スロウハイツの神様(下) (講談社ノベルス)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 1601
レビュー : 315
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061825123

感想・レビュー・書評

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  • 「お久しぶりです」
    「今すぐ行くから、そこで待ってて!」

    20代にして死にたかった神様が、幸せを掴み取ることを自分に赦し
    10代にして死にたかった天使が、追いつきたいただ一人の人をひたすら追いかけて
    一方通行と思い込んでいた17年(!)にわたる両想いを、やっと叶える瞬間。

    あまりにも素朴で、飾り気のない言葉として零れ落ちた想いが
    どんな美辞麗句よりも彼ららしくて、ぽろぽろ泣きながら、うれしくてたまらない♪

    「コーキの天使」や鼓動チカラの正体はかなり早い段階で予想できて
    「おお、わかっちゃったかも♪」とワクワクしていたのに
    『ダークウェル』の原作者、幹永舞には、例によってあまりに豪快に騙され

    蔵書の貧弱な図書館に突如として出現するチヨダ・コーキの本、
    駅のホームの待合室に設置された
    薄汚いのに画質はハイパーきれい☆なプラズマテレビ、
    ブランドイメージに拘っているはずなのに、田舎のコンビニの前で
    ひっそりと売られていたらしいハイツ・オブ・オズのチョコレートケーキ、

    という小道具に対して払われた、
    まるで家内制手工業のような地道な努力に至っては
    あまりにも美しい騙し方に加担した司書さんや駅員さんも含めて
    騙されたことがうれしすぎて感謝を捧げたくなり、

    『凍りのくじら』では屈折した少女だったのに、素敵な大人の女性になって
    あの時の父そのままに、生きていく場所に悩むスーを温かく照らす
    写真家芦沢光となった理帆子を、親戚でもないのに誇らしく思い、

    愛する人を守るために壮絶な負けず嫌いを貫いて倒れた環のために
    得意分野を分担し、一度は去ったエンヤまで呼び寄せて
    徹夜しつつ合作原稿を仕上げるスロウハイツオールスターズに
    「夜食作りでも、コピー係でも、なんでもいいから手伝わせてー!」
    と呼びかけたくてウズウズしてしまう。

    「大人になるのを支える文学」、「繋ぎの、現実逃避の文学」と言われてもいい。
    それで救われる人がどこかにいるのなら、というコーキの言葉は
    20代の辻村さんの心からの叫びだったのだと思いながら

    スロウハイツを巣立って更なる進化を遂げたコーキ達のように、
    30代のお母さんとなり直木賞を受賞して、楽しさ半分、苦しさ半分というよりは
    たぶん楽しさより苦しさが勝っているだろう現在の辻村さんが
    いったいどんな風に変わっていくのか
    ストーカースレスレの熱意で彼の天使を見守り続けたコーキを見習って(?)
    ずっと見つめていくぞ♪という決意まで呼び醒まされる、渾身の名作でした!

    • まろんさん
      まっき~♪さん☆

      いえいえ、もしかしたら私が読んでない作品に、もっと読みやすくて素晴らしいのがあるのかもしれないので
      本当にお役に立てたの...
      まっき~♪さん☆

      いえいえ、もしかしたら私が読んでない作品に、もっと読みやすくて素晴らしいのがあるのかもしれないので
      本当にお役に立てたのかどうかドキドキです(>_<)

      でも、無理しない程度に読んでみて、もし読み切れたら
      ぜひぜひレビューで感想を聞かせてくださいね~♪
      2012/09/02
    • kwosaさん
      まろんさん!

      本棚に花丸とコメントをありがとうございます。そちらにも返事を書かせて頂いています。

      初めての辻村深月さんでしたが、まろんさ...
      まろんさん!

      本棚に花丸とコメントをありがとうございます。そちらにも返事を書かせて頂いています。

      初めての辻村深月さんでしたが、まろんさんを信じて良かった(勝手にすみません)。
      まろんさんの本棚に大量にある「辻村ブランド」
      これだけ推してあるのだから間違いないだろうとは思っていましたが、やはり初めての作家さんというのは期待と不安が入り交じるもので......

      でも、これからは辻村深月さんを追いかけていきます。
      『スロウハイツの神様』のあとはコレ、というのはなにかありますか?
      やっぱり講談社文庫で刊行順というのがいいんですかね。

      あと余談ですが上下巻の表紙はそれぞれ、芦沢光の「昼バージョン」「夜バージョン」をイメージしているのかな? と、ふと思ったのですがどうなんでしょうね。
      2013/03/19
    • まろんさん
      kwosaさん☆

      今、kwosaさんの本棚に伺って、素敵なお返事を読んで感激してきたところです。

      kwosaさんの「辻村さん作品デビュー...
      kwosaさん☆

      今、kwosaさんの本棚に伺って、素敵なお返事を読んで感激してきたところです。

      kwosaさんの「辻村さん作品デビュー」のお手伝いが少しでもできたのなら
      こんなにうれしいことはありません。
      本棚にいっぱい並べた甲斐があったというものです♪

