巨人軍論 ――組織とは、人間とは、伝統とは (角川oneテーマ21)
- 角川書店 (2006年2月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784047100367
感想・レビュー・書評
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「1. 巨人軍は常に紳士たれ」・「2. 巨人軍は常に強くあれ」・「3. 巨人軍はアメリカ野球に追いつき、そして追い越せ」... 日本プロ野球界の父と称された実業家・正力松太郎が遺した「巨人軍憲章」である。当時の巨人はこの精神を体現したチームであり、だからこそ他球団の選手は巨人に憧れ、目標とし、そして対抗心を燃やしていたと語るのは、球界のスーパースター・長嶋茂雄を太陽の下で花開く「ヒマワリ」に、自らを人目に付かない日陰でひっそりと咲く「月見草」に例えた野村克也氏。1965-1973年の間、9年連続で日本一に輝いた「V9時代」の巨人を手本としながら、この球団の「凄さ」と近年の「凋落」ぶりを分析する。監督の仕事はまず第一に選手の人間形成という信念を貫いた男が、プロ野球という枠に留まらない「組織論」を展開する。
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選手に好かれようとは思っていない私であるが、「信頼」はされなくてはいけない。
部下が上司についていく理由が複数ある。自分に利益をもたらしてくれる人、自分にとって怖くて恐ろしい人、自分がとても尊敬している人。など。
今の時代は恐怖でついてこさせようというのは、NGだから、
部下に利益をやるか、尊敬させられるかだと思う。
著者は川上哲治さんを見習い、人間教育を徹底させた。
それが、V9の巨人であった。
メンバーも1人1人が、役割をもっていて、ミスをしない職人の集まりだった。
恐怖はダメと言ったが、鉄拳や言動の制裁ではなく、
ライバルを付けて競争させ、自分の立場も危うくさせるような無形の恐怖も勉強になる。
選手に好かれる指導者は一時的に結果がでるが、常勝集団にはなれない、好かれなくてもいいが、信頼される指導者にならないと、本当に強い集団の指導者にはなれない -
野村監督の巨人軍論。球界の盟主と言われる巨人軍の何がすごかったのかを教えてくれる。
ドジャースの戦法をいち早く取り入れ、常に球界をリードしてきた巨人であるが、今はその面影もなく寂しさを感じる。 -
よく人に「オレはアンチ巨入だ」と言うと、そいつは決まってニヤリとして、「アンチ巨入は実は巨入ファンなんだ」ということを言います。
オレはたいていムっとして話を逸らしてしまったものですが、それはある意味図星だからです。
確かに、嫌いな(意識するが)ゆえに、巨入のメンバーは真っ先に覚えるし、ペナントレースの順位やゲーム差も巨入に限って知っていたりするのです。
(さすがに今はそういうこともなくなりましたが)
北海道では特にそうですが(本書の中で京都出身の野村氏もそうだったと言っています)、プロ野球中継といえば巨入戦しかなかった時代です。しかもV9とか言って、とにかく圧倒的に巨入は野球の頂点に君臨していた。それこそまばゆいばかりの存在で、確かに子供の頃は巨入ファンでした。
でも、その後、Vを逃がしたり下位に低迷する年もあったりするにつれ、徐々にかつて輝いていた巨入に幻滅するようになったような気がする…。
「なぜアンチなんだろう?」と考えるにつけ、そういう理由が脳裏に浮かびました。
この本には、まさにそういうことが“巨入凋落の原因”として書かれていました。日本の野球は紛れもなく巨入が創り、リードして来た。球界の範たる立派な監督と選手ばかりだった。それが今は…という具合です。
そればかりでなく、「中心なき組織は機能しない」「この状況でなぜそのボールを投げるのか、その根拠を明確にしろ(データ活用のコツ)」など、組織論、マーケティング論として読んでも傾聴すべきことが書いてあります。
これは好著でした。 -
東北楽天ゴールデンイーグルスの野村監督による古き良き強い巨人軍についての本。
私は子供の頃から巨人ファンだった。だが、最近はほとんどプロ野球を観ることがない。最後に球場に足を運んだのは何年前だろうか。それでもメジャーリーグやパ・リーグのテレビ中継はたまに観たりする。いつから巨人戦を観なくなったのだろうか…
さて、本書では、昔の圧倒的な強さを誇っていた巨人軍が野村氏から見てどういうチームだったのか、そしてその巨人に対抗するために選手として、監督として、何を考え、どういうことをやってきたのかを書き著している。
さすが、名選手にして名監督であるだけのことはあると思わせてくれる内容。野村監督に対する印象が随分変わった。 -
「野村ノート」に秘められた「巨人軍」の項目をすべての勝負論、組織論は伝統の巨人軍から学べることは案外知られていない。強い球団と弱い球団の差とは何か?来期、楽天を指揮する現役監督が球界を斬る。
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巨人ファンなので購入。
野村さん(自分の苗字もだが)の本は初めてだが、テレビやラジオの解説ではお馴染みで、まとめるとこういうことになるんだなぁと、野球のマネージメント論はすんなり読めた。
ただ約10年前に書かれた、長嶋監督の後のパッとしない時代の書で、V9時代の賛歌本でした。
「パッとしない」と記したが、野村さんは「巨人の凋落」という表現で、何箇所もあったのでそこには萎えた。
(2015/3/14) -
現在、大学の通信教育過程でマネジメントやリーダーシップ論を学んでいますが、これらの内容は「情」と「理」のバランスの観点から非常に的を得ていると思います。特に、川上氏の「人間力」に関する部分は共感する部分が多かったし、巨人軍にはリーダー・ディベロッピング・リーダー(後継者を育てるリーダー)が多いという野村氏の慧眼も素晴らしいと思います。野村氏のキャラクターからすると単なるボヤキの人かというイメージもありますが、彼は「向上心があるからボヤくのだ」という話を聞いたことがあります。野村氏の向上心を感じる内容であったし、あらためて、マネジメントやリーダーシップ論に気づきが多かった本です。