精姫様一条 お狂言師歌吉うきよ暦

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062173230

作品紹介・あらすじ

いまをときめくお狂言師の歌吉は、幕府隠密をひそかに助ける「手駒」も務める。将軍家の姫の嫁ぎ先をめぐり下される密命。お吉でなければ聞き出せないことがある-。将軍家の姫は"厄介嫁"か。七万七千両のご縁組騒動。

感想・レビュー・書評

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  • お狂言師歌吉うきよ暦 シリーズ3

    有栖川宮家から上様の養子となった精姫。
    嫁ぎ先が決まらず、肩身の狭い毎日を送っていたが、婿候補が二人出現した。
    一人は、近江彦根の井伊直弼。もう一人は、久留米の有馬孝五郎。

    将軍家の姫を嫁に迎えれば、格は上がるが、莫大な費用が掛かる。
    よつて、厄介嫁と言われる。

    井伊家は、早々に、先手を打って、他家との縁談を進め一抜け。

    一方、有馬藩は、賛成派の江戸家老一派と国元の反対派が、対立していた。
    なんとしても、精姫様の入輿に漕ぎつけたい公儀。
    三つ巴の争いが起こる。

    そんな時、歌吉こと、お吉に嫉妬心から、頬に傷を与えた、お糸の、元許嫁の朔太郎が、心中に見せかけられて、殺された。
    未だ、朔太郎の事が忘れられないお糸は、心中の汚名を拭おうと、詮索する。

    なかなか、お吉には、心を開ける事が出来ないお糸だが、ようやく、朔太郎を殺した犯人が明るみになった時にお吉に「ありがとう」と言うことができた。

    国元より、精姫様入輿反対派として、江戸に出てきて、獅子奮迅の働きをする森崎静馬の人柄に惚れ、反対派ながら、命を助ける日向。
    日向達の駒となって三年目のお吉の活躍。
    日向とお吉を巡って、火花を散らす、角善の主人宗助の働き。
    読後感は、すこぶる良い。

  • 杉本章子様、こんなに素敵な本に出会えて幸せです。江戸の街が本の中から立ち上がって、ひとつひとつの物語がゆっくりと絡まり合い、
    踊りの世界を中心に様々な階層や暮らしが謎を彩ります。この本には題名のお姫様は影しか見られないのに、いつしか主人公と共に姫君の周りを踊り廻って、考えあぐね、立ち止まり、走ります。これほど丁寧に考察された物語はどれほどの資料に支えられているのでしょうか。読み終えてなお、江戸の街の人々の足音から抜けられません。杉本章子様、こんなに素敵な本に出会えて幸せ です。江戸の街が本の中から立ち上がって、ひとつひとつの物語がゆっくりと絡まり合い、
    踊りの世界を中心に様々な階層や暮らしが謎を彩ります。この本には題名のお姫様は影しか見られないのに、いつしか主人公と共に姫君の周りを踊り廻って、考えあぐね、立ち止まり、走ります。これほど丁寧に考察された物語はどれほどの資料に支えられているのでしょうか。読み終えてなお、江戸の街の人々の足音から抜けられません。

  •  登場人物が入り乱れ(?)、読みにくいところもありました。しかし、お吉ちゃんと日向様の関係がいじらしく(笑)好きです。宗助さんも頑張れ(笑)。
     シリーズの第2巻を早く読みたいです。とばしてしまったから。

  • まだ続きは書かれているのかな? 歌吉は踊りを捨ててあっさり結婚できないだろうし、宗助はそろそろ妻帯しなければなあとか井手様の養女になって日向のお嫁にとかどちらもしっくりこない。で、続きが読みたいです。

  • やっぱり杉本さんはいい。江戸情緒がしっかりとしたためられている。不忍池の弁天堂には上野散策の折りに寄ったけど、あそこの周りに茶屋が軒を連ねていたのか。登場人物も舞台も広げることなく、お家騒動に痴情のもつれをテンポよく描かれている。それにしても厄介嫁にされた精姫様はお気の毒なんだけれど、その正体は最後まで明かされない。器量はいかほどなのか?姫の言葉も一言も記されてなかった。タイトルからして、てっきり主人公かと思っていたんで、何とも不思議な読了感だ。

  • じわじわ読んでる「お狂言師歌吉うきよ暦」シリーズ。まあこんなかんじで、結局お吉と日向の仲もさして進展せず、事件が起こっては収束して、ってな筋なんだろうな。お糸が安定のやな女だな、めんどくさいなこんなやついやだわー、と、思いつつ、読み終わったらなんかお糸憎めないね。こういうふうにわがままに人を好きになれるのっていいよね、かわいいかもしんない。事件もうまいこと1編にまとまってて、ラストのすっきり感もあって読みやすい。まあ、それでも、お吉とお糸の因縁の説明とかも出てはくるけど、やっぱシリーズの順番で読んだほうが、こういうシリーズものはいいかもね。これ一座の踊りの部分とかが、想像が追い付かないので、ドラマ化とかされたら見たいけどなあ。日向とお吉どうせ身分違いだし、妻帯とかしちゃって、それでも惹かれあうみたいな要素も入るともっと面白くなってくるんじゃないだろうか、なんておもったり。わりとお気に入りのシリーズもの。

  • 一番新しいお狂言師シリーズ。いつもながらお江戸下町の情景描写が素晴らしい。
    読書は私の「避難港」この人の作品は特に心穏やかにさせるものがある。
    部分的に出てくる方言がまた魅力的である。
    次作も期待したい。

  • 江戸風俗や情緒がいっぱい。
    お吉のりりしさが好き。

  • 今回は水木歌仙の弟子で相弟子だった「お糸」のもと許婚の男が久留米藩の女と心中に見せかけられ殺された事から事件が始まる。
    相変らず杉本章子の時代考証の確かさには頭がさがる。
    今回は彼女が地元だけに筑後弁が自然に話されている。

  • 「小説現代」に連載した8話の単行本化で、シリーズ3冊目。

    杉本章子は寡作なので、次の本が出るのが本当に待ち遠しいのだが、待つ甲斐のある作品を楽しませてくれる。

    駕籠宿の娘お吉は、踊りの師匠水木歌仙が弟子の中から選抜して大名家の奥に招かれて踊る一座に加えられたことで、同門の弟子お糸に妬まれて小鋸で顔を傷つけられるが、ある事件をきっかけに公儀隠密の手駒となっていた。

    今回は、お糸が自分で起こした事件のために破談になった許婚の朔之助と別れられず、婿を迎えてからも密会を重ねていたが、朔之助が別の女と逢っている現場に乗り込んで女を追い払ったものの、その二人が心中に見せかけて殺された。

    実はこの事件は、有栖川家から将軍の養女となった精姫の嫁ぎ先選びで、有馬藩内部で受入を願う江戸家老を中心とする派閥と、多額の経費のかかる厄介嫁を避けようとする前藩主をもり立てた国元の改革派の暗闘が引き起こしたものだった。

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著者プロフィール

すぎもと・あきこ
1953年、福岡県八女市生まれ。ノートルダム清心女子大学国文学科卒業後、金城学院大学大学院修士課程修了。江戸文学を学ぶ。1980年「男の奇跡」で歴史文学賞佳作入選、作家デビューを果たす。1989年「東京新大橋雨中図」で直木賞受賞。2002年『おすずーー信太郎人情始末帖』で中山義秀文学賞を受賞。近著に『起き姫 口入れ屋のおんな』など。本作は「お狂言師歌吉うきよ暦」シリーズ4作目の完結編となる。

「2016年 『カナリア恋唄 お狂言師歌吉うきよ暦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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