コトラー マーケティングの未来と日本 時代に先回りする戦略をどう創るか

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784046018748

作品紹介・あらすじ

「私は日本の大ファンだ。これは日本人の可能性を解き放つための本である」

・最新理論・マーケティング4.0とは?
・日本の価値をいかにビジネス化する?
・不透明な世界をどうやって勝ち抜く?

答えはここにある。コトラー最新作・日本独占発売。


〈本書について〉
「近代マーケティングの父」と呼ばれ、マーケティングの歴史そのものを生み出してきたノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院教授、フィリップ・コトラー。本書はそのコトラーが、日本人のために書き下ろしたものである。

そこで展開されるのは、「製品中心」のマーケティング1.0から「価値主導」のマーケティング3.0というマーケティング理論の変遷、2010年にマーケティング3.0が世に登場して以来の最新理論であるマーケティング4.0の本質だ。

さらに、ともに非営利組織の可能性をいち早く見抜いたピーター・ドラッカーとの交流から、新しい時代の富の源泉、行き詰まりが語られる資本主義の行方まで、本書はコトラーの立つ現在地のすべてを凝縮したものといえる。

そして、日本独占発売の書籍でもちろん述べられるのは、日本の他国にはない可能性と、真っ先に取り組むべき課題だ。はたして、かつての日本は何が圧倒的に凄かったのか、現代日本のどこが機能不全を起こし、それをどう克服すべきなのか。

そうした日本という国家への処方箋とともに、不透明な超長寿時代を日本人が生き抜く戦略までを、コトラーは議論する。つねに時代に先回りし、新しい価値を示してきた世界有数の知性が、マーケティングと日本の未来を余すところなく語った一書。


〈目次〉
はじめに なぜ日本向けの書籍をつくったか
第1章 経済学と経営学のあいだ――マーケティングの本質とは
第2章 マーケティング1.0から3.0へ――人間中心主義への挑戦
第3章 マーケティング4.0とは何か――デジタル革命時代のアプローチ
第4章 ドラッカーとコトラー――私たちは同じ景色を見ていた
第5章 新しい富はどこにある?――逆転する国家と都市のパワー
第6章 万人に役立つ資本主義を求めて――アメリカをモデルに思考する
第7章 日本だけがもつ価値を自覚せよ――再び「世界最強のマーケター」となれ
終章 不透明な時代の人生戦略――あなたはいま何をするべきか
おわりに 平和とマーケティング――広島で考えたこと
解説 桁違いなコトラーの「知」の容量 鳥山正博

感想・レビュー・書評

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  • 今から20年近くにマーケティングという言葉を知って、その分野を少し勉強したことがありましたが、そのときから、この本の著者である「コトラー氏」の名前は知っていました。現代では、私が勉強したころの1.0や2.0でははく、4.0と進化しているとのことです。

    この本ではその進化の過程が解説された後に、現代の資本主義の特徴(弱点も含めて)、アメリカと日本における資本主義の違いについて述べた上で、日本の資本主義に未来があると結論できています。この本は、前書きで述べられている様に、日本向けの書籍で、日本だけで発売される本とのことです。著者が日本人なら理解できますが、著者があのコトラーですから驚きです。

    日本の強みを解説している何人かの日本人は知っていますが、最近ではあまり例を見ないと思います。この本で述べられている点を参考にして、あと10年程度になった私の社会人生活にも活用していきたいと思いました。

    以下は気になったポイントです。


    ・日本について心配しているのは、以前に比べて日本からの留学生が少なくなっている、少子高齢化の進展・移民の受け入れに積極的でないこと(p5)

    ・マーケティングの考え方を体系化し、S(セグメンテーション:市場細分化)、T(ターゲッティング)、P(ポジショニング:独自ポジションによる差別化)の「STP」というマーケティングのフレームワークを構築した(p8)

    ・今日のマーケターの多くは、マーケティング4.0の世界になっても、いまだ、マーケティング1.0(製品中心)、2.0(顧客志向)の段階にとどまっている(p49、53)

    ・1986年には、従来の4Pに加えて、政治力(political power)、広報活動(public relations)という2つのPを追加している(p51)

    ・サービス業の場合には、3つのP(要員:people、業務プロセス:process、物的証拠:physical evidence、例として立派な制服、トレーサビリティ)を追加する、サービスには1)無形性、2)不可分性、3)変動性、4)消滅性という特徴があるので(p53)

    ・コモディティ(普及が進み、差別化が困難になった製品)は、新製品を生み出しても、その製品が企業の想定した消費者に簡単に届かなくなった(p54)

    ・他社の競合商品との違いを説明できて、マーケティング2.0の段階になる(p57)

    ・顧客に究極の経験を提供させるため、娯楽性(Entertainment)、美的要素(Esthetic)、非日常性(Escape)、教育的要素(Education)の「4E」が必要である(p61)

