虚人の星

著者 :
  • 講談社
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感想 : 35
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  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062197434

感想・レビュー・書評

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  • 戦国大名の名前が勢ぞろい、今、売り出し中の井伊直虎まで出てくる。宗猛、ドラえもん、みなしごハッチ、レインボーマン。壮大なおふざけパロディー。現代の政治家に対する強烈な風諫は、誰のことかはっきり分かる。そんなこんなを徹底的に笑い飛ばす。そもそもタイトル自体がおちょくっている。虚人には今の日本が陥っている累卵の危うきへの警鐘が込められている。本書を通して覚醒させられたものはあまりに大きい。フィクションとは思えない空恐ろしさに身は竦む。怖すぎる。

  • 近未来の予言ともとれるし、現代社会への憂いともとれる。
    とてもシュールな感じがするのだが、これを思想ととるのか、ギャグと考えるべきなのか。
    夢オチ的なラストはちょっと・・・

  • 私の父が失踪する話が始まると次に世襲の首相の話だ.何のことか分からない出だしだが,次第に状況が分かってきた.精神科医宗猛から私・星新一は7人のドルーク(友達)がいる交代人格を持つ存在であることが分かる.松平定男にはドラえもんとのび太の2人が巣くっている.星は中国のスパイとして活動し,外交官になる.松平は側近から中国との公戦をそそのかされ,ドラえもんが同調する.星の父もスパイであることが分かり話が発展する.尖閣問題を始め現代の中国との懸案が悪い方向に展開するストーリーだが,星が松平に直談判して解決策を展開する.小説とはいえ現代の情勢を反映した話で楽しめた.

  • 不思議な小説だった。最後の数ページ前までは面白かったが、最後の落ちがいまいちよく理解できない。つまりわからなかった。本当に最後まで面白かったのだが、最期が意味不明だった。

  • さすが「やさしいサヨク」の著者だなあと思いました。言いたいこともわかりましたけれど、お戯れがすぎましょう、という感もありました。

  • 島田雅彦「虚人の星」http://book-sp.kodansha.co.jp/topics/kyojinnohoshi/ … 読んだ、おもしろかった!多重人格やスパイというと荒唐無稽なエンタメだけど、登場人物に言わせている対中国防や安保への思想は真面目。現実への皮肉も利いている。こういう形でしか政治を語れない国なのか、日本って(つづく

    主人公が星新一だったり実在した人物名や固有名詞がどしどし出てきたりで、その意図を深読みしたくなり物語の中に入り込むまでに時間がかかった。あと中盤で視点が変わったのも最初気づかず(だってメインキャラ二人ともが多重人格だなんて思わないから)ラストが捻っている割にやや物足りない(おわり

  • 多重人格と中国スパイ。
    現実とリンクしているのが分かりやすい。
    登場人物の名前が戦国時代の大名。
    主人公が星新一。何か当てつけがあるのか?
    多重人格者の葛藤を掘り下げても読みたかった。
    幽遊白書の仙水のような。
    日本のトップも解離性同一性障害だった。
    現在の首相を揶揄するようで愉快ではなかった。
    物語に作者の政治的主張が見え隠れすると興醒めする。
    ラストも「俺たちの闘いはこれからだ」。
    9条信者や護憲派、左翼の臭いがする。
    中国スパイの危険性や彼の国の強かさを語るか、一国首相の特殊性を語るか、多重人格の悲哀を語るか。。。
    主題を絞った方が深まった気がする。

  • 親子2代にわたり中国のスパイとなった外務官僚を主人公とした、いかにも島田雅彦らしい小説だ。

    軽い話を小難しく書くのが彼の作風だが、本作も中国の脅威、米国の立ち位置などリアリティ溢れる設定をベースとしつつも、小説的面白さに富んだ作品となっている。

    結局、主人公は日本国を裏切るのか、はたまた国を救うのかがこの作品の読みどころになるのだが、ラストで一気に本作の政治的主張が展開されることになる。


    (ここからややネタバレあり)
    本作の主張は、「右」とか「左」といった政治的イデオロギーに主眼は置かれず、あくまで「護憲」「不戦」「平和」にある。

    昨今「護憲」を論じるとサヨク呼ばわりされる風潮があるが、全くをもってナンセンスである。

    本作中でも触れているが、天皇陛下も、そのお言葉の中で「護憲」「平和」に言及されることが多い。

    あまり多くを語ることは避けるが、私も憲法改正は当面不要であると考えるし、戦争は絶対的に避けなければならないと考えている。

    憲法前文は実に美しい名文であり、力強く「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」を謳いあげている。
    もちろんそれは理想論なのかもしれないが、それを目指すことは絶対的に止めてはいけないと思う。

    あと、少なくとも小説家やミュージシャンは、いつでも理想を掲げ主張し続けてていて欲しいと思う。

    体制に迎合する言論人やアーチストなんて糞食らえだ!

    そんな主張を含んだ作品ではあるが、小説として面白いのは間違いないし、エピローグもなかなか洒落ていて好きだ。
    島田雅彦、渾身の一作だと思う。

  • 多重人格者の首相と、その義理の兄弟の七つの人格を持つスパイが国家の危機を救う。着眼点は面白いが小説としての評価は、まあまあというところか?

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著者プロフィール

作家

「2018年 『現代作家アーカイヴ3』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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