たった独りの引き揚げ隊 10歳の少年、満州1000キロを征く

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
4.03
  • (11)
  • (9)
  • (8)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 94
感想 : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048850421

作品紹介・あらすじ

一九四五年、満州。少年はたった独りで死と隣り合わせの曠野へ踏み出した!四一連戦すべて一本勝ち。格闘技で生ける伝説となり、山下泰裕を指導するなど、日本柔道界・アマレス界にも大きな影響を与えた男・ビクトル古賀。コサックの血を引く男は「俺が人生でいちばん輝いていたのは一〇歳だった」という。個人史と昭和史、そしてコサックの時代史が重なる最後の男が命がけで運んだ、満州の失われた物語。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 10歳児のサバイバル・ドキュメント。ロビンソン・クルーソー、インガルス家の物語、テレビだとふしぎな島のフローネが好きだった人には面白いと思う。

    主人公の発する「わくわく感」がすごくて、朝の通勤電車を降り損ねたほど面白かった。銃で撃たれてから30分走り続けるって、生身の男の子が未来少年コナンを超えている。

  • またまたすごい本に出会った。
    満州からの引き揚げの物語と言えば、藤原ていさんの「流れる星は生きている」が強烈な印象があるが、これは全然違うパターンの引き揚げの話。
    満州でコサック出身の母と日本人商人とのハーフとして生まれ、草原で馬を乗り回し、コサックとしての誇りを抱いていた少年が、たった一人で徒歩で引き揚げてきた話。その後、「ビクトル古賀」として格闘技で有名になった主人公に取材して、その生い立ちや生々しい終戦前後の満州の様子、引き揚げのときの様子を描いたルポルタージュの大作です。
    一応、正規の方法で引き揚げ隊に入り、父親の知り合いと行動をするつもりだったが、引き揚げ列車は出発した瞬間から殺伐とした感じになり、大人たちは誰も一人ぼっちの子どもに手を差し伸べようとはせず、皆自分が生きて帰ることだけで精いっぱい。(それは、藤原ていさんの「流れる星は~」でもしっかりと描かれていた)。コサックとしての訓練を受け、どんな状況でも自分で生きる力が備わっていたビクトルが、余裕の表情で鼻歌を歌っているのが気に食わなかったらしく、「お前ロシア人だろ!」と大人から蹴り飛ばされ、列車から降ろされる。
    しかし本人はまったく恨んだりはせず、「あのまま日本人の大人たちと行動していたら死んでいたかもしれない」と振り返る。
    弱りはてた引き揚げ隊一行は実際、盗賊たちの格好の餌食になっているし、線路わきには行き倒れになった人達の死体がごろごろと転がっていた。ビクトルは必要になったら死体から靴やベルトなどをはぎ取り、中国語やロシア語を駆使して通りかかった町のロシア人に助けてもらったりしながら、本当に、徒歩で!引き揚げてきたのだ。
    ご本人は、昨年(2018年)11月に83歳で亡くなった。格闘家として有名だったようだが、その少年時代やコサックというものに注目が集まることはなかった。彼の物語を掘り起こしたことで、最後のコサックの人々にも光をあて、教科書ではなかなかわからない、終戦前後の満州やシベリアの実態も人々の暮らし目線でわかる物語になっていてとても興味深かった。

  • 旧満州、ハルビンにいた時に読んだ本。激変する歴史の中で、活き活きと生きるビクトルに心打たれました。久々に夜を徹して読んだ本。
    青々と広がった空、柔らかい草原、その中を走る馬たち。全て頭の中で映像化される作品です。

  • 「我ハ、しゃくじん(石神)アデル」に登場するビクトル古賀氏の物語。特に少年時代に満州で終戦を迎え、日本に帰国するまでが秀逸に面白かったです。

  • 夢中になって読んでしまう。
    引揚げ時の壮絶な状況。
    こんな安全な現代はなんて幸せな事かと思う。

  • 終戦の混乱の満州を、たった一人。日本へ帰国した少年の物語。
    夢中になって、あとがきまで読んだ本は久しぶり。

  • 本屋でたまたま発見。ソ連の満州侵攻により家族と引き離され、たった一人で父の故郷である日本を目指し、旅をする少年のノンフィクションです。

    少年の正体は母はコサック隊長の娘クセーニア、父は毛皮商人の仁吉を両親に持つ、サンボの生ける伝説、ビクトル古賀さんです。

    1945年、満州はハルビン。引き揚げ隊に付いていけば自動的に日本に帰れるはずだった古賀少年。しかし、些細な事で大人たちに睨まれ、出発地であるハルビンを出て間も無く、列車から引きずり降ろされてしまいます。
    しかし、少年はハルビンには戻らず、たった一人で死と隣合わせの曠野へと一歩を踏み出します。
    コサックの生きる知恵や伝統、帝政ロシアからソ連への歴史など第二次世界大戦期の時代背景もベースに息もつかせぬ冒険の記録が語られていきます。
    読み終わってとても清々しい気持ちになれる、爽やかで逞しい少年の物語です。

  • 第二次大戦後,わずか10歳で満州から単独日本に帰国した少年の物語。ノンフィクションです。この少年は日本人とロシア人のハーフですが,コサックの教育をうけ,自然の中で生きるすべを見につけていたため無事に帰国できたのだそうです。あくまでも意気揚々と独り歩き続ける強さに驚きました。そして,戦後多くの日本人がすごしたつらい日々が,今回の震災後の状況とオーバーラップして,色々と考えさせられました。

  • 知識や歩き切るだけの脚力があったとはいえ、10歳(本当は11歳か)の子供がたった一人で1000キロを歩き切ったというその事実にただただビックリ。それに引き替え日本へ引き上げる大人たちの態度といったらなんだかあまりにも残念。そりゃ失意も大きかったろうし、「生きて帰る」のはそれほど大変だったとは分かるつもりだけど、それにしたって、ねぇ?

  • 石村博子のたった独りの引き揚げ隊を読みました。コサックと日本人のハーフとして産まれ、日本の敗戦・ロシアの侵攻の時期に、一人だけでハルピンから錦州まで1000キロを引き揚げたビクトル古賀の半生を描いたノンフィクションでした。普段は農民として暮らしていながら、招集がかかれば勇敢な騎馬軍団として駆けつけるというコサックの伝統の中でビクトルは育ったのでした。コサックに伝わる荒野で生き延びる知恵を受け継いで、10歳のビクトルは1000キロを踏破したのでした。しかし、コサックは歴史の中で迫害されて、ちりぢりになってしまい、コサックの伝統も失われてしまいました。日本にいると実感がわきませんが、中国やロシアでは部族間の血で血を洗う争いがずっと続いているのですね。

全14件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1951年、北海道室蘭生まれ。ノンフィクションライター。法政大学卒業後、フリーライターとして各新聞・雑誌で活躍。著書に『たった独りの引き揚げ隊‐‐10歳の少年、満州1000キロを征く』(角川文庫)、『孤高の名家 朝吹家を生きる‐‐仏文学者・朝吹三吉の肖像』(KADOKAWA)、『ハルビン新宿物語‐加藤登紀子の母 激動の半生記』(講談社)、『生きる力抱きしめて‐孤児だった医師・宏の青春』(毎日新聞社)、『「喪」を生きぬく──30人に学ぶ死の受け入れ方』(河出書房新社)など。

「2019年 『いのちの再建弁護士 会社と家族を生き返らせる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

石村博子の作品

たった独りの引き揚げ隊 10歳の少年、満州1000キロを征くを本棚に登録しているひと

ツイートする
×