    ・マーケティング3.0では、感情に訴えるようなマーケティングを、精神に訴えるようなマーケティングによって補完する。この段階にある企業は、利益(profit)、人的サービスの質(People)、地球(Planet)「3P」のために働く(p64)

    ・マーケティング3.0の、価値主導マーケティングをもたらしたのが、インターネットであるが、まさにテクノロジーそのもの、デジタル革命に焦点を当てたものが「マーケティング4.0」であり、オンラインとオフラインが出会ったということ、ブランド確立のためのスタイルと実体の組み合わせ、IoT(センサーデバイスなどのモノが情報交換することで相互制御する仕組み)による機械と人の間のネットワークの組み合わせ=評価サイトで評判やスコアを見ることができる(p77)


    ・製品購入時に顧客がたどる「5A」とは、気づき(Awareness)、魅了(Appeal)、尋ね・求め(Ask)、行動(Act)、推奨表明(Advocacy)から構成され、AIDA(関心、興味、欲求、行動、Attention/Interest/Desire/Action)にとって代わるもの、前半は従来型、後半はデジタルマーケティングである(p79、242)

    ・マーケティング4.0が注目すべき消費者のセグメントは、世代・ジェンダー・メディア特性に注目する。ミレニアル世代(1980-2005生まれ)、女性、ネチズン(p87)

    ・企業が生き残っていくために求められる特質は、レジリエンス(損失から復元するための能力)、アジリティ(変化対応能力)(p95)

    ・高品質の製品を提供することで地位を築いてきた企業は、廉価で性能の劣る技術に対して経営資源を投入することを躊躇するが、こうして鉄鋼大手はスクラップから鉄鋼をつくる電炉メーカの浸食をうけた、この破壊的技術が廉価のまま品質を向上させたとき、鉄鋼大手にはとるべき策はなかった(p115)

    ・大学という存在自体が、オンライン講義などの新しい学習システムによって淘汰の波に直面している。個人がそうした変化に追いつくには、生涯学習者になるほかない(p116)

    ・じつは、仕事の多くが「人を遊ばせないでおくための無意味なもの」であることを忘れてはいけない(p117)

    ・日本では企業家精神を育てるため、教育方法を「記憶を教える」ことから、「思考を教える」ことに変えなければならない(p120)

    ・今後、主要都市は、中世欧州の都市国家のような位置づけになり、国家を引っ張っていくような力を発揮するだろう(p128)

    ・世界に都市が24万以上存在していて、そのトップ100が、世界のGDPの37%を占め、人口1000万人以上の都市が36ある。トップ600が、人口20%、34兆ドル(全体の半分)を占めている(p130)

    ・グローバルな都市で、中間層が成長したのは、多国籍企業の存在が理由である。政府は市民の貧困は和らげられるが、中間層を成長させられるのは他国籍企業のみ、富の源泉は都市に存在するが、本当の主権者は多国籍企業(p135)

    ・いまアメリカで起きているのはダウンタウンの復活、デトロイトの不動産(高層ビル)に積極的に投資しているのは、シンガポール(p139)

    ・アメリカでは政策は、巨大な多国籍企業・1%の富裕層によって決められる(p156)最低賃金に加えて、重くのしかかるのは、学生たちの借金。学資ローン残額は1兆ドル、4000万人のアメリカ人が借りている(p162)

    ・アメリカ企業がシェアホルダー志向であれば、日本は逆にステークホルダー志向といえる(p182)

    ・世界中の創業200年を超える企業の半数弱が日本に存在している(p187)

    ・いまや3Dプリンタの登場により、職人芸にまで達する熟練工の仕事すら、代替え可能となった(p212)

    ・自動化によって職が消えていくことは、これからますます社会では、起業の重要性が高まっていく、将来性のある技術は、IoT、先進的ロボティックス、自動走行自動車、次世代遺伝子技術、再生可能エネルギー(p213)

    2017年5月21日作成

  • フィリップ・コトラー著「マーケティングの未来と日本」を読了。これまでのマーケティングの変遷から未来の見通し、また資本主義の在り方に至るまで解説されていた。中でも私が興味を持ったのはマーケティング4.0について。マーケティング4.0は「デジタル革命時代のマーケティングアプローチであり、企業と消費者の間のオンラインとオフラインの相互作用の組み合わせ、ブランド確立のためのスタイルと実態の組み合わせ、そしてIoTによる機械のネットワークと人との間のネットワークの組み合わせがその本質」と解説されていた。マーケティングは、インターネットの進展に伴い企業、顧客間の商品やサービスに関する情報の非対称性が崩壊したといわれているが、私がこのマーケティング4.0の文脈から考えたのはサービス、商品に関する情報の非対称性がなくなるのと同時に、IoTを背景として企業の顧客理解が深まることにより、”顧客情報に関する”顧客と企業の情報の非対称性も狭まっていくということである。ところで、IoTがアナログ、オフライン情報のデジタルデータ化を実現し、さらにA.Iによって解析や予測が可能になることでマーケティングの高度化、精緻化が進むとこれからのマーケッターの役割はどのように変化するのか、またはなくなるのか。私は、これからのマーケッターは人間にしか成しえない技能とされる「心」の領域、つまり人の共観や共感能力を発揮する領域での活躍が見込まれ、よりイノヴェーティブな仕事に集中できるという点でポジティブに捉えている。

