紫苑物語 (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061960442

作品紹介・あらすじ

優美かつ艶やかな文体と、爽やかで強靭きわまる精神。昭和30年代初頭の日本現代文学に鮮烈な光芒を放つ真の意味での現代文学の巨匠・石川淳の中期代表作-。華麗な"精真の運動"と想像力の飛翔。芸術選奨受賞作「紫苑物語」及び「八幡縁起」「修羅」を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 紫苑物語…この男はダークヒーローだ。悪い男だ。自らを魔神とし、ほとけに矢を射る。身の破滅に嬉々として堕ちる。男は闇のようでもあり、炎のようでもある。魔に魅いられた男の宿命を、美しい文章が昇華させる。

    八幡縁起…躍動感溢れる神話。神話から歴史へと脈々と紡がれる物語。気高い山々が紙面から迫ってくる。

    修羅…鬼のような女、ダークヒロインだ。女に、この世に生きる道を示した一休宗純。女の妖しさに魅いられる男。悪事へと力を染める足軽。足軽を利用して富を得ようとする公卿。アウトローな人間たちが乱世を駆け抜ける。それは、清々しいほどの悪鬼たちの姿。
    一休宗純と新左衛門のやり取りが、かなりツボ。
    いちばん、面白く読めた。

  • 再読。

    最初に読んだ時からかなりの時間(30年くらい昔)が経つ故に、ほぼ初めて読んだように向きあった。

    若かりし日に読んだ時の印象は、著者の他の純文学作品と比較して読みやすいな、ぐらいのものだった。改めて読むと、熟練の技とでも言いますか、洒脱な文章に舌を巻く気持ち。この味は、外国語に翻訳するとリズムとコクが再現できないだろうな、などと考える。

  • あ…ありのままに今起こったことを話すぜ…

    『学校の課題で糞つまらん文学作品を読まされていたと思っていたが
    いつの間にかカッコよすぎて言葉を失っていたッ!』
    美文とか漢籍の素養とか
    そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
    もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

  • 再読。時代もの幻想エンタメ3作収録。どれも面白かったけれど、好みは「紫苑物語」かな。弓矢で獣のみならず人まで射殺しまくり血の流れた跡に紫苑を植えさせる男の狂気。狐との異類婚姻譚でもある。

    「八幡縁起」は白蛇との異類婚姻譚でありつつ、数世代にわたってその一族の末路が語られる。途中でちょっと金太郎さん出てきた。貞光も四天王の一人だっけ。

    「修羅」は群盗の総領におさまっちゃうお姫様がかっこいい。こちらは一休さん出てきた(笑)蜷川新左衛門?新右衛門じゃなくて???

    いずれも、一種のアウトローのような人々のユートピア幻想と革命幻想が散りばめられているのが共通。

  • 歌詠みの家に生まれた宗頼、才能は豊かだが心に鬱屈したものを抱え、辺境の地に追いやられる。人を憎む狐の化身である美女を手に入れた宗頼は邪魔者を殺し続け、その跡には死者を想う紫苑が植えられた。そしてついに魔の矢により地上を焼き尽くす。
     / 紫苑物語

    山の岩戸に住む石別(いしわけ)一族は、里の人々と適度な交流を持って独自の生活を成り立たせていた。しかし里の支配者は彼らの名なしの神を奪い征服しようとする。いつしか名なしの神はその由来を大きく書き換えられ、八幡大菩薩(源氏の氏神)になる。
     / 八幡縁起

    人から外れた胡摩姫(コマ=駒=馬)と、山賊、足軽、盗賊たちを通して日本の起源を描いた物語
     / 修羅 

  • 「俗謡というにはあまりに格調が高く、民話調とよぶには洗練されすぎている。ゆったりと流れ、読む人を深く酔わせる。文章の奥にそんな独特の語りのリズムが聞こえる。」
    (日本語研究学者 中村明)

  • ①文体★★★★★
    ②読後余韻★★★☆☆

  • ・紫苑物語と八幡縁起は、なんとなく中途半端に終わっている感じ。小説はいつ終わってもよいという考えのもとに書かれている?
    ・修羅がまとまって終わっている感が強かった。

  • 著者の作品を初めて読む。文体のリズム良く、音楽を聴くように読める。私の、少ない読書体験から近いものを選べば半村良氏。フィクションだからこそ、歴史を引き寄せて想像出来る。


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著者プロフィール

作家

「2020年 『石川淳随筆集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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