて書かれた本なのだが、残念ながら現代日本人である僕にとって非常に読みやすく感じてしまった。武士道の精神は日本人からはすっかり失われてしまったのだ。すっかり西洋の考え方が浸透してしまっている自分自身に気が付いて悲しい気持ちになった。かつての武士道は桜の花のように散ってしまったのだ。

  • 深い精神性と倫理性を備えた文化国家・日本を、世界に広めた名著『Bushido』。多くの先人が、日欧ふたつの文化を対立あるいは異質なものと見てきたなか、両者の根本的共通性を見出そうと努めた新渡戸が、本書に込めたものは何か。読みやすい訳文とともに、各章の意義や背景を「解説ノート」で紹介。エピソードや時代背景もよくわかる「生涯と思想」も付載する。世界を魅了し続ける「サムライ日本」の原点に迫る新訳決定版!

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著者プロフィール

1862年南部藩士の子として生まれる。札幌農学校(現在の北海道大学)に学び、その後、アメリカ、ドイツで農政学等を研究。1899年、アメリカで静養中に本書を執筆。帰国後、第一高等学校校長などを歴任。1920年から26年まで国際連盟事務局次長を務め、国際平和に尽力した。辞任後は貴族院議員などを務め、33年逝去。

「2017年 『1分間武士道』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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