- Amazon.co.jp ・マンガ (364ページ)
- / ISBN・EAN: 9784061859937
作品紹介・あらすじ
昭和20年3月3日、南太平洋・ニューブリテン島のバイエンを死守する、日本軍将兵に残された道は何か。アメリカ軍の上陸を迎えて、500人の運命は玉砕しかないのか。聖ジョージ岬の悲劇を、自らの戦争体験に重ねて活写する。戦争の無意味さ、悲惨さを迫真のタッチで、生々しく訴える感動の長篇コミック。
感想・レビュー・書評
-
終戦の年、1945年にニューブリテン島に派兵された500人の日本軍部隊の物語。水木しげるさんの実際の体験をベースに描かれた作品。水木さんの部隊は、この島でアメリカ軍の上陸を迎え撃つことになる。
戦争そのもの、実際の島での軍事活動・戦闘、どれも悲惨な話だ。
更に悲惨でやり切れないのは
■アメリカ軍との圧倒的な戦力差。この島を守れる戦力を持たないまま任務遂行を強いられること。
■兵士が玉砕攻撃を強いられること。生き残った後、捕虜になることは許されず、再度の玉砕、或いは、自決を強いられること。
■一番ひどいのは、ニューブリテン島を守ることに、戦略的な意味合いがないこと。
といったこと。
そういったことを胸に秘めながら、水木しげるさんは、島で起こったことをあるがままに描かれている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者の実体験に基づく戦記漫画はとても貴重な歴史資料でもあると思う。
記録と伝聞だけでは本当の戦争は伝わらないであろう。
戦争を知らない私たちに戦争を伝えてくれる人がまた一人この世を去って行ってしまった。
合掌。 -
水木氏は 本人も南方へ出兵したから
かなり リアルに描けている マンガです。
500名もの兵隊が 死守した ニューブリテン島のバイエン。
生き残るのは だめって そんなの ひどいよね。
国同士の争いは 命がけではなく
違う方法で 解決できる方法を 見つけてもらいたいものです。
マンガとはいえ 内容の濃いものですので
出来れば 子どもから大人まで
読んでいただきたい本でした。 -
淡々とした描き方、登場人物の喜怒哀楽がわからない表情などから、余計戦争の怖さが伝わってくる。
みんな玉砕は避けたかったんだよね、やっぱり、
とか、ラバウルといえばうちのじいちゃんも…など、当時の人々の心情や生活を思い浮かべながら読んだ。歴史では日本全体が戦争に突き進んだ、異議はとらえられなかったと教わったけれど、やはり戦争の意義に疑問を持ったり、反抗したりした人々もいたのだと当時のリアルな世界を知った気になった。
本作は水木しげる展に行って、原稿の展示を見るまで存在を知らなかった。水木先生ならではの表現で、グロい場面もありながら戦場のことを教えてくれる。 -
「昭和二十年夏、僕は兵士だった」を読んでここに辿り着きました。
水木しげるさん、もちろん知っていましたが、描かれたものを読んだことは一度もありませんでした。
絵のタッチが苦手、というのがその原因です。
でも今回はそんなこと言っていられない。
少々、どれが誰なのかわからなくなりますが、そんなこと全然気にせず読めます。
ずーっと流れる「俺たち何やってんだろ感」。
ごくごく一般の兵士たちは、ホントにこんな思いだったのかもしれません。
「日本国を守ってる!」って気持ちになんて、なれないよなあ……。
そしてやっぱり、戦時中の「偉い人」のほとんどはバカだな。
玉砕したーって報告したのに生きてたー、そしたらさっきの報告が嘘になっちゃうじゃーん、全員死んでもらわなきゃあ!
って、なんでそうなる!!
今だったらギャグにしかならないことを、真剣に、平気でやってんだから怖い。
原田宗典さんだったかなあ、昔エッセイで、「日本のおばちゃんのパワーはすごい。戦争してるところに、おばちゃんたちをたくさん派遣して「アンタたち、バカなことやめなさいよ」って言わせたら、戦争なんてなくなるんじゃないか」って書いてたけど、本当にそう思う。
軍医の人が訴えてた言葉が染みました。 -
永久に語り継がれるべき戦争漫画。水木先生によるリアルな背景画は多作品同様だが兵士の死顔にもリアルになる仕様。悲惨な話の中にある種のユーモアも入っているが人死が多すぎて麻痺している可能性もある。ワニに上半身を喰われる、処理できないくらい大勢押しかける兵士たちの相手をさせられる女性達、瀕死ながらも生きているのに形見として指を切られて置き去りにされる兵士、ほっぺたにハエの卵を植え付けられる…。全て記載したらキリが無いが無意味な拠点のために兵隊の生命がゴミ屑のような扱いで散っていく前に皆で歌う場面は胸を打った。
極限状態における人間心理を描いた面でも不朽の名作。 -
水木独特のストーリー展開と絵が新鮮かつリアル
-
水木は人間の本能に正直で、食うことばかり考えていて、どこか飄々として生き延びた者のように描かれているが、壮絶な体験は「そこまでして、守るべき場所だったのか」は、今も通ずるメッセージだと受け取った。