帝王、死すべし

著者 :
  • 講談社
3.11
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本棚登録 : 165
感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062173704

作品紹介・あらすじ

野原実は、息子輝久の部屋に入り、机上に置かれた一冊の本を手に取った。『てるくはのる』。そのカバーを取ると、出てきたのは真っ白な本。その中に書かれていたのは、輝久が綴った、"帝王"によるいじめの記録だった。息子を狂気から守るため、実は己のすべてを懸けてひた走る。

感想・レビュー・書評

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  • いじめに悩む中学生と、いじめの首謀者を突き止めようとする父親。実際にあった「てるくはのる」事件をモチーフに繰り広げられる、サスペンス感溢れるミステリ。いじめの詳細が描かれた日記にもなにやら企みがありそうで気を抜けません。なんせ折原さんだし。きっとこういうトリックだよね。
    ……と決め付けて読んでいたら、あらら、案外とシンプルでストレートだなあ。なるほどそういうことだったのか、と驚かされる部分も多少はあるけれど、思ったよりあっさりめで、拍子抜け。
    ……と甘く見て読んでいたら、最後の最後で驚愕パンチを喰らいました。うわわわ、まさかっ!? そういうことだったの!? やっぱり気を抜いてはいけなかったなあ。

  • 何年も前に購入して積読状態。数年前にようやく読み切り、ここに記録。

    なかなかページを捲る指が進まず、当時苦労した覚えがあります。

  • すっきり短いが楽しめる。残虐な殺人シーンなどはないのに、不気味で、ドラマとかにぴったりなのだが、実在の事件をネタにして、事実とは異なる面白怖い話を作っちゃってるので、折原作品は絶対TVとか映画化は無理。2011年の夏に出たこの作品は、震災直後の夏が舞台。少しではあるが、原発のニュースが多いなど当時の雰囲気も描写される。
    タイトルは、野獣死すべしからでもとったのか、でも内容にふさわしくないからマイナス1点。

    【注:超ねたばれ、自分のメモ用です】義理の父親に虐待されている中学生男子、野原輝久。ノンフィクション作家の真島俊郎が書いた記事を元に「てるくはのる事件(京都小学生殺傷事件)」を知り、事件名が自分の名前と似ていて、被疑者の偽名が同級生と同じであった偶然に引きつけられる。同級生は体が弱く車椅子だったが、上級生とのケンカに勝ったという伝説的な存在。残念ながら入院生活の後、卒業を前になくなる。輝久は「帝王」と呼んで、彼にいじめられているという架空の日記を書く。
    日記を盗み見た父親は、帝王が誰なのかはわからないが、いじめが明らかになれば、隠してきた自分による虐待の跡がいじめのせいにできると考え、学校に出向いて担任教師にいじめを解決するよう掛け合う。
    一方、近所の公園では中学生男子が公園のトイレで暴力を振るわれ、気を失っているうちに体に「てるくはのる」と書かれる事件が立て続けに発生。いずれも被害者は輝久の日記にあった加害者。輝久の父親は輝久の犯行を疑うが、輝久と自身も被害者となる。(学級委員の女子、板倉も体に文字を書かれたといって輝久に見せてきたがこれは何だったのかよくわからない。。)実は日記の中のいじめの加害者は輝久から父親の虐待について聞いていて輝久の作戦に協力していた。
    物語は終始、どこか強引だが、いじめを心配する父親目線で書かれ、彼が真島俊郎の編集者でもあることや、担任教師の自己中心的でいじめに全く向き合おうとしない(いじめはなかったのだが)ことなどにも引っかかって、まさか輝久の加害者は父親だとは最後までわからない。輝久の計画は学校での無差別殺人などではなく、赤いペンキをばらまくだけだったこと、本当の父親が止めに来たこと、輝久は自殺してもよい気持ちで義父をだまし、結局は屋上でもみ合ううち義父が命を落とす(輝久少年のいたずらで父親が事故死、という世間の批判的な目をよそに母、輝久、妹は幸せに暮らす)など、それなりに収まりのよい終わり方。

