先生のお庭番 (徳間文庫)

著者 :
  • 徳間書店
3.82
  • (44)
  • (92)
  • (61)
  • (9)
  • (1)
本棚登録 : 750
感想 : 61
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198938383

作品紹介・あらすじ

舞台は長崎の出島。15歳で修行中の庭師・熊吉はオランダ商館への奉公を命じられた。仕える相手はシーボルト。なんと更地に薬草園を作れという。熊吉はそれでも工夫を重ねて見事な薬草園を仕上げ、シーボルトと妻のお滝の信頼を得てゆく。四季折々の草花に魅入られたシーボルトは、熊吉に日本の自然の豊かさについて説き、どこの国でも同じだと思っていた熊吉は驚かされる。土と草花を通して人のぬくもりを描いた、感動の職人小説にして成長小説。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • じっくりとシーボルトを読んだ訳じゃないけど、ここで知識入れてもいいかなと思うけど、一遍でも知るのもいいかと思う。あくまで熊吉の話だから。出島を舞台にする話も意外に読んでない、オランダ人が出て来るのでなく庭師を一心にやり遂げる熊吉が染みる。12冊ですね、やっぱり読み応えある

  • シーボルトの薬草園の園丁=お庭番となった熊吉を主人公とした、史実にフィクションを織り交ぜた時代小説。
    熊吉の草木や彼の仕事に対する真摯な接し方に、心が和み「読んでいる身が浄化され」る。
    シーボルトに敬愛の念を抱き、必死に彼のために熊吉は仕事をこなすが、台風により薬草園が甚大な被害を受ける。
    熊吉が黙々と片付けをしていると、シーボルトが忌々しげに吐き出す。
    「なにゆえ、やぱんの者は怒らぬのだ。怒りこそ闘いの力になるのであろうに、なにゆえ唯々諾々と受け入れる。・・・我々は常に自然を闘うことで知恵ば磨き、技を発達させてきた」と。
    熊吉は目が歪み、天と地が揺れた様な気がした。
    「先生にとって、自然は共に生きるものではなかったのだ」との腑に落ちぬ思いが次々と湧き上がって、熊吉は身を震わせた。
    日本人と西洋人との自然に対する考え方の違いが浮かび上がる場面である。
    歴史上有名なシーボルト事件で、熊吉も咎に問われ過酷な取り調べを受けるが、嘆願書によりようやく放免される。
    『終章』で語られる、数年後の挿話が心地よい読後感をもたらす。

  • シーボルトに従事した、庭の管理人=御庭番•熊吉のお話。

    蘭語にどうしようもなく惹かれ、そこからシーボルトとの運命的な出会いを果たす冒頭、初っ端からぐっとくる。

    フィクションのような盛り上がりがあるのに、ノンフィクションの持つ客観性も持ち合わせていて、読んでいて不思議な気持ちになった。

    シーボルト先生が、私たちにとって馴染み深い「自然」という言葉を初めて定義付けるシーンも、ハッとさせられる。
    それなのに、日本人の「自然」観には触れきれないシーボルト先生の哀しみ。

    それでも、熊吉の彼を慕う姿が良い。
    どれだけの犠牲を払い、失い、過たれたとしても、熊吉の仕事は変わらない。
    ひたすら地味だけど、めちゃくちゃ格好良い!

    読んでいて、良い重みを感じた。

  • たくさんの植物が出て来きます。

    「あのお花が薬草だったの⁉︎」と驚きながら読んでいました。


    「でんでらりゅうば」の歌にもビックリ。
    子ども番組で流れていたのがずっと耳に残っていて、
    こんなところで再会するとは!
    意味深な歌だったんだ。

  • 詳細は、こちらをご覧ください
    あとりえ「パ・そ・ぼ」の本棚とノート
     → http://pasobo2010.blog.fc2.com/blog-entry-1301.html
    本書を読むまでは、 「熊吉」のことは 全然知らなかったので 実在の人と知ってびっくり。
    以前見に行った「シーボルト展」でも紹介されてたんですね。
    2016/11/6「日本の自然を世界に開いたシーボルト」展へ行く
    https://blog.goo.ne.jp/pasobo-arekore2005/e/8b1c44fa6aa9d09f9693b0509c71ab7b

  • 切なくて、美しい話だった。
    日本の良いところ、悪いところ、美しさがきれいに描かれていると思う。

    嵐に対して怒りを抱かない日本は、今もそうなのかも。
    怒りが全くないわけではないけれど、自然を受け入れ、共に生きること。日本人は昔から、そうしてきたんだなと思う。

  • 人物や土地や花木、あらゆる描写が写実的で、自分も出島にいるかのごとき錯覚に陥ってしまうほど。その中で主人公と先生、奥方との絆が生き生きと描かれている。「恋歌」も見事だったが、こちらも最後に深い感銘を受け、余韻の残る秀作であった。

  • 長崎の出島でのシーボルト先生のお庭番熊吉の物語。熊吉の気持ちを所々切なく思った。

    江戸時代の奉公の様子、当時の日本人とシーボルト先生の考えの違い等を知る事ができて、面白く読めた。

  • シーボルトの薬草園の庭師として雇われた熊吉とシーボルトの心の交流を描く物語。向学心旺盛な熊吉の成長、シーボルトの妻、滝の生活があの事件に依って大きく変わってしまう。

    シーボルト事件は歴史の勉強の時に出てきて知ってはいたが、この作品でシーボルトなる人物の一部を知ることが出来た。兎に角、面白い作品であった。この作者の作り出すフィクションの部分がさも事実であるが如く感じさせるのは作者の力量の表れだと思う。

  • シーボルトつながりの本は、これで何冊目だろうか?
    この作家さんの描く世界は丹念に積み上げた史実を、、素敵な物語に仕上げています。

    出島のシーボルトの植物園に出入りの植木屋から専属の職人をと依頼があった。
    そこで決められたのが一番年下の熊吉。
    先輩の職人たちは皆外国人のもとで働きたくはなかったのであった。

    熊吉、実は蘭語を習いたいと心のうちで密かに野望を持っていたのだった。
    熊吉はそのまじめな働きぶりと、工夫を重ねた植物園の造園方法で一目置かれる。

    熊吉、バタビア人のオルソン、シーボルトの日本人妻お滝は仲良くなり共に食事もするように。
    才能も機転も聞くシーボルトは、幕府の要人らの受けも良い。日本各地から教えを乞う人々が多数やってくる。

    物語は熊吉の工夫で1000品種に及ぶ植物をシーボルトが変える船で送るところまでが描かれ、終章では、お滝との娘と再会するところで終わる。

    他の作家により、この娘が苦労して女医になるまでのノンフィクションも存在。

全61件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

作家

「2023年 『朝星夜星』 で使われていた紹介文から引用しています。」

朝井まかての作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮下奈都
朝井 まかて
米澤 穂信
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×