作品紹介・あらすじ
孝明天皇の謎の死は、近代とともに南北朝の対立をも呼び寄せた。南朝の末裔を主張する熊沢天皇の登場、明治天皇すり替え説の根幹をなす大室家の存在、大逆事件の深層、そして座礁した幻のクーデター…維新成立にひそむ密約と暗号を追う異色ノンフィクション。
感想・レビュー・書評
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よく言われる「明治天皇すり替え」説をさまざまな史料や視点から描いているのですが、
如何せん本当に色々な視点なことと(天皇機関説や熊沢天皇の出没など)資料が膨大、
あと出てきた登場人物の話がどんどん飛んでいくことからすごく難しい………。
歴史好きでもこりゃ難しいなという印象でした。
ただ、支持するかどうかではなく、明治維新=南朝復興説、は面白い。
(前に読んだフルベッキ写真の本も面白く、支持するかとかより面白いなあという印象。)
孝明天皇の死んだ時期って歴史マニアからしたら本当にタイミング良すぎるし(笑)、そりゃ暗殺だなと言われても仕方ないくらいの時期なんですよね。
フルベッキ写真もあれが全て本当とは思わないけど、名だたる偉人が書かれる中で、何故「大室寅之祐」だけはよくわからないのか?
逸話が生まれるのには絶対何か理由や真実があるので、それに迫る歴史学は面白いなぁと
改めて思いました。
それにしても幕末は難しいがやっぱり面白い。
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明治維新とは何だったのかと言う事が書かれている。
明治維新とは南朝の革命だったのではないかと。
そしてかなり説得力のある内容だ。
明治維新とは何だったのか。
もう少し突きつめて調べてみたい。
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天皇の系譜にまつわる大きな問題を取り上げた意欲作だと思うのですが、様々な時代や事柄に唐突に話が展開するために非常に難解なものとなっています。
しかし、タブーに挑戦した内容であり、真実にたどり着けるほどの説得力は残念ながらないものの、独自取材を織り交ぜながらの大変興味深い話がいくつもありました。
明治天皇の先帝である孝明天皇の死の謎をエピローグとして、太平洋戦争後に世上を賑わした南朝の末裔を自称する熊沢天皇の話題から話が展開していきます。
現在の天皇家は北朝系統とされていますが、実は明治維新は南朝革命であったのだ。
孝明天皇は毒殺されたのであり、明治天皇もまた南朝方の末裔と入れ替わったのだ・・・と。
本書にあるように14世紀の南北朝時代の余波が大きく時を隔てて、幕末の動乱に大きく影響を与えたという視点はユニークであり、歴史の醍醐味を感じさせてくれる本でした。
著者プロフィール
大野芳(おおの・かおる)
一九四一年愛知県生まれ。ノンフィクション作家。『北針』で第一回潮賞ノンフィクション部門特別賞受賞。
著書に『近衛秀麿――日本のオーケストラをつくった男』(講談社)、
『絶海密室』『瀕死の白鳥――亡命者エリアナ・パブロバの生涯』(以上、新潮社)、
『8月17日、ソ連軍上陸す――最果ての要衝・占守島攻防記』『「宗谷」の昭和史――南極観測船になった海軍特務艦』(以上、新潮文庫)、
『死にざまに見る昭和史――八人の凜然たる〈最期〉』『無念なり――近衛文麿の闘い』『裸の天才画家 田中一村』(以上、平凡社)、
『天皇は暗殺されたのか』(二見文庫)など多数。
「2020年 『伊藤博文を暗殺したのは誰なのか 安重根と闇に隠された真犯人』 で使われていた紹介文から引用しています。」
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