中原の虹 第一巻

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062136068

作品紹介・あらすじ

英雄たちが、大地を駆ける。
隠された王者の証「龍玉」を求めて、壮大な冒険が、いま幕を開ける。
人間の強さと美しさを描ききった中国歴史小説、刊行開始!

「鬼でも仏でもねえ。俺様は、張作霖だ」
「汝、満洲の覇者となれ」と予言を受けた貧しき青年、張作霖。のちに満洲馬賊の長となるその男は、大いなる国の未来を、手に入れるのか。
栄華を誇った王朝に落日が迫り、新たなる英雄が生まれる。

第42回吉川英治文学賞受賞

感想・レビュー・書評

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  • 『蒼穹の昴』の続編。張作霖を描く。日本では馬賊の親玉程度の扱いしかないが、中華四億の人民の貧困や飢餓をなくそうとする志をもった人物と描かれる。日本軍の傀儡の軍閥というイメージがあるが、愛国者と描かれる。張作霖の印象が変わる。

    『蒼穹の昴』では喪失されたままになっていた龍玉を手に入れ、息子の張学良に渡す。張学良は第二次国共合作実現の立役者である。皇帝にはならなかったが、中国の行く末に影響を与えた人物である。龍玉の持ち主の力があったとするならば興味深い。

    愛新覚羅溥儀の継承は、当人が幼少であったことは別として、家系図から見れば順当に見える。しかし、当時の人々にとってはサプライズであった。

    袁世凱は御都合主義者・権力亡者に描かれていたが、それだけでない面も出てくる。これが一貫性を持ったキャラクター造形になるかが問題である。史実では袁世凱は中華帝国皇帝を宣言した。まさか龍玉を手に入れたとは思えない。どう描くのか気になる。

  • 『蒼穹の昴』からなる中国歴史シリーズの3作目となる本作品は清朝が滅亡する時代の物語。
    主人公は張作林だが、1作目のメインだった清朝関係の人物も多く登場するので、ファンとしては続編らしさがとてもうれしい。この作品から読み始めても充分面白いだろうが、やはり1作目を読んでから読み始めてほしい。
    けっこうな長編であるがさすがの筆力で一気に読める。著者は人物描写が抜群に優れているので、各人物への感情移入が忙しい。いわゆる“泣かせ”が苦手な人にはわざとらしく感じる箇所も多いかもしれないが、壮大な物語の一部だと思えばそれほどでもない。
    シリーズ全般の魅力は、基本は史実に基づいているが細部にリアリティが溢れておりどこまでが本当かわからないところにある。

  • 浅田次郎さんの近代中国(清朝末期~張作霖爆殺事件あたり)もの。『蒼穹の昴』、『珍妃の井戸』、本作、『マンチュリアン・レポート』と続くが、ばらばらに読んでしまった。が、それぞれの作品単独でも面白さは十分に味わえる。

    学校の歴史の授業での張作霖と言えば、たった一言『1928年張作霖爆殺事件』で終わるが、歴史の背後には、人をめぐる熱いドラマがあるということを感じさせてくれる。

    もちろん、これはノンフィクションではないが、若き満州馬賊の総攬把(ツォランパ:大親分)張作霖を軸とする清朝末期のロマンが溢れている。

    浅田さんの文章は、読んでいて心地よい。リズムがいいのだと思う。

    全4巻のうち、まだ1冊を読了したばかり。じっくりと読み進めたい。

  • 蒼穹の昴シリーズ。張作霖が登場。王朝が衰退していく一方で、新たな時代の幕開けを感じる物語。

  • 圧巻‼️‼️‼️

  • 「蒼穹の昴」第三部。張作霖の卦。
    李春雷が張作霖に出会い、五当家(No5)となってゆくまで。張作霖が「龍玉」を手に入れる件は「勲は民の平安」という錦のもと、彼の行動に正義があるとの象徴か?同時に、立ち会った春雷に対して「消せない過去」への向かい方を示しているのか?
    印象的なフレーズは下記。
    ★「おめえは貧乏人の底力ってえのを知らんらしい」
    ★「正義は数や銭で決まるものではない。たった一人で世界中を敵に回しても、正義は正義だ。」
    ★「汝の戦いは未だ始まってはおらぬ。これから始まる。」
    ★「これで俺は、満州の空や風が一等好きになれるさ。…。まだしばらくは、白虎張の子分でいられる」

  • この巻は張作霖とその壮士である李春雷の馬賊として酷いことをしていた話である。人を殺すことをなんとも思わなくなるとはどういう感覚をしているのだろうか?中国人の人なりを淡々と描いているところは浅田氏の凄い筆力だ。官僚は権力をかさにして民衆を抑圧しているところは今の共産主義体制そのものだと思う。次巻では春児が活躍するのだろうか?人の好い登場人物が出てきてほしいと切に願う。

  • 【読了メモ】(150120 16:30) 浅田次郎『中原の虹』(一)/講談社/2006 Sep 25th/ただ一度会いたい、を、こんな形で叶えるものなのか…。しかしマァこれは私の感覚だ。世の中何もかも、ただそれとしてあるだけなんだろうし。

  • 素晴らしい作品です!!
    馬賊の張作霖、西太后の死、袁世凱の野望、そして越過長城まで。特に第四巻後半の兄春雷が将軍という立場を弁えながら、弟春児、妹玲玲に再会する場面には落涙。蒼穹★5.0、珍妃★4.8、中原★4.9。次はマンチュリアンへ。シリーズが読了したら、すぐにでも蒼穹から読み返したい気分です。引用候補もたくさんありますが、厳選してUPします。【第42回吉川英治文学賞、おくダマ賞2015】

  • 清の時代が終わろうとするとき、他国の植民地支配を避けるために西太后が秘密裏に策を講じていく。最後がかなりあっさり終わってしまうところが残念。龍玉がどこへ行ったのか書いてほしいなと思う。

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

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