ジョーカー・ゲーム

著者 :
  • 角川グループパブリッシング
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本棚登録 : 4572
感想 : 822
  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048738514

作品紹介・あらすじ

結城中佐の発案で陸軍内に設立されたスパイ養成学校"D機関"。「スパイとは"見えない存在"であること」「殺人及び自死は最悪の選択肢」。これが、結城が訓練生に叩き込んだ戒律だった。軍隊組織の信条を真っ向から否定する"D機関"の存在は、当然、猛反発を招いた。だが、頭脳明晰、実行力でも群を抜く「魔王」-結城中佐は、魔術師の如き手さばきで諜報戦の成果を挙げ、陸軍内の敵をも出し抜いてゆく。東京、横浜、上海、ロンドンで繰り広げられる最高にスタイリッシュなスパイ・ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  •  スパイもの。面白かった。

     スパイといえば、007とか、ミッション・イン・ポッシブルとか、とにかく派手でカッコイイイメージを抱いていたのですが。実際のスパイは、ぜんぜん違っていてびっくりでした。

     スパイとは、見えない存在であること。
     何年、何十年、もしくは何世代にもわたって、自分以外の他人になりすまし、敵地に潜入して情報を流す。
     賞賛は、ない。
     正体がばれた時が失敗でではなく、疑われた時が失敗のとき。
     失敗しても、死んではならない。

     およそ普通の感情の持ち主ができる仕事ではない・・・

     結城中佐の発案で陸軍内に設立されたスパイ養成学校「D機関」。 結城中佐もさることながら、このD機関に入学した学生の優秀なことといったらもう・・・語学が堪能なことは当たり前。どんな人間にも成りすまし、一度見たものは一瞬で暗記し、どんな金庫も開ける。何ものにも捉われない、信じるものは自分だけ。
     自分にはこのくらいのことはできなければならない、という恐るべき自負心を持つ彼ら。まさに、異能。

     「ロビンソン」が面白かったです。敵にスパイだとばれた伊沢の脱出劇。自白剤の裏をかいた伊沢の抵抗は見事。と、いうより、そこまでの事態を想定してD機関で訓練させる結城中佐がすごいと思いました。

     究極の頭脳戦、本当に面白かった。続編も読みます。

  • 格別に、面白い。
    すいすいと、物語に引き込まれていく・・・。

    昭和十年代を舞台に、陸軍中野学校を先鋭化した様なスパイ養成機関、通称「D機関」、にまつわるエピソードをゲーム感覚で描いた短編集。

    自殺・殺人をやってはいけない、ときつく言われているスパイ集団。
    当時としても、異例で賛否両論いわれていたが、隊長?の結城大佐は堂々としているのがまたすごい。

    殺人シーンみたいな残酷なシーンが少ないのでその点でも、よかった。

    • HNGSKさん
      紫苑さん、お久しぶりです。
      紫苑さんのレビューを読んで、ジョーカーゲームシリーズが気になりました。
      早速、読んでみます。
      紫苑さん、お久しぶりです。
      紫苑さんのレビューを読んで、ジョーカーゲームシリーズが気になりました。
      早速、読んでみます。
      2012/12/27
    • しをん。さん
      お久しぶりです♪
      失礼ながら、お元気でしょうか?(笑)


      ジョーカーゲームシリーズ面白いですよ(●^o^●)
      スリル満点で久しぶりにミステ...
      お久しぶりです♪
      失礼ながら、お元気でしょうか?(笑)


      ジョーカーゲームシリーズ面白いですよ(●^o^●)
      スリル満点で久しぶりにミステリアスな本を読んだかと・・・(゜o゜)
      2012/12/27
  • 日本軍の精神の対局を行くD機関の設定が面白かったです。
    スパイに対する現代に近いイメージの設定と、緊迫感のおかけで、戦争の時代背景の中でもどんどん読み進められました。
    D機関外部・内部どちらの視点の時も、今度はどんな手を使ってくるんだろうと楽しみにしながら、シリーズ全部読んでしまいました。
    D機関があまりにもスマートな策略で色々解決していくので、途中から安心感もあってより楽しかったです。

