龍樹 (講談社学術文庫)

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  • 講談社
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感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061595484

感想・レビュー・書評

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  • 龍樹と中論、そして彼の解いた空についての正しき解説書といった
    趣の本。きちんと原典に当たり、わからないことはわからないまま
    提示するという、実に信頼の置ける至極真っ当でぶれない本。

    ただそれゆえに読んでて面白いかどうかはかなり人を選ぶような
    気がしたな。同じ龍樹と中論を扱った本だと前に読んだ仏教の思想
    シリーズの該当巻の方が読み物としては面白かった。

  • 空は縁起のことであり、ニルバーナとは縁起を悟ることだという主張は理解できた。しかしその主張を裏付ける理屈を正しく理解できたとはいえない。

    まだまだ他人にうまく説明する自信がないなあ。

  • 竜樹は大乗仏教の始祖で八宗の祖とも呼ばれているらしい。竜樹は小乗仏教に対して大乗仏教の正当性を主張すべく「中論」を書いた。そして「空(=縁起)」を主張した。つまり、彼の「中論」の大部分は有部(=小乗)に対しての批判(破邪)の書であることになる。そう考えると納得がいく箇所も多いが、そうなると「中論」自身、仏教の「真実」を述べていないのもわかってしまう。有部の論点を批判しているだけで、なんら仏教における「真実」を説明していないからだ。これは縁起論者が特定の意見を持たないことにも影響しているのかもしれない。

    ただ、空の箇所は心に残った。「空(=縁起)」というのは、一般に言われてるように「無」ではない。それではニヒリズムになってしまうし、「色即是空」は全てを否定することに、つまりは仏も否定することにつながってしまう。そうではなくて、空とは無自性性を意味するもので、相互依存によってのみ全て(もの、意識)は存在しているという意味に取らなければならない。その相互依存性、差異を竜樹は全てのものへ広げる。つまり、空でさえも空である(空というものですら絶対的なものではなく、不空との相互依存性にのみ成り立っている)と考える。そして、その結果、空というものを説明することはできない。そして、彼ら(縁起論者)は、特定の意見を持たないというのも、上の空の考え方からわかる。

  • 中村元大先生と仏教史上最大ともいわれる思想家・龍樹の対峙。かなり読み応えがあります。

    ナーガールジュナこと龍樹が説いた、中観思想の中心は「空観」であり、法有の立場をとる説一切有部を痛烈に批判するために、執拗なまでに理論で武装したのかもしれませんね。個人的には、理論で固めるよりも、実践的なものから気づいていけると素晴らしいと思っています。しかしながら中論の内容は言語を超越した凄みがあります。

    ちなみに「中論」項は東京大学の卒業論文だそうです。すごいね。

著者プロフィール

新潟大学人文学部准教授
1977年、東京都八王子市生まれ。1999年、東京都立大学人文学部史学科卒業。2009年、東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学、博士(史学)。
八王子市総合政策部市史編さん室専門員、獨協大学法学部特任助手を経て現職。
著書・論文に、『東京の制度地層』(公人社、2015年、共著)、『新八王子市史 通史編5近現代(上)』(八王子市、2016年、共著)、『新八王子市史 通史編5近現代(上)』(八王子市、2017年、共著)、「1930・40年代日本の露店商業界紙『関西俠商新聞』・『小商人』・『日本商人』について」(『資料学研究』12号、2015年)、「戦災の記憶の継承と歴史資料――長岡空襲の事例に即して」(『災害・復興と資料』8号、2016年)など。

「2018年 『近現代日本の都市形成と「デモクラシー」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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