- Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062197762
作品紹介・あらすじ
元治2年(1865)如月、清太郎の師匠で、義父でもある三代豊国の七七日法要が営まれる。
三代は当代きっての花形絵師。歌川広重、歌川国芳と並んで「歌川の三羽烏」と呼ばれた。
すでに広重、国芳を亡くし、歌川の大看板・豊国が亡くなったいま、誰が歌川を率いるのか。版元や絵師、公演者たちなど集まった弔問客たちの関心はそのことに集中した。
清太郎には義弟の久太郎と、弟弟子の八十八がいた。久太郎は清太郎と同じく、門人から婿養子なった弟弟子。
そして八十八は、清太郎より歳が一回りも下の弟弟子。粗野で童のような男だが、才能にあふれている。八十八が弟子入りしてすぐに三代はその才能を認め、挿絵を大抜擢で任せたりしたものだ。
かたや清太郎が三代に褒められたのは、生真面目さしか覚えがない。その上、版元たちからは、三代の通り名「大坊主」を文字って、「小坊主」と呼ばれる始末。
いったい、誰が「豊国」を継げようものか。清太郎は、苦い振る舞い酒を口へ運んだ──。
黒船騒ぎから12年が経ち、京の都には尊王攘夷の嵐。将軍さまは京に行ったきりと、徳川の世は翳りはじめていた。時代のうねりの中で、絵師たちは何を見、何を描き、何を残そうとしたのか!
感想・レビュー・書評
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タイトル『ヨイ豊』の意味を知った時、とても哀しくなった。でも、四代目豊国を可哀想な人だとは思わない。八十八の才能に嫉妬し、師匠の三代目豊国に及ばないのを自覚しながらも歌川の画風を守り、錦絵と向き合い続けた絵師としての矜持に胸が熱くなった。移り変わる浮世を描く筈の絵師が時代の波にのまれ、江戸から東京へと変わると共に姿を消してしまうのが惜しい。明治維新の政府が早くから浮世絵の価値を認め、現在もっと絵が残っていたかもしれないと思うと残念でならない。
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私の好きな芸術もの。歌川と言う大名跡の後継に相応しのか否か。弟弟子の奔放な絵に対しての自らの引け目、葛藤が余す所なく描かれていた。江戸最後の絵師の物語。
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浮世絵は刷るもので、売れなくなったら版木を掘りなおす、という当然のことにすらこの本を読むまで思い至りませんでした。時代を写した現在残る浮世絵がどれほど貴重かあらためて思いを馳せました。幕末、明治と移ろいゆく時代。浮世絵を守ること、襲名を受けること。主人公清太郎の前にそびえたつ努力では越えられない壁がとても切ないです。どんなに蔑まれても信じるところを貫き通し、最後にわかる表題の意味はグサリと胸に突き刺さります。私にとって決して読みやすい本ではありませんでしたがいまだ余韻が冷めません。読んで良かったです。
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二代目歌川豊国の娘婿である清太郎(二代目国貞)を中心に描かれたお話。
時代背景や絵についての情報が多くなるほどと勉強になる。しかし登場人物が生きていないというか...熱中して読むことはできなかった。
自分の才能に悩み、代々の豊国との比較に苦しみ、弟子の才能に悔しさを感じる、と書かれているのだが、ぺたーっと文章で書かれてるだけでそれらの苦悩が立体的に表現できていないように感じた。 -
第154回直木賞候補作。
江戸から明治に移り変わる激動期。江戸庶民工芸のひとつ「浮世絵」が時代から失われていく過程を抒情豊かに描いています。
四代目歌川豊国と弟弟子八十八の奮闘と奔走が涙を誘います。
感動しました。
現代にも浮世絵や歌川の名は広く知られていますよ、大丈夫ですよ、と当時の彼らに伝えたい。
浮世絵や歌舞伎など江戸文化の推移とともに、当時の時代背景が分かりやすく描かれていて、時代物としてもとても面白かったです。 -
直木賞候補作品だったので、内容も知らずに図書館で予約w
人気作品は、忘れた頃にやってくる~~www
なんと!浮世絵師 歌川一門の話?面白そう~~~!!!
三代歌川豊国没後、三代の娘婿で真面目な凡才清太郎と破天荒な天才弟弟子八十八やそれを取り囲む人々の絡み合いが非常に面白い!
そして、幕末の移り変わり激しい世の中で、時代の流れに逆行し、必死に浮世絵を守ろうとする清太郎が泣かせる。
もうねー、なんか、江戸はいいなぁ!!って感じw
そう、やはり世も人もこの小説も、粋なのである~~!!!