  • 最近のコトラーは、共著が多いが、これはコトラー自身が書いている(インタビューから構成したもののあるが)。日本の読者にむけて書かれている。日本の現状を憂いている。自叙伝みたいになっていて、コトラーがどのように考えてきたかがよくわかる。どちらかというとマーケティング初心者向けかな。また、彼の視線で、ドラッカーやピケ、行動経済学なども語っているところがおもしろい。

  • マーケティングの父コトラーが「日本の近況〜未来に向けた提言をマーケティング見地から徹底的に語る書」、として期待したが、内容は若干肩透かしを食らう内容。コトラー自身のマーケティングとの出会いから始まり、その後のマーケティングの歴史と近況、未来が網羅的に語られる中で、日本の話題がピックアップされる程度の内容。

    ただしその内容は示唆に富む。今後の資本主義のあり方として「コンシャスキャピタリズム(=意識の高い資本主義)」の重要性を説き、株主などシェアホルダーではなくステークホルダーを優先すべき、行きすぎた格差の解消などなどが提示されるが、それはいわゆる日本的資本主義と親和性が高く、アメリカ的資本主義もそこに学ぶ必要があると説かれる。

    一方で、バブル崩壊以降、イノベーションを生み出せず停滞している現状の日本経済もまた問題であり、それを改善するための方法も提示される。それは暗記型教育、ルール遵守のビジネスではなく、チャレンジ促進、失敗を許容する姿勢、など。

    書かれていることは至極正論と思われるし、自分の考えとも合致する。前著「資本主義に未来はある」も今後の資本主義のあり方に関してかなり勉強になったが、それ+マーケティング、そもそもコトラーとはなんたるかを包括的にさらっと学べる、読みやすい一冊だと思いました。

  • そこに驚きはないのですが、読み終えて市場の見方が補強された気がします。あたりまえのことを分かりやすく書く。熟達の理解のなせる技だと思います。真髄ということなのでしょう。

  • Good read.

  • ・現在の世界はマーケティング4.0に向かっている。その対象も消費者だけでなく、ソーシャル・マーケティングをはじめとして、国家や都市のマーケティング、平和のマーケティングに至るまで多岐にわたっている
    ・マーケティング4.0→自己実現のマーケティング
    ・注目すべき消費者セグメントは、ミレニアル世代、女性、ネチズン
    ・仕事の多くが「人を遊ばせないでおくためだけの無意味なもの」
    ・日本教育も科目から始めるのではなく、子どもが関心を持っていることから始めて、そのなかである科目を教えるというやり方ができるはず
    ・コンシャスキャピタリズム→よりよい形に資本主義を改善していく運動
    ・平和構築のためには、そもそも戦争や暴力がどのように起こるのか、という理解が必要
    ・ビジネス界の「ガラスの天井」がなくなれば、世の中はかなり平和になる

  • コトラーの最新理論はマーケティング4.0を読めばいいし、日本に対する現状理解とコメントはあまり新しさがない。いわゆるコトラー本はたとえば「コトラーの戦略的マーケティング」あたりを読めば十分で、何冊も読んでも仕方ないかもしれない。コトラーが整理したマーケティング理論は一つの原理原則を示しており、納得感はあるが、何かが違うのではないかと実務を通してよく思う。「ブランディングの科学」のエレンバーグ(アレンバーグ?)理論やクリステンセンのジョブ理論のほうが、示唆に富んでいるように思う今日この頃。まあ、もちろんマーケティングの基本的考え方としてコトラーさんの理論は理解しておかないといけないとは思うが。

  • 図書館で借りた。コトラーすごいな。マーケティングとは相手が必要とするものを提示することだよなあ。いらない人に押し付けてもいらないものはいらない。そして行き過ぎた格差をどう解決するか。課題

  • マーケティングと言えば、コトラー。
    そんな訳なのに、恥ずかしながらコトラーの本を一冊も読んだことのないマーケッターでしたので初挑戦。

    コトラー氏は博学で、素晴らしい学者であることを肌感覚で知れた一冊でした。

    企業のマーケティングだけでなく、都市やNPO、
    政治などのマーケティングにも切り込んでいた。
    そして日本について深く洞察し、日本人がかつて素晴らしいマーケッターだったと述べていた。
    けれど、残念ながら今はそうではない。

    再び、日本が再興するためマーケッターたれと日本人に訴える。

    ふーむ。

    正直、本書を全ては理解しきれておりませんが
    興味深い一冊でした。

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著者プロフィール

2022年11月現在
米国・ノースウェスタン大学経営大学院(ケロッグスク-ル)S.C. Johnson & Sons 特別栄誉教授

「2022年 『「公共の利益」のための思想と実践』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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