日本は小国になるが、それは絶望ではない

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784046048240

作品紹介・あらすじ

国際競争力の低下と少子高齢化により、確実に経済が縮小していく日本。
それでも日本人は日本を大国と思い、これからもそうであると思い込んでいます。

しかし、数々の統計や国際ランキングは、今後、日本が大国としての地位を保つことはできないことを冷徹に示しています。

間違いなく、日本は小国になります。
「小国」という言葉を聞くと、ネガティブなイメージを持たれる方が多いかもしれません。
ですが、世界を見渡してください。
スウェーデン、フィンランド、ルクセンブルク、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド・・・決して大国とはいえなくても、豊かな社会を実現している国はたくさん存在します。

無理に大国であろうとするより、小国になることをポジティブに受け入れれば、日本も豊かな社会を築くことができるのです。

戦後最大の転換期を迎えた日本の新しい国家像を、気鋭の経済評論家が開陳します。


【目次】
第1章 日本は長期縮小フェーズに入った
第2章 戦後日本の本当の姿
第3章 小国が豊かになる方法
第4章 消費で経済を回す仕組み
第5章 コロナ危機は小国シフトを加速させる
第6章 小国として生きていくために

感想・レビュー・書評

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  • 日本経済が低迷(GDPダウン)する中でこれからの日本経済の展開を論じる。

    タイトルに強く共感したため拝読。日本の展望論(特に経済)はどうしても悲観的になりがちだが、本書は問題を冷静に指摘。そのうえ背景、世界の動向も併せて説明しており説得力のある内容であった。

    特に日本国民のマインドチェンジの必要性は特に共感できた。

  •  過去に成功体験にしがみつき、年を重ねれば偉くなると思っている人が多いのか、偉い人が自らの立場を守ることだけに固執しているからなのか。生産性の向上が必須と著者は語るが、上司におもねるなど社内政治に奔走する方が出世の条件である企業は今だに多いはず。朝から晩まで無駄な会議をして、その間ずっと仕事もない状態で待機させられる土曜日出勤を思い出す。著者の主張はその通りなんだけど、ではそのための手法はというと触れられていないので残念。恐らく自分も含め、変化を嫌う民族なのだろう。

  • 日本の経済的側面の現状とわずかながらの提言。MMTの理解不足がみられたので、あまり詳しくはないんだな。

  • 後書きにある、真の愛国の態度は本当にその通り。また、固定概念を打ち破ることもその通り。共感が多かった。

  • 東2法経図・6F開架:KW/2020//K

  • 著者の意見には、基本納得しました。
    ただ、目新しいことは、わたしが一読した限りではありませんでした。日本は、人口減少を主因として経済大国ではなくなるのだから、生産性を上げて、つまり付加価値の高い産業に人的リソースを傾け、国内消費を増やしていくという方向性です。

    もちろん理想は、そうですが、
    実現はできないだろうと思います。
    すでに日本人一人あたりの国内総生産は、
    韓国や台湾、中国沿岸部のそれに抜かれています。この20年間ひたすら落ち続けています。これから上昇するとは、思えません。所得も94年比で、今後数年で半分になるでしょう。

    人口動態を見れば85年比で、東京の人口に匹敵する数の高齢者が増え、人口の3割近くが65歳以上になっています。これだけ短期間で、老人が増えた国は日本です。これから労働者も2割、約一千万人が、僅か30年で減少します。1945年から僅か30年で労働者が倍になりましたが、今後は逆の現象が起こります。

    教育面を見ても、ズタボロです。東京大学もアジアの一流大から、滑り落ちています。優秀な留学生や研究者が日本の大学を選ぶことはありません、このことは、大学関係者なら、誰でも知っています。極めて程度の低い高等教育が繰り広げられています。もちろん日本の大学生の学習時間は、世界最低です。その最低のまま、大学を卒業し、企業に所属しています。企業での職業教育とは、その企業に所属することを心理的に強制させるようなモノで、職業人として生産性を上げるものではありません。したがって、独特の業界知識や慣習を半ば強制的に叩き込まれるため、数年もすれば、他の企業では全く使えない人材が生まれています。IT技術革新で日本以外の国は労働生産性を上げましたが、日本だけが何故か下がりました。こんな状況でAI活用して、、、生産性向上!不可能でしょう。