      辻村さんの本は、登場人物がかなり複雑にリンクしているので
      刊行順に読むのが一番オーソドックスな楽しみ方だとは思うのですが
      せっかく『スロウハイツの神様』から読み始めたのですから
      だんだん遡って、「ああ、あの人の少女期、少年期はこうだったのか!可愛いのう。」
      と目を細めながら読むのもまた楽しいかもしれません。
      そうなるとやはり、芦沢光つながりで『凍りのくじら』でしょうか。

      ちなみに、私が辻村さん作品で一番好きなのは『名前探しの放課後』なのですが
      この作品もまた、『ぼくのメジャースプーン』とも『凍りのくじら』と深く関わっているんですよね。
      デビュー後すぐの2作は、『スロウハイツの神様』に較べるとかなりダークな味わいなので
      また違った印象を持たれることと思います。
      でも、辻村さん作品についてのkwosaさんのレビューが読めるなら、
      もうどの作品でもかまいません!ぜひぜひ読んで、そして書いてください!

      表紙のこと、ぜんぜん気づいていなかったので
      kwosaさんのお言葉で、「おお、まさに!」と思いました。さすがだなぁ、とうれしくなりました。
      いろんな版がありますけれど、私はこの表紙がいちばん好きなので、
      気づかせてくださって感激です♪



      2013/03/20
  • 作者20代後半の作品、いまの「かがみの孤城」に繋がる箇所が沢山あるように感じながら読了。新進脚本家の赤羽環がとある老人から貰ったらしい旧い元旅館の建物を自分のメガネに叶った近しい住人たちに格安で賃貸している。それぞれが各自の夢を模索し追い求めているけどなかなか壁を越えられない。そんなこんなの過程で真の大切なものが分かります♪ 作者の製作姿勢や思考が投影されているように感じながら読めました。

  •  本当にある世界をみているような感覚だった。読み終えてもなお
    チヨダコーキ、環、正義、狩野、スーそして黒木が頭のなかにいる。

     実はコーちゃんがあの子を好きで、高校生のころのあの子に何かできないかと、
    していたことも感動ものだったし、最後の再会もあたたかい。
     すばらしいラストだった。

  • 上巻にも増して読書スピードが上がったのは、それだけ物語にぐいぐいと引き込まれた結果だと思う。
    上巻に散らばっていた布石が次々と回収されていくさまは見事と言うほかない。
    あぁ、あの出来事にはこういう理由があったのか、って。

    公輝は「天使ちゃん」のことさえ全部知っていた。
    その上で、表情をひとつも変えずに全てを受け止め受け入れることのすごさ。
    やっぱり彼は、スロウハイツの神様だったということだ。
    最後の終わり方も爽やかで本当に良かった。

    今までに読んだことのある辻村さんの作品では、(年齢の所為もあるかもしれないけれど)少し女の子の感情過多と不安定さが目立っていたからか、環の筋が通った激しさには、好感がもてる。

    オチが判ったところで、もう一度最初から読み直したらまた違った楽しみ方ができそう。

    • 永遠ニ馨ルさん
      こんにちは。
      コメントありがとうございます♪

      赤羽姉妹と公輝の回想は本当に切なくて、私も涙が溢れて止まらなかったです。
      読みながら、違う目...
      こんにちは。
      コメントありがとうございます♪

      赤羽姉妹と公輝の回想は本当に切なくて、私も涙が溢れて止まらなかったです。
      読みながら、違う目線で語られたはずのそのシーンがもう一度甦ってきて。
      こういうのを「点と点が線でつながる」って言うんですね。
      2012/07/03
    • koshoujiさん
      ──「点と点が線でつながる」。
      なるほど。言いえて妙ですね。
      私はそのつながった線をおそらく20回ぐらい往復しました。
      毎回毎回、うる...
      ──「点と点が線でつながる」。
      なるほど。言いえて妙ですね。
      私はそのつながった線をおそらく20回ぐらい往復しました。
      毎回毎回、うるうるしながら。
      一時期はここを読んでから眠りにつくのが日課になってましたから(笑)
      2012/07/03
    • 永遠ニ馨ルさん
      20回も…!?
      だいぶ読み込まれたんですね!
      もしかしたら、部分部分だけでも諳んじること、できるのではないでしょうか?(笑)

      どれだけうる...
      20回も…!?
      だいぶ読み込まれたんですね!
      もしかしたら、部分部分だけでも諳んじること、できるのではないでしょうか?(笑)

