死霊(3) (講談社文芸文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061983281

作品紹介・あらすじ

黙狂の矢場徹吾が遂に口を開く。"決していってはならぬ最後の言葉"を語り始める第二の山場。そして翌日の昼、主要人物が一堂に会する津田安寿子の誕生祝いの席上、果して何が起こるのか。七章から最後の九章までを収録。精神の"無限大"をつきつめ、文学の窮極大飛翔をはかった傑作、埴谷雄高の『死霊』は幕を閉じる。だが、埴谷が生涯かけて追究した"存在の革命"は未来へ託された-。

感想・レビュー・書評

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  • 埴谷雄高 「 死霊 Ⅲ 」


    最終巻でも 著者の思想体系は掴めなかった。ドストエフスキー的な面白さを感じるのは 1章から5章まで。7章以降は苦痛だった。


    序章やエピグラフとの関係なく 完結した感じ。妄想を広げるだけ広げた実験小説かもしれない。


    埴谷雄高の思想を体系化した本があったら読んでみたい

  •  確かに読み辛いが、無茶苦茶面白かった、というのが率直な感想である。長過ぎるように思われる個々のセンテンスも読み進めるうちにクセになってくる。

     最近、熊野純彦が『埴谷雄高――夢見るカント』という本を出したが、“夢見るカント”とはまさにこの作家の資質を言い表していると思う。埴谷雄高の文学は、「人間はおろか、あらゆる生物、あらゆる存在が夢を見ているのではないか」という妄想から出発しており、カントの超越論的弁証論のその先を夢想する文学だからである。

     確か、寺山修司だったと思うが、かつて青年だった大人が恐れるべきなのは、青年の時のおのれの視線である、というような意味のことを書いていた。その意味で、埴谷はその言葉になんら抵触することのない生涯を貫いたといえるだろう。作家は、青年期に抱いた、宇宙と自己についての疑問を「自同律の不快」と「虚体」という言葉を使って、この作品の中で一生追究し続けたからである。

     50年以上も書き続けて、ついに未完に終わったのは、この作品の持つテーマの巨大さゆえ仕方ないとも思われるが、残念でならない。あと50年あれば!、必ずや完成していたであろう。最後に、釈迦と大雄(ジャイナ教の始祖)の対話を構想していたとのこと。読みたかった!

     『死霊』は全9章より成り立っているが、山場といわれる5章と7章は、圧巻というほかない。未完であるが故の本作品の欠陥を補って余りある。『死霊』は、―もしこんな気障な言い方が許されるとすれば―今も世界文学の中で、燦然と暗黒の光を放ち続けているように思われる。

  • 読んだのは、はていつだったか‥‥ 昔々のこと

  • 巨人の形而上小説。20年ぶりに再読。虚体のこと以外考えられなくなってしまった男たちとそれに振りまわされる女たち。ユーモラスな場面を挟み油断させておいて、突然激しく読者を叱責する。分裂の気質。
    4兄弟は、現実には生きていけないはずなのに動き回り、激しく沈黙を貫き、一転冗舌に虚について語り尽くす。その存在自体が虚無。思索することは面白いのだということを思い出させていただいた。
    前回よりも理解できたと思うが、もう一回読みたいものだ(そんな機会があるだろうか)

    ドストエフスキー、プルーストが苦手と言う方にはおすすめできません。

  • 昔読んだ本

  • カントの影響や露骨な反出生主義が楽しいけど、個人的にドストエフスキーが好きじゃないのでこれもあんまり好きじゃなかった。作品としては優れていると思うけど、ただ合わなかった、好みじゃなかった、というだけ。

  • 2003-04-00

  • 第3巻には第7章〜第9章を収録。
    結局、『死霊』は未完に終わったのだが、ラストシーンはこれはこれでアリ。尻切れトンボという印象は拭えないが、いずれにせよ主題自体がそう簡単に結論が出るものではないので、敢えてここでおしまいにするというのも方法のひとつだろう。

    1〜3巻纏めて。
    生と死、宗教、如何に生きるか、人間とは何か、思想とは……等々、普遍的なテーマを延々と議論している本書は、『1人の人間のインナースペースを小説という形で外部からのアクセス可能にしたテクスト』とも読める。というかそう読んだ方が個人的にはしっくりきた。

  • 1巻くらいの地に足のついてる感じが丁度良かったかなあ…。

  • 『ぼくらの頭脳の鍛え方』
    書斎の本棚から百冊(立花隆選)94
    日本文学
    個人的な思い入れもある一冊。

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