真昼なのに昏い部屋

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062161053

作品紹介・あらすじ

会社社長の夫・浩さんと、まるで軍艦のような広い家に暮らす美弥子さんは、家事もしっかりこなし、「自分がきちんとしていると思えることが好き」な主婦。大学の先生でアメリカ人のジョーンズさんは、純粋な美弥子さんに心ひかれ、二人は一緒に近所のフィールドワークに出かけるようになる。時を忘れる楽しいおしゃべり、名残惜しい別れ際に始まり、ふと気がつくとジョーンズさんのことばかり考えている美弥子さんがいた-。

感想・レビュー・書評

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  • ”どこから、彼に恋に落ちたというのだろうか。”

    主人公、美也子さんは
    夫浩さんと二人暮らし。
    比較的裕福な家庭で
    自分らしい生活を過ごしていた。

    たくさんの来客が集う家に、
    一人の男性が心を染めていく。

    ジョーンズさんとのフィールドワークが
    彼女を変えていく。

  • 女性が恋に落ちる様子を描いている。
    第三者視点、ですます調、人物はさん付け。
    客観的で、事実を端的に表してる。冷たさも感じるが、表現が美しく見える。

    不倫が始まるのにそれをら楽しみにも思ってしまう。一般的に?現代日本で不倫はよくないものとわかっているが恋をするのはどうしたって楽しく、美しく、無邪気で、残酷なのかもしれない。

    真面目でよき妻で世界の外にでていない美弥子さんは小鳥のようとジョーンズさんは言ったけれど、離婚に向けて準備を始め、町からいなくなった、でもいつでも会える彼女は小鳥ではないようだ。

  • 江國さんの、丁寧でどこかふわふわした感じの描写が心地良かった。真昼の、太陽の光が差し込む少し眩しい時間帯に読んでみた。

    美弥子さんが、ジョーンズさんとのことを無意識に正当化しているようなところが自分に似ているなと思った。美弥子さんが時折見せる、夫への皮肉じみた心の声も好きだった。

  • 主婦の美弥子さん。
    子供っぽい夫を愛し、子供はいないが家事を完璧にこなしつつ、それなりに満ち足りた日々を送っていた筈なのに、外国人のジョーンズさんと出会ってから胸のときめきを覚える。

    恋愛でなく親愛の情として男性を大切に思う事は罪でしょうか?彼女がしたのはただのフィールドワーク。散歩です。

    それは、頻繁でしたし、手をつないだり恋人のように見える事もあったかもしれませんが、あくまでも友人関係だった。

    なのにそれを誤解した夫が話も聞かずに喚き散らすから、美弥子さんは家を出てジョーンズさんの元に行き、男女の関係になってしまった。

    最後、離婚の準備を始めた美弥子さんにジョーンズさんも興味を失っていく。男の勝手さが頭にくる。

  • 恋が始まる時ってこんな感じだったな、と思い出す。
    そして、こんな風に馴れて行くんだなとも。
    美弥子はとうに恋の仕方を忘れていた。まっさらだった。だからこそジョーンズさんには可憐な小鳥のように映ったんだろう。


    この一節が好き。

    まったく驚くべきことでした。ジョーンズさんといると、一日ずつが新しいということや、世のなかにはいろいろな人がいるということ、色が溢れ音が溢れ匂いが溢れていること、すべて変化するということ、すべての瞬間が唯一無二であること、でもだからこそ惜しまなくていいこと、などがこわいくらい鮮烈に感じられます。


    そう、恋ってそんな感じだったよね。五感が研ぎ澄まされる。
    だったよね、ってのは、自分も結婚してそういうのを忘れちゃったから。

  • 表紙が素敵で気になって読んだ一冊。 とっても世間知らずな美弥子さんと、 結婚しているなんてお構いなしにアタックする ジョーンズさんとの不倫の恋のお話。 ジョーンズさんには、結婚という概念がなかったのだと思う。 知らないうちに二人の距離が縮まって。という風に書いてあったけど、計算高いような気がしてしょうがなかった。 でも、あっけらかんとして不思議と憎めない二人。 少し昔の話のようにも書かれていて、現実味がなかったからかもしれない。

  • 江國さんの真骨頂だと思った。読んでいて楽しく、気持ちが良い。こういう割り切った生活には憧れる。素敵な女性、素敵な生活、そして素敵な恋愛(?)。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      江國香織って読んだコトがないのですが、タイトルが巧い。どんな話だろう?と思ってしまいます。しかも表紙絵が、ゴヤの「ロス・カプリーチョス お前...
      江國香織って読んだコトがないのですが、タイトルが巧い。どんな話だろう?と思ってしまいます。しかも表紙絵が、ゴヤの「ロス・カプリーチョス お前は逃れられまい」。意味深やなぁ、、、
      2013/02/19
  • 美弥子さんが世界の外に出る話

  • 眠りにつく前に読み上げられる童話のように静かでいて、凍えるナイフのように冷徹で残酷な物語。江國さんは、みんなが無意識のうちに虚飾を施し、日常風景に溶けこませている人間の真理を見つけ出す。そして、ひっそりとした手つきでその皮を剥がし、そっと白日のもとに晒すのがうまい。なんて残酷。でも全て真実。

  • 最後の文を見て、 いたたまれない気持ちになりました。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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