    したがって、日本の企業に関しては、グローバル化に成功した企業は、数えるほどです。国内市場は、人口減少、高齢化、少子化で、毎年業界が一つまるまる無くなるようなインパクトを与えて、海外市場に活路を見い出しましたが、成功した企業は、ごくごく僅かです。またそれらの企業は、すでに日本市場なんて相手にしていません。従業員も基本は、外国人です。30年前の世界トップ500企業の半分は、日本企業でしたが、今では10社程です。あと10年で確実に残りの企業も姿を消すでしょう。

    政治になると、これは絶望的な状況です。
    まず衆参政治家の3割以上が、2世議員です。先進国で、最も比率が高い。これで民主国家なんて、言えるわけがありません。

    現在、コロナ感染で日本だけが、アジアの中で、ぶっちぎり失敗しています。タイ、ベトナム、カンボジア、韓国、インドネシア等、日本に比べて遥かに成功しています。日本は、検査数すら彼らの国に及ばず、よくわからない統計分析が横行していて、一応、日本は欧米諸国に比べて、感染者も少なく、死亡数が「少ないことになっています」。これは、実証的に得られた数字ではなく、政府の願望です。そのため、TOYOTAやセブンイレブンの従業員が感染したというニュースは、ほとんどなく、毎日何百万人運ぶ地下鉄で、感染した報道は皆無です。
    これは、原発問題と全く同じ論理で、
    「本当の状況」は国民には、絶対知られないようになっています。実証的な統計情報を公開して欧米各国の方が遥かに民主的な状況です。自由や人権を優先することは、それだけ犠牲が伴います。

    日本が優先しているのは何でしょうか?感染も抑えたい、経済も回したい、旅行にも行きたい、ご飯も食べに行きたい。日本政府も日本人も、救いようがないバカです。地獄に落ちた方がいいでしょう。GOtoは、バブル期に行った総量規制を遥かに超える愚策です。これで多くの企業が倒産し、失業、自殺者を生みます。少なくない日本人も、それらに一生懸命加担しています。まるで第二大戦中に、ガンガン好戦的だった日本国民と瓜二つです。先の大戦では、僅か4年間で300万人亡くなりましたが、今回は、一体どうなることか、、、本当に心配しています。

    日本政府が頑張っている理由は、オリンピック、インバウンド、対日投資、外国人労働者増加のためです。ただ、日本独特の政策によって、これらから生まれる経済的恩恵は全てなくなり、向こう10年の経済成長が消えてしまいました。来年は、3割以上GDPが落ち込み、大企業がバタバタ倒産するでしょう。

    以上の理由から、日本は、著者が指摘する以上の何倍ものスピードで小国化します。というか、すでに先進国ではなくなっています。コロナで亡くなるより、コロナ関連で自殺する人が2倍います。去年より4000人自殺者が増えています。2割増加です。来年は、更に増えて2019比の1.5倍は増加するでしょう。本当に、どうしようもない状況ですが、仕方ないと思います。誰を批判しても、政治に文句を言っても、どんな言論を繰り広げても、何も効果ありませんが、個人的には、日本は素晴らしい「場所」だと思うので、どんな絶望的な状況でも、より良く生きていくことは可能です。

    主体的により良く生きる上で、学習することは、必須ですが、日本人は、それを捨て去ってきたと思います。何かに寄生、所属すること以外、自分のアイデンティティーを見い出せない人は、これからさらに地獄のような状態になります。日頃から主体的な人生を自身で考え、行動してきた人にとっては、日本の環境は、最高の環境だと思います。  

    最後に日本の未来を予測した内容で、この著者のあとがき以上に日本の未来を記述した人がいました。

    それは、ノーベル経済学賞に一番近い日本人と言われた故森嶋通夫先生です。氏は、90年代半ばに日本の未来を質的に分析した論文で以下のように述べています。

    「この国の将来が明るいものでないだろうと結論しても間違いはない。日本は工業国上位のグループに留まることはできないであろう。そして国際的影響力は目立たなくなり、取るにたらないものとなるだろう」

    かなり辛辣な言葉ですが、非常に的を得た分析結果だと思います。

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著者プロフィール

経済評論家。仙台市生まれ。1993年東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在、「ニューズウィーク(日本版本誌)」「現代ビジネス」など多くの媒体で連載を持つほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。著書に『新富裕層の研究』(祥伝社新書)、『戦争の値段』(祥伝社黄金文庫)、『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『縮小ニッポンの再興戦略』(マガジンハウス新書)など多数。

「2022年 『スタグフレーションーー生活を直撃する経済危機』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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