  • 吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門を受賞。
    昭和10年代の陸軍。結城中佐がスパイ養成所としてD機関を作る。そこでの短編集。
    殺すな、死ぬな。
    とらわれるな。
    スパイって大変だわー、二重スパイとかわけわかんなくなりそうだわ。
    シリーズもののようなので、続けて読む。

  • 「ジョーカー・ゲーム」
    結城中佐の発案で陸軍内に設立されたスパイ養成学校D機関。「スパイとは“見えない存在”であること」、「殺人及び自死は最悪の選択肢」、これが結城が訓練生に叩き込んだ戒律だった。


    「スパイとは“見えない存在”であること」「殺人及び自死は最悪の選択肢」という結城は「スパイは卑劣な存在」「自死すれば靖国で胸を張って同期に会える」と信じていた佐久間にとって異質だった。


    そんな佐久間が登場するのは表題の「ジョーカー・ゲーム」。本作品は「ジョーカー・ゲーム」を含む全5篇の短篇が収められています。そこで活躍するのは結城中佐が鍛え上げたスパイ達。彼らが就く任務はどれも難易度が高い。しかし、彼らは特殊な自尊心とずば抜けた能力で任務をこなしていきます。そんな彼らの物語の中で最も印象深かったのは「XX」です。


    XXはダブル・クロスと読み、意味は裏切り。このXXが残された任務(というか事件)を担当する飛崎は他の同僚とは違う経歴を持つが、高い能力を備えるスパイであった。しかし、飛崎がマークしていた標的が突然死亡する。その死に違和感を持つ結城中佐が他のスパイ達に事件の洗い出しを命じ、事件の真相を暴く・・・


    そんな物語です。この「XX」が印象深い理由は飛崎が他の同僚のスパイ達とは違ったからです。最終的に真相を見つけ出す飛崎達D機関ではあるけれど、その捜査で飛崎はある感覚が他の同僚に劣っていると知ります。実はこの感覚は劣っているのでは無く、普通の人間としては当たり前の感情であるのですが、D機関のスパイとしての仕事の出来に大きな違いを生むものでした。


    その大切ともいえる感覚を守る為に飛崎はD機関を脱退します。そして飛崎が向かった先は北史、恐らくは戦場の最前線。結城中佐の教えが飛崎に重く圧し掛かる結末はとても悲しいものです。救いは結城中佐の軍隊式の敬礼だろうか。

  • 図書館より。

    昭和の軍部が台頭した時代に世界各国で活躍するスパイ組織「D機関」の活躍を描いた連作短編集。

    世界大戦間近の軍部の組織の話なので重厚な話なのかな、と読む前は思っていたのですが、そんな雰囲気ではなくスパイたちの活躍に焦点を当てエンターテイメントを重視した話でさらっと読むことができました。

    印象的なのはD機関を率いる結城中佐の圧倒的な存在感。第一線は退き後進の指導及び指示に徹しているわけですがそれでもそれぞれの話でのスパイたちの活躍の裏にはこの男がいるんだなあ、と感じ入ってしまいます。心強いような、怖いような……

    この時代においては軍人は「敵を殺すことと、立派に死ぬこと」を大義にしていたのに対し、スパイは「殺すな、死ぬな」を大義とし、また天皇の神格化に対しても否定的であり、この時代を舞台にした作品ながらきちんと軍部の間違いを正してくれていたのもなんだか気持ちよかったです。

    ミステリーとしては喰い足りないところもあったのですが、スパイたちのスマートな活躍に引き付けられること必至の作品だと思います!

