- Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062185004
感想・レビュー・書評
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樋口一葉の歌の師匠であり、歌塾「萩の舎」を主宰し一世を風靡した中島歌子。幕末の江戸という時代の流れに翻弄されながらも夫を想い続けた彼女の一生を描いた本作。
柔らかな題名と表紙に惹かれてページを捲ると痛い目に合う。淡い恋物語から、やがて幕末の内紛へ。1人の女性が激動の時代を強くまっすぐと生き抜く様は、今の時代にはなかなか見られない凛とした姿が目に浮かんだ。
読み終わった後に表紙を見ると、たおやかに伸びる萩の絵がものすごくしっくりとくる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
前回の直木賞作品です。
受賞を機に初めて知った作家さんでしたが、とってもとってもよかった!
題材もいいし構成もいいし文章もいい、ときめくし号泣するし、それでいて歴史の勉強にもなりました。
水戸藩天狗党の藩士の妻であり、のちに歌人となった中島歌子の視点で尊王攘夷や天狗党の乱を描いた作品です。
会津藩の末路に勝るとも劣らぬこの悲劇ぶりを、今までなぜ知らなかったんでしょう。
天狗党の乱、水戸藩の汚点であろうこの乱の原因について語られる場面があるんですけど、その一つに「貧しさ」を挙げていました。
「大日本史」の編纂、という大事業が水戸藩の財政を圧迫したそう・・・
以下抜粋。
「財政豊かな加賀藩はおおらかと聞く。温暖な薩摩や長州も懐や豊かや。けど、水戸は藩も人も皆貧しかった。水戸藩は生来が生真面目や。質素倹約を旨とし過ぎて頑なになって、その鬱憤を内政に向けてしもうたのや。・・・あまりの貧しさと抑圧が怖いのは人の気ぃを狭うすることやな。気ぃが狭うなれば己より弱いものを痛めつける、ほんで復讐を恐れて手加減できんようになる。」
「水戸の百姓は他藩よりも重い税に苦しみ抜いた。そして幕藩体制が潰える寸前に己が手に槍を握って立ち上がり、命を落とした。尊王攘夷も内紛のさまざまもよくわからないまま、怒りに駆られて筑波山を目指した者がほとんどかもしれない。」
とても納得感がありました。
こういう視点で歴史をみれるのがいい。
まさにこの気質が水戸藩の泥沼化、憎しみの連鎖につながっていったのでしょう。
で、いながら、主人公が憎しみを断ち切る努力をする生き様がまた感動的で、それが、歴史書ではない、歴史小説の醍醐味ですね。
本当に素晴らしい作品! -
泣きます。
君にこそ恋しきふしは習ひつれ
さらば忘るることもをしへよ -
初めての作家の、しかも時代小説となると、手に取るのに少し躊躇してしまう。本作は直木賞受賞作だったので、取り敢えずチャレンジするつもりで読んでみたところ、思いのほか引き込まれてしまった。
幕末の歌人、中島歌子の波乱に富んだ生涯を描いている。
最初にうちは、宮部みゆきの江戸もののような小気味良いテンポで進んでいくが、水戸に嫁いでからは一転、重々しい雰囲気に。水戸藩の内乱や武家の家族の悲惨な行く末については、知識がなかったこともあり、胸が痛んだ。
力量のある作家なので、ほかの作品も読んでみたい。 -
2014.6.1読了。すごい作品だった。歴史的事実を知らなかったので、巻き込まれていく登世と同じ視点で読めたので、余計に割り切れず、心がボロボロになったが、印象深い作品となった
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歌人中島歌子のことはほとんど知りませんでした。女流歌人として名を馳せ恋愛も自由であった歌人。だけどその奥底には、ただひとりの人を思い続けていた。恋する人を思うだけでこんなにも辛い出来事を耐えていけるのかと思うと、歌子の強さに心を揺さぶられます。最後は強い思いがぶつかって淀んでいた物が、きれいに浄化されたようで冷たい空気のように気持ちよかったです
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以徳様が罪を赦され、志士として贈位されたことを知らされたとき、私は歌を詠んだ。
「うれしさをひとり聞くこそ悲しけれ 憂きをば共に嘆きしものを」
和歌なんてよく判らないけど、なんて悲しい31文字なんでしょう。
読み始めてから水戸の天狗党の話と知って尻込みしましたが、(長州藩以上にややこしい藩政だったとの知識があったので)意外や意外、前半はおきゃんな(死語?)主人公の恋愛小説、後半は過酷な運命に翻弄される女性の半生記でした。
最後の「以徳様。やっと逢える。」で泣けます。
久々の感動できる歴史小説でした。 -
読んでよかった。
最後の一ページまで感動です