ラモーナとおかあさん

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784052015762

作品紹介・あらすじ

「だれも、あたしのこと、すきじゃないんだ」ラモーナのことをだれもわかってくれない悔しさ腹立たしさ。おかあさんに「あなたなしでは、とてもやってけないわ」といってほしいと心からおかあさんを求める気持ち。感受性鋭い女の子ラモーナのなやみはつづく。

感想・レビュー・書評

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  • 『ラモーナとおとうさん』に続き、『ラモーナとおかあさん』。前作で失業中だったおとうさんは、マーケットの仕事を見つけた。

    ラモーナは「7歳半」、なんだか中途半端な年齢で、もうあかちゃんじゃないけど、ビーザスみたいな若いおとなでもない。おかあさんにミシンを使わせてもらうも、なかなかうまくいかず、おかあさんは「何かもっとやさしいものを縫ったらどうなの」と言うけど、「だって、あたし、むずかしいことをやりたいんだもん」!!!

    そんな7歳半のラモーナは、まわりの言動から(だれも、あたしのこと、すきじゃないんだ)と思ってしまったり、あれこれ気がかりがあったり、かとおもうと、うれしくてはちきれそうだったり、こうしたらきっとおもしろいとわくわくしたり、実際にやってみたり(それで失敗したり)。気持ちがふくらんだりしぼんだりするのが少々激しいのは、ラモーナの想像力がゆたかだということか。

    とくにおもしろかったのは「一大髪の毛論争」。思春期にはいった姉のビーザスが、髪の毛を家で切ってもらうんじゃなくて、美容師さんに切ってもらいたいと言いだして、クラスでこんなのあたしだけ、そんなことないでしょう、そのもじゃもじゃ頭はどうするのと、ビーザスとおかあさんが言いあう。

    ビーザスは、いい子ちゃんでいるのにあきあきしたと言う。「あたし、もうききわけのいい、おりこうさんでいるのにあきあきしたの。」「ラモーナは、なんだってすきなようにするのに、あたしはそうじゃない。何一つしたいようにしたことないんだもの。ビーザスは、いつもいつもききわけのよい、いい子でいなきゃならないのよ。」(p.146)

    これにはラモーナもだまっていられない。「そんなことないよ!」「あたし、なんだってすきなようにしたことなんか、いっぺんもないもん。」(p.146)

    しばらくの沈黙のあとに、口を開いたのはおかあさん。「そうねえ、おかあさんも、いいおかあさんでいるのにあきあきしたわ。いつもものわかりがよくて、やさしくて。「たまには、おかあさんも、何かばかなことをしてみたいわ。」(p.147)

    二人の娘はぎょっとして、びっくりして、「たとえばどんな?」とおかあさんに訊く。表紙のイラストは、おかあさんがたまにはしてみたいという「ばかなこと」なのだ。

    ▼「お日さまの照っているところで、クッションの上にすわって、タンポポの綿毛をフッてふきとばしたりってことかしらね。」(pp.147-148)

    ラモーナは、自分もおかあさんと一緒にクッションにすわって、タンポポの種をふきとばしたいと思った。ふわふわした綿毛を青い空にふきとばすことができたら!おかあさんにすりよって、からだをもたせかけたら、おかあさんはラモーナをぎゅっとしてくれた。

    ビーザスが口をはさんで、現実にひきもどす。タンポポをふいちゃいけない、種がとんで芝生におちたら、タンポポは根が深いから抜けない、おかあさんはいつもそう言ってたじゃないと。

    「ええ、わかってるわ」「おかあさんは、そんなばかなことはしないってことよね。」おかあさんがそう言って、ビーザスとおかあさんは冷戦状態に入る。ラモーナは、最初はほんの少しだけ、おかあさんがビーザスに腹を立てているのが、うれしいと思っていた。でもすぐに、だれかの髪の毛のことで、家の中ががたがたするなんて、すこしもうれしくないと思った。

