- Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062160186
感想・レビュー・書評
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性比のアンバランスが超音波検査の普及によって蔓延していることを知る。手段が与えられた時の行動が、ほとんど文化に依存しない共通性があることに戦慄する。
例示された中で米国だけが女児を選んでいるが、本質的な差はないと感じられた。
アジア東欧を中心に、男児を選ぶ文化圏が広がり、結婚難、国際国内の人身売買が起きている。その状況も酷いが、産み分けの実行者とさまざまな意味での被害者がずれているところに、罪の深さを感ずる。
この産み分けが、西欧による地球人工抑制策から始まり、その手段として始まったことに戦慄する。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
男女産み分けができるようになった結果、男性が多く生まれることにより起こっていることを著した本。
調べたことを、調べたように書いているのだが長い。
もっと端的に書いてくれたら読みやすいと思う。
また、翻訳したものに割と多いのだが、訳語調で理解しずらい文章が散見され、これも読む気を阻害する要因となっている。
ななめ読み。
この本では、中国・韓国で至近に至るまで、女性の人身売買が大規模に行われていることが著されている。
これが事実であれば、昨今の「従軍慰安婦」問題を世界に問う韓国の動きは、ちょっと解せない。(解せないことをする国なのかもしれない)
私が見聞きする情報はほぼ日本語のものに限られているため、韓国に関する情報に関していえば、ある程度日本のマスコミのフィルターがかかったものなんだと思う。
それが、右傾的な傾向のものであっても、左傾的な傾向のものであっても。
英語をもう少し勉強して、世界でどういった議論が行われているかということを知る必要があるのかな。と思った。 -
視野が日本のライターさんでは逆立ちしても見通せないほどグローバルで、分析が実に学際的。その手際はなんともしなやかで、章立てもとても工夫されている。国際紛争といったら軍事や経済、宗教、資源をめぐる争いだと思っていたら、男女比のアンバランスが深刻な火種を抱えているとは思ってもみなかった。
それにしても皮肉に満ちた話だ。
・明るい家族計画のはずが、人口問題の「最終的解決」に至り、ひいてはテストステロン過剰な男どもによる殺伐とした暴力世界を生むという皮肉。
・日本占領中に、共和党員で筋金入りの保守派の指導者たちが、左派顔負けの日本国憲法を作り、熱心に中絶を推し進めるという皮肉。
・米のフェミニストが世界で産み分け禁止を唱えれば唱えるほど、本国で中絶自体を禁止しようとする世論が盛り上がるという皮肉。
・日本は世界で初めて人口抑制政策の実験場になったのに、産み分けの次のステージで先頭を走っているのは韓国であるという皮肉。
・荒くれ者の西部開拓者がルーツとされ、最も暴力的な先進国であるアメリカが、近い将来女だらけになるかもしれないという皮肉。
訳文はとても読みやすく、原注をPDFにして厚みをなるべく抑えようという配慮が見られるのは好感が持てるが、あとがきになぜ日本における性比の現況が触れられていないのか理解に苦しむ。 -
男女の産み分けが世界的にこんなに行われ、男女比の差が拡大しているとは思ってもみなかった。男女産み分けが、自分の家庭だけの問題ではないとは、考えずらいのかもしれない。男女比だけでなく、「子供を持つ」という事に倫理的問題が多くなってくる。
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男女の性比をめぐる歴史。これほど密度の濃いルポはめったにありません。どこから読んでも驚愕の史実ばかり。必読。とにかく男が多くても、女が多くても世界は不健康でしかない。
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図書館の新刊コーナーにあったので手に取りました。
なんとなく世の中は女性が増えてるようなイメージがあったのですが、
逆だったとは・・・しかもその原因が・・・そして女性減で性比不均衡になった社会がたどる道は・・・
一読の価値ありです。 -
実地に渡るたくさんの調査が偏らずいろんな論点を提起しており、なかなか貴重で、非常に興味深い。自分の家族だけがいいとする判断が数が増えて、男性に偏る社会になると、さまざまな犯罪の温床になり、果ては戦争の原因にもなる。
インド、中国の実状がよく分かった。
逆に女の子を選ぶデザイナーベイビーも親のエゴが子どもの将来を制限、コントロールしかねないと警鐘を鳴らす。 -
なかなかおもしろい!前半では出産性比の上昇を悪しき慣習や途上国特有の問題と一蹴しない著者の視点が新鮮だ。例えば18世紀末のインド。イギリス東インド会社による支配統治が進む中、著者は当時問題となっていた女児殺しと新たな徴税システムの導入との関連性を紹介している。新たなシステムの導入はカーストをも圧迫し、それまで比較的不自由なく暮らしていた上層階級の人々に、地位と土地を維持するための新しい戦略を考え出させた。その一つが「家族構成」だった。娘をもつ親は、高い持参金を払わねばならず税が上がったために土地を失いかねない。娘をつくらないことが自分たちの富を守る一つの方法だと判断してもおかしくはない。女児殺しの背景には上昇婚だけではない、不公平な経済政策が絡んでいたことを統計は示している。このような傾向は男女に対する固定観念、技術向上等と併せて近代でも多くみられており、その不均衡がもたらす弊害は決して無視できない。しかし世間は出生率の低下は認めるものの出生性比の上昇(それがもたらす危機)には頑なに目を向けようとしない。問題を一時的な現象と片付けるのは早計だろう。(余剰男性の暴徒化、売春、外国花嫁etc.の問題)
著者は産み分け中絶が広がる背景を、過去から現代までの幅広い事例から探っており、事態の深刻さが知れる。
機会があれば再読したい。おすすめ!