態度が悪くてすみません ――内なる「他者」との出会い (角川oneテーマ21 A 49)
- KADOKAWA (2006年4月7日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784047100329
感想・レビュー・書評
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「言葉は無限の誤解の可能性に開かれている」ってくだりと
翻訳についての論考がおもしろかった。
日本語訳の日本語がへんだと、原著を参照されるので、
わからない言葉は静かにスルーしていた、という。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
前半は読みやすく納得というか、そういうことあるなあという感じ。後半、特に書評は難解と言える。
合理的な人は結婚に向かない、喫煙の起源について、は興味深い内容。 -
「やりがいのある仕事」のところが最も興味深かった。
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・「嘘」や「芝居の台詞」には「何か」が決定的に欠けている。
身体が欠けているのだ。
演技者は「台詞がよく聞き取れるように、きちんとアーティキュレートして語る」ことを求められる。私たちがふだんしゃべるとき、私たちのことばづかいに必ず随伴する「ためらい」も「前のめり」も「無意味な間」もそこにあってはならない。そのような夾雑物をすべて「削ぎ落とし」た、クリアーカットな発声を達成したのち、演技者は、その「台詞にふさわしい」動作や表情をこんどは「付け加えてゆく」。
→小さい子どもの反応がわざとらしい時がある。ふさわしいと思われる態度を演技しているからかも知れない。発展というか、学習途上で夾雑物が生成されないのか。
・太宰治の最晩年のエッセイ『如是我聞 四』は新潮社の編集者を夕刻電報で呼び出して口述筆記させたものである。太宰は編集者の前で炬燵に入って、酒杯を含んだまま、「蚕が糸を吐く」ように、よどみなく最後まで口述したという。
ところが1998年にこの口述筆記された『如是我聞 四』の「草稿」が発見された。それは発表原稿とほとんど一言一句変わらぬものであった。
つまり、太宰はまず草稿を書き、それを暗記し、ついでそれを聴き手の前で暗誦してみせたのである。
・くわえタバコでネクタイを緩めたやくざな兄ちゃんが「いいから、適当に面白そうなのを選んで、ちゃちゃっと訳しちゃってよ」と汚いペーパーバックの束を私に投げてよこした。
読んでみると、どうでもいいような動機の殺人があり、みえみえのトリックがあり、30分以内に犯人がつかまるというまことに無内容なミステリー短編集であった。最初は律儀に訳していたものの、そのうちに内容のあまりのつまらなさにうんざりして、ついに一大決心をするに至った。
書き換えてしまうことにしたのである。
・例えば、日本製電気掃除機のマニュアルに「お餅が喉につかえた場合などにもご使用頂けます」というような記述があったとしよう(ないけど)。これをいま仮にフランス語に訳すことを明日までの急務とするベルナール君がいたとして、「お餅」というものの形状や性質について知るところがなかったという場合をご想定願いたい。辞書的語義はわかっても何のことかぜんぜんわからないというケースは技術翻訳においては少なくない。
そういう場合は、静かに「餅のことは忘れる」というのも訳者の取りうる一つのオプションではないかと私は申し上げているのである。
・「タカハシ」さんと高橋源一郎を隔てる距離は、「テスト氏」とポール・ヴァレリーを隔てる距離より、「苦沙彌先生」と夏目漱石を隔てる距離より狭い。そして、この距離が狭いほど批評装置の性能は高く、響く「倍音」は深い。
・私たちにできるのは、この「どこまで信用してよいかわからない私自身の世界経験」」を慎重に腑分けして、そこから「信用できそうな要素」と「信用ならない要素」を識別し、「信用できそうな要素」だけに準拠して、「ほんとうの世界」について近似的に知ろうとすること、それだけである。
「信用できそうな要素」というのは、「今ではないとき、ここではない場所、私ではない人間」の世界体験と共通するような要素のことである。 -
ブログではなく雑誌寄稿の雑稿集。カギカッコにいれる技法や、わからないところを飛ばす翻訳、金銭に換算できないものを理解しないコンサルに対する怒り、色々良く分かるし勉強になる。
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ブログの文章を集めたものでなくて、様々な媒体に依頼を受けて書いた散文を集めたもの。なので、著者本人も言っているけど、少し他のものと味わいが違う。ただ基本はいつもの内田節である。
「私のハッピー・ゴー・ラッキーな翻訳家人生」という題目の文章が特に面白かった。訳せないところは訳さなくていいという必殺技を伝授してもらった。
おそらくほどよく適当に書いているんだと思うけど、著者の文章はある程度適当に書いたものが一番おもしろい。 -
知識欲をかきたててくれるウチダ先生のエッセイ。翻訳にまつわる文章は、畏れ多くもいたく共感。私も相当態度が悪いのだな、と自覚しました(笑)
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タイトルで選んで手に取った次第の本。著者の語り口と題材にしているものがとても興味を引くもので面白く読めました。ブログやら取材やらで書いたものをまとめたエッセイ集みたいなもので、次々読めて重たい感じはありません。もう一回読み返すとさらにおもしろいかも。