  • 少しとっつきにくい感じと、くどいくらいに登場するアナグラムに若干の抵抗がありましたが、読者を惹き込む吸引力は流石でした。
    いくつかの着地点を想像できるような伏線の張り方が良いです。その想像を上回る真相が著者の真骨頂なのですが、若干パターン化されている真相なので、著者の作品を読んでいる読者なら予定調和な真相だと思います。
    また、本作は実際あった事件を用いていますが、あまり本筋と連動していない気がしました。

  • てるくはのる事件を題材にした小説。ただ、事件の真相に鋭く迫っていこうという感じもなく、話の展開もゆるく緊迫感が無い。登場人物の描写が極端に弱く、会話が片言で、まるで思わせぶりなエッセイが続いているような感じだった。
    出てくる登場人物たちは何かをやっていそうではあるが、別に大したことはやっておらず、もやもやしてるばかりな印象だったので、読後の爽快感もない。

  • 息子・野原輝久の日記を読んだ野原実。日記に書かれた輝久に対するイジメ。「帝王」と呼ばれるイジメの黒幕の存在。「てのくはのる」事件と呼ばれる児童殺害事件の犯人の転落死。何者かに襲われる輝久をイジメていた生徒。体に書かれた「てるくはのら」の文字。輝久、実も謎の人物に襲撃される。輝久がイジメに対する反撃を企む事を知った実。野原家が抱える秘密。

  •  野原実は息子の部屋で悩んでいた。机の上に置かれていた本を手にとったのだが、中身はなんと日記だったのだ。そしてそこには、”帝王”という者からいじめにあい、苦悩している息子の日々が綴られていた。

     読むのが疲れたわりに、読後に印象が残らなかった。やっぱりトリックありきというか、そればかりが気になって読みにくく、結局種あかしされても「ややこしくなってただけだな」という感想に。自身もいじめに遭い、”てるくはのる事件”に影響を受けてしまった子供と、その父親とのやりとりを、もっとストレートに読みたかった。

  • 折原作品のシリーズ「〜者」ではなく、しかも
    書き下ろし作品との事で俄然興味があった今作。
    叙述の名手にして、本当に犯人当てなどミステリ的な
    満足度を満たしてくれる折原クオリティは、今作でも
    ビシビシです。読み手がガチガチに意識をして、細部に
    渡って目と意識を研ぎ澄ませて読んでいるのに、その
    隙間や裏をかい潜って、罠を仕掛けてきます。
    そして、その結果...やはりまんまと我々は
    してやられるのです。

    今作は99年、京都で実際に起った小学生殺害事件
    「てるくはのる事件」をモチーフに、その模倣犯、
    いじめ、事件を追うルポライター...etcの要素を
    折原流で絡めていきつつ、中学生の日記という
    スタイルで主に展開されていきます。もうこの
    時点で折原氏のフィールドに引っ張り込まれていて
    その術中にハマっているのですが、これがまた
    読み易く、また真相を知りたいがために、手が
    止まらない。

    いじめ、中学生、日記...とくればミステリファンは
    歌野晶午氏の「絶望ノート」を思い出しそうですが
    全くの別モノですw。ある意味こちらの方が瞬発力と
    その後味の悪さの破壊力は上...かもです。

  • 著者の作品らしく、後半の展開は面白く読めました。
    読み終わって思うのは、著者の作品に対して、自分は「騙された・驚かされた」という余韻に浸るために読んでいるようです。

    叙述系の作品は映像にしにくいものですが、この作品は映像化されても面白いのでは?と思いました。

  • 帝王の正体は、、、でしたか。
    ラストはなるほど、と思ったがどうも「乗って」読めた気がしなかった。
    あの、中弛み感はなんだったのだろう。とてもオススメできる作品ではないな、こりゃ。

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著者プロフィール

埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。編集者を経て1988年に『五つの棺』でデビュー。1995年『沈黙の教室』で日本推理作家協会賞(長編部門)を受賞。叙述トリックを駆使した本格ミステリーには定評がある。『倒錯のロンド』『倒錯の死角』『倒錯の帰結』など「倒錯」シリーズのほか『叔母殺人事件』『叔父殺人事件』『模倣密室』『被告A』『黙の部屋』『冤罪者』『侵入者 自称小説家』『赤い森』『タイムカプセル』『クラスルーム』『グランドマンション』など著書多数。

「2021年 『倒錯のロンド 完成版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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