    第62回日本推理作家協会賞
    第30回吉川英治文学新人賞
    2009年版このミステリーがすごい!2位
    2009年本屋大賞3位

  •  面白かった!
    軍の話なんて暗ーくて残酷だったら、と不安に思いながら読みはじめる。
    あっというまに終了。
    「いかなるものにも、決してとらわれるな」
    「死ぬことなど誰にでもできる。問題は死んだからといって失敗の責任を負うことにはならない」
    繰り返し出てくるこの言葉は時代劇ファンには耳が痛い。

     ラストの結城中佐、惚れるー。

  • 大日本帝国軍のスパイ育成機関「陸軍中野学校」を知るキッカケになった。スパイとしての人生は孤独で非人間的なもの。隠れた存在であるスパイにとって殺人や自殺は1番してはいけないこと。帝国軍幹部の火消し役として使われる一方、卒業生は少数だが戦史に与えた影響は計り知れない。調べてみたい。
    堕落した帝国軍の描写が現在の国会議員と重なった。権威主義による思考停止、敗戦は何を意味するのだろうか。

  • 2020/03/01読了
    #このミス作品13冊目

    全編スパイをテーマにした話。
    独特のストーリーは面白かったが
    ミステリーとしてはちょっと物足りないかな。

  • 映画を見にゆきたかったのに家族と大げんかして
    ポシャったのでせめて原作を楽しもうと借りた本書。

    映画ではアクション活劇のような側面が強く印象に残り、
    スカッとしたくて観たかったのですが…。

    原作はむしろ淡々としたタッチの文章。
    スパイミステリは大好きですが海外物を読み慣れていると、
    この作品では食い足らない感じがしてしまうのです。

    本書はD機関と呼ばれる旧帝国陸軍内に設置された
    スパイ特務機関の活躍を描くのですが、連作短編で
    あっという間に終わってしまうので、慣れていない人には
    読みやすい好書といわれているのでしょう。

    しかし各話に収録されたスパイたちの誰かを他の話の
    登場人物に入れ替えても、特に問題がなさそうな感じ。

    そこが残念。

    私的には、上海を舞台にしたお話『魔都』の本間と
    最後に収録されている『XX』の飛崎くらいが
    印象に残るだけです。

    本間はD機関の人間ではなく憲兵隊員ですし
    飛崎もD機関から脱落して一帝国軍人に戻される人物。
    D機関の人間ではないと括れば、ある意味人物が紋切り。

    D機関の最初の教えである、スパイならば―。
    死ぬな
    殺すな
    見つかるな
    目立つな

    という考えに従えば、紋切りは優秀さを
    示すのかもしれません。

    でも私達は小説の読者ですから、各話の主人公や
    上司役の結城にもっと感情移入できたほうが面白いです。
    そういう意味で本間や飛崎のほうが印象的だというのは
    作者様には非常に皮肉ですね。

    スパイ小説の面白さは、政界財界軍組織などのエリートや
    スパイそのものになって、組織の人物としての感覚を味わう
    部分もありますが、描写が淡彩なのでそこまで入り込んでの
    なりきり感は楽しめません。

    その部分でもちょっとミステリ慣れしちゃった方には
    物足りないけも知れないです。

    ただし、ミステリや読書そのものに慣れていない方。
    自由に肉付けし、物事を立体的に見せたい映画というものの
    原作として読めば、確かに良い入り口や題材かもしれません。

    『謎解きはディナーのあとで』を読んだ時にも思いましたが
    こういう、さっと読めればっていう本が増えてしまったのは
    いいことかもしれないけど読者側の読む能力の衰えを感じて
    ちょっと切なくなります。

    これが面白かった方、続編お読みになったあと、ぜひ
    ミステリ専門の文庫などにも手を伸ばして下さい。
    これを書いてらっしゃる作家さんだって、絶対に!
    分厚いのを読んでます。面白かったら分厚くても、
    あっという間に読めちゃうものです。

    そしてそれでもこれが好きだったら、このシリーズの
    二次創作なんか、できたら素敵じゃないですかね。
    そこまで行けたら最高ですよ。きっと。

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著者プロフィール

一九六七年生まれ。二〇〇一年『贋作『坊っちゃん』殺人事件』で第十二回朝日新人文学賞受賞。〇八年に刊行した『ジョーカー・ゲーム』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞をダブル受賞。他の著書に『象は忘れない』『風神雷神』『二度読んだ本を三度読む』『太平洋食堂』『アンブレイカブル』などがある。

「2022年 『はじまりの島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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