満月の娘たち

  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062207324

作品紹介・あらすじ

まるで神話のようだ。新しい時代の母娘の。  
──梨木香歩氏
「読者をどんどん惹きつけていく、さすがのストーリーテリングで、この子どもたち三人の冒険と友情に引き込まれ、彼女らが愛おしくて愛さずにはいられなくなります。
母という存在の呪いと祝福、慈しみと憎悪──母と娘は永遠に誰よりも生々しく近く、そして誰よりも遠い存在なのでしょう。」

足りないってことばをママはあたしによく使う。
あんたは言葉が足りない、とか素直さが足りない、あとは血が足りないってのもある。
ママの中ではあたしは足りないものだらけらしい。
とにかく、あたしの歯が足りないせいですきまがあいてしまい、矯正が必要になるかもしれないということだ。
そうしないと十年後にはかみあわせの不具合で色々とよくないことがおこるかもしれず、それをママはとても気にしていたから、今日歯医者さんに行かなかったことにも腹をたてているらしい。
でもあたしにとってはたいした問題じゃない。
歯が何本か足りないまま成長したってそれがどうだっていうのだろう。それはあたしの未来でママの未来じゃない。
─本文より。

どこにでもいる標準的見た目の中学生の私と、オカルトマニアで女子力の高い美月ちゃんは保育園からの幼なじみでママ同士も友だちだ。
ある日、美月ちゃんの頼みでクラスで人気の男子、日比野を誘い、3人で近所の幽霊屋敷へ肝だめしに行ったのだが……。

幽霊屋敷探検を発端におこる様々な出来事を通じ母と娘たちの葛藤と成長とがリアルに描かれる。話題の母娘問題を独特の観察眼でとらえた感動作。

椋鳩十賞、小さな童話賞大賞受賞作家、「頭のうちどころが悪かった熊の話」の安東みきえ氏、初の長編小説。
(中学生漢字以上にルビ)

感想・レビュー・書評

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  • 子どもたちの友情を感じ、こういう時期って一瞬だったなぁと思い返す。
    一緒に冒険することの楽しさもこの時期だけの特別なものだったと。
    だけどこの物語は、母娘の関係性をゆっくりと確かめていくようなものであった。
    中学一年という微妙に面倒で中途半端な時期。
    反抗期真っ只中といっても過言ではない時期。
    親をウザいと感じ、親も子どもの気持ちがわからない。
    微妙な関係のまま、大人になり親に悪態をついたまま、親に死なれた繭さんの気持ち。
    その繭さんを奮い立たせるような美月ちゃんのママの怒鳴り声。
    きっとみんながそれぞれに何かを感じたであろう。
    わかってもわからなくても、何かを。

    親になってわかること、子どもだから思うこと。
    だけどみんな最初は子どもだった。








  • 毎度のジャケ買いヒグチユウコさん
    ジャンルは児童書?
    思春期の娘が母親に思う微妙な心理
    段々歳とると
    許せるようになったり
    苦労が分かるようになったり
    その前段階の若い気持ち

    ブックオフにて取り寄せ

  • 梨木香歩氏推薦ですって

    親は完全じゃない、毒親と責めないで…「満月の娘たち」著者の安東みきえさん : スポーツ報知
    https://hochi.news/articles/20190113-OHT1T50047.html

    『満月の娘たち』(安東 みきえ,ヒグチ ユウコ)|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000190461

  • 中学校1年生の志保は、親友の美月と美月の想い人日比野と3人で近所の空き家に肝試しに行ったところ警察に捕まってしまった。家主である繭に謝罪に行ったところ、幼なじみで同級生の祥吉と出くわし、彼が、ミニチュア作家である繭のファンでよく手伝っていることを知る。自由人の繭に興味を持った彼女は、それからも繭の家を訪ね親しくなっていく。あの空き家は繭の実家で、最低限の修理をして移り住むつもりだという。次第に実家へのこだわりを強めていく繭に志保たちは不安を感じていく。




    *******ここからはネタバレ*******

    母親に「何もかも足りない」と思われていると感じる志保。
    娘は自分のキャリアと引き換えだったと思われている美月。
    大家族で仲がいいけど、父親は