    おとうさんが失業してからフルタイムで働くようになったお母さんは、仕事は好きで楽しいけれどお疲れ気味でもあって、そこに子どもたちがびーびー言うし、言うことをきかないしで、「いいおかあさん」をちょっと降りてみたくなったんだろう。

    でも、いくら威勢のいいことを言って、こうするんだ!とがんばってみても、子どもは思いがけない結果にしょんぼりしてしまったり(お小遣いを貯めて美容専門学校の学生に髪を切ってもらったビーザスもそう)、自分の思い込みにしばられてどうにも動けなくなってしまったりする。

    ラモーナが中心の話ではあるけど、おとうさんやおかあさんの側からも読めて、かならずしも完全ではない親の姿やその事情も垣間見えて、そこがこのシリーズのおもしろいところだと思う。

    (6/16了)

  • 時折思い出しては読み返したくなり、また手に取りました。子どもならではの、原始的な感情の芽生えと、それに上手に言葉をあてがっている感じが、本当に素晴らしいと思います。母親に自分を見てほしい、大事にしてほしい、家族にはいざこざを起こさずに平穏でいてほしいという子どもの気持ちがストレートに、細やかに表現されています。言葉って凄いなと、ベバリイさんと、訳の松岡さんに感謝。

  • 「子どもを本好きにする10の秘訣」>「家族・人間関係」で紹介された本。

  • ラモーナの気持ちが、胸に刺さって泣けました。
    両親がケンカをするとおなかがぎゅっと、硬くなる、って。

  • この本はおそらく、本当に共感しながら何十回と読んだ唯一の本であり、多分私が本当に本を読み始めるきっかけになった本。
    もう大分前に捨ててしまったようでタイトルも何も覚えてなかったのですが、その強烈なインパクトだけは何年経っても色褪せず、先日ようやくタイトルを特定した時には思わず号泣してしまった程思い入れのある作品です。
    「私に家出させたくないんだ!」からの下りは今読んでも本当に幸せで羨ましくて、一緒にわんわん泣いてしまった…本当に大好きな大好きな本です。
    シリーズがたくさん出ている事を初めて知ったので、他のものも近々読んでみようと思います。
    …いつまで経ってもラモーナ一筋なのは要するに、私がいつまで経っても7歳半だから、って事なんだろうなー

  • こどもの頃、どうして大人は私が一人前にものを考えていることに気づかないんだろう?と不思議に思っていた。

    本棚で眠っていたこの本を手にとって、読みふけった、ああ、今の私は昔自分で腹を立てた子どもだったことを忘れてしまった大人じゃないか、とぼんやりおもった。

    どうも人間は自分以外の人間をけいしするけいこうがあるけれど、その軽視の対象が子どもになると突然「当然軽視されるべきだ」ってなるのが不可思議。
    わたしがこどもの頃、何が怖かった?何が楽しかった?どんなふうに気を遣っていた?何が悲しくて泣いていた?そういうものを今の子どもに当てはめて、話を聞いてやらなきゃ。だってこの子はあの時話を聞いてもらえなくて泣くしかなかった私と同じだもの。

    そういう目線を思い出すために、大きな働きをしてくれる本。

  • ラモーナの気持ちに共感しながら読める。ヘンリーくんシリーズはどれもページが進む。

  •  子供と親のすれ違い。兄弟姉妹のすれ違い。それぞれの気持ち。
     きらいなんかじゃないけれど、なんでうまう伝わらないのか。
     子供向けに書かれているようで、自分の心の奥底を見直す機会にもなりそうです。

     全体にシリアス過ぎない。暗過ぎない。明るいユーモアとポジティブな展開にほっとします。

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著者プロフィール

1916年米国オレゴン州生まれ。カリフォルニア大学卒業後、ワシントン大学で図書館学を学び、その後、児童図書館員として働いた。1950年刊行の「ヘンリーくん」は半世紀以上にわたって大人気シリーズ。

「2015年 『ゆかいなヘンリーくん改訂新版 第2期 全6巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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