赤目姫の潮解 LADY SCARLET EYES AND HER DELIQUESCENCE

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 717
感想 : 96
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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062184700

作品紹介・あらすじ

赤い瞳、白い肌、漆黒の髪をした赤目姫。彼女の行く先々で垣間見える異界……。思考の枷、常識の枠をやぶることが出来るものだけが、受容できる世界。そしてその世界に存在する自由と心理。透徹なイメージと魅惑的な登場人物で構築された哲学的幻想小説。

感想・レビュー・書評

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  • 量子の世界を少しでも知っていたら「潮解」の何たるかを理解できるかもしれない。しかし理解することに価値があるか、価値があることに何の価値が?

  •  水槽の中のお話。

     タイトルから買うことは決めてたけど、本屋で装丁見て、すぐ読むことも決定したね。百年密室の流れを汲んでたからね。ていうか今気づいたけど、百年密室、迷宮百年と、この赤目姫、明らかに装丁が同じで同シリーズだっつーのに、出版社、全部違うのな。どういうことだ。
     ミステリじゃないです。うん、百年密室からミステリ色を抜いて、スカイ・クロラ的な色を足したような、そんな感じ。迷宮百年を楽しめた人間には面白い話だと思う。
     カラフルだけど、相変わらず無味無臭な雰囲気小説。人間と人形の違い、作られた世界、仕組まれたプログラム。自由意志と決定論についての議論はあまりなされてなかったけど、まあ似たようなことは言ってたと思う。それよりも、デカルト的な展開だったかなぁ。我思うゆえに我在り。
     ひとの意思、思考と仕組まれた意思の違いについて。発生のメカニズムが異なるだけで、出来上がってるもの、組みあがっているものについては同じだろ、という結論だと読み解きました。大方同意。同じだと認識することに問題もなかろう、というのも同意。なかろう、問題なんぞ。
     青い目のひとってのは、女王さまかなぁ、と。迷宮のほうの内容をほとんど覚えてない。でもたしか水槽の中の脳の話だったよな、と記憶。ざっと迷宮のほうの感想読み返してみたけど、思い出せない。誰の脳が水槽のなかにあるんだっけ? 女王? 娘? メグツシュカの目が青かったら確定。シャルルって息子だっけ、娘だっけ。迷宮、十年前なんだなぁ。
     タイトルの「潮解」の意味が分からなかったから調べてみた、固体が空気中の水分を吸って解けちゃうことらしい。
     思考の展開を楽しむという森小説の王道のような話だった。こう、なんだろう、小難しいというか、ガクジュツ的というか。「こういうの読んでる俺賢くてかっこよくね?」という気分に浸れるというか。むなしいけどな、それ。
     面白かったんだよ、うん。とても。すごく、好き。存在論っつーか、神の存在論っつーか。まあそういう系統が好きなひとにはたまらないと思う。考えても無駄なことをひたすら延々と考え続けるっていうね。非生産的なところがたまらんね。1という数字が存在するかどうかについては、ゲーデル先生にでもお伺いしなさい。自己矛盾に問題がないって言ってたけど、論理学、言語哲学的にみれば、やっぱり矛盾ってのはどうも許容はできないと思う。
     世界を楽しむというより雰囲気を楽しむ。雰囲気の力が強いと、読了後もしばらくその雰囲気に酔えるんだけど、今のところ酔えるほど強い雰囲気を持ってるのは京極と森くらいという認識。
     あとこの本、P.185~P.189は目で見て楽しむ価値のあるページだと思った。きれい。
     ちなみに、読んでる間のBGMはアルトネリコのサントラ。この話、ヒュムノス、すっげぇ合うわ。
     抜粋。

    「駱駝と名づければ、自分を駱駝だと思って、本当に駱駝になるかもしれないと思いましたの」赤目姫が話す。


     これから読むひとは、犬と駱駝のことを頭の片隅に置いておくといいんじゃないかな。

  • 意味が分からないまま終わります。

    私だと思っていたら他人になったり、色々な人になっていき、その視点で話が進んでいくのですが、急に話が飛びます。

    他の作家さんなら怒っていたと思うのですが、この作家さんだから許せる部分はあります。

    で、結局、どういうことなのだろう?って感じで終わります。

  • ミチルとロイディどこいった…

  • 急に孤独を感じたけれど、それは以前から私にあったもので、束の間の奇跡によって棚上げにされていただけのものだった。

    光が多すぎると、それは闇と同じく、なにも見えなくなってしまうのだ。

    私が見るものは、私の頭脳が作り出すものなのに、私の外側にあるように感じられる。これが外側だという根拠はない。自分の感覚が外側へ向かっているという錯覚は、ただ、それを外側と定義した、その言葉の域を出るものではない。

  • 百年シリーズ(?)の三作目。最初読んだときにはわからなかった。後半に入ってから、森博嗣らしくなってきた。スカイ・クロラみたいな、詩のような感じ。出来事は重要じゃなくて、大事なのは何を考えたか。

  • 百年シリーズ、なのか。
    今回は幻想小説だそうだけれど、人形使いは攻殻機動隊のようだったし、場面展開はオスロ監督作品のようだったし、美しくて、非常に難解。
    理解できるとしたら、きっと天才しかいない。
    でも天才はきっともう人間ではない。

    赤目姫に緑目王子にロビンス卿。登場人物はなんてファンタジックなの!
    ファンタジックで機械的!



    以下、他シリーズからの引用。

    「先生……。私、最近、いろいろな矛盾を受け入れていますのよ。不思議なくらい、これが素敵なのです。宇宙の起源のように、これが綺麗なの」
    「よくわかりません」
    「そう……それが最後の言葉に相応しいわ」
    「最後の言葉?」
    「その言葉こそ、人類の墓標に刻まれるべき一言です。神様、よくわかりませんでした……ってね」

  • 自分は人間なのか、それとも人形なのか。深くて人によっては考えたこともないテーマだった。ミステリというより、なにか超越した物語。

  • 遠い世界に行った読後感。
    この本、一冊で楽しむのは難しいと思います。
    幻想小説。謎の一欠片。
    これがどの世界に繋がるのか今から謎解きが楽しみです。

  • 難解だったけどラストは鳥肌が立った。

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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