      どれだけうるうるしても、あのラストだったら確かに穏やかに眠りにつけるかもしれませんね(*^ー^*)
      2012/07/04
  • 環の箇所はほとんど泣いていたと言っても過言ではない…。
    黒木に対して「こいつロクでもない奴だ!」と思っていたのに、コウちゃんと黒木の過去の会話を読んでいると憎めなくなってしまった。やっぱり親友なんだ。テレビのくだりの「私が、欲しかった」には思わず可愛いなと感じてしまいました(笑)
    上下巻で少し長かった分、より登場人物たちに愛着がもてた。
    コウちゃんは癒し系ですね。
    とてもいい小説でした。

  • 上巻は正直いけ好かないなあと思って読んでましたが、下巻が進めば進むほど真相が明らかになり、最後はバスの中で不覚にも泣きました。こういう愛の形は嫌いじゃない。究極のツンデレかも。別の作品で読んだ人物がここでつながったのも面白かった。今のところスプーンの次によかったなあと思う辻村深月の作品です。

  • 中盤あたりから一気に読めました。
    中盤から最終章でいろんなところがカチカチっとはまって全然ミステリーって感じではなかったですが、伏線回収が秀逸で爽快でした。
    スロウハイツの神様(上)は結構閉塞的な感じだったけれど、これも含めた形での作品だなと思います。
    あえて気になる点といえば、狩野のこと。
    公輝がなぜ、あれは自分が書いたといったのだろうか?
    しかも結構さらっと終わっていた。
    あれは鼓動チカラの作品を完成させるための伏線だったのか?
    それだけ心のこりかな。

    それにしても、いい物語に出会えました。

    • koshoujiさん
      初めまして。フォローありがとうございます。
      それにしてもこの「スロウハイツ」、稀に見る傑作だと思います。
      本を読んだあと幸せな気持ちにな...
      初めまして。フォローありがとうございます。
      それにしてもこの「スロウハイツ」、稀に見る傑作だと思います。
      本を読んだあと幸せな気持ちになれるものなど、そうそうありません。
      辻村深月さん、すごい作家だなと思ったものでした。
      「スロウハイツ」で感動されたのなら、是非彼女の「名前探しの放課後」もお薦めします。
      同じように見事な伏線回収の青春群像劇です。
      2012/07/07
    • namihenさん
      >>koshoujiさん
      コメントありがとうございます。
      どこかで名前だけ聞いてとりあえず借りて読んだので全然期待していなかった分、衝撃も大...
      >>koshoujiさん
      コメントありがとうございます。
      どこかで名前だけ聞いてとりあえず借りて読んだので全然期待していなかった分、衝撃も大きかったです。
      「スロウハイツ」が面白かったので辻村深月さんの作品は少しづつ読んでいこうと思います。
      おすすめの作品も楽しみです。
      2012/07/07
  • スロウハイツの下巻。後半が凄いです。とにかく伏線を改修しまくってます。
    上巻で「ふ~ん、そうなんだ~」くらいに印象付けたエピソードには実は裏があって……という展開。
    電車の中で読んで、目的地に着いたにもかかわらず折り返して5駅程戻るまで気が付かないくらい集中して読みました。
    人間関係を主軸にしたミステリ風味です。

    読んでいて何となく「作者の辻村さんは、きっと思い入れいっぱいで書いたんだろうなぁ」と思いました。
    大切に書かれているのが伝わってきます。

  • もう、やられたよ(泣)

    最後のコーキの内容だけで、全部持っていかれたよって感じ。

    環は我が強くてちょっと苦手な存在だったけど、内面は一途で純粋な人なのよね。

    憧れだったコーキと同じ位置までいけた努力は素晴らしい。


    他のスロウハイツのメンバーも、いい人ばっかりだけど、やっぱりコーキは凄い。

    辻村さんの本は、最後にいっぱい感動が来るから好き。

    上・下巻の感想。

  • 最終章の伏線回収がすごいよかった!チヨダコーキと赤羽環はすごい繋がりが深い。作品から受ける影響や作品を通してチヨダコーキを好きになるところとか憧れのチヨダコーキをスロウハイツに呼んだりして、すごいロマンティックだった。
    でも、家族のこととか事件のことで苦労がたくさんある。だからこそラストシーンはやられた。

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著者プロフィール

辻村深月(つじむら みづき)
1980年山梨県生まれ。千葉大学教育学部卒業後、2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。2011年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、2012年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、2017年『かがみの孤城』で「ダ・ヴィンチ ブックオブザイヤー」1位、王様のブランチBOOK大賞、啓文堂書店文芸書大賞などをそれぞれ受賞。本屋大賞ノミネート作も数多く、2018年に『かがみの孤城』で第6回ブクログ大賞、第15回本屋大賞などを受賞し、2019年6月からコミック化される。他の代表作に『子どもたちは夜と遊ぶ』『凍りのくじら』『ぼくのメジャースプーン』『スロウハイツの神様』『名前探しの放課後』『ハケンアニメ!』『朝が来る』など。新作の度に期待を大きく上回る作品を刊行し続け、幅広い読者からの熱い支持を得ている。2020年、河瀬直美監督により『朝が来る』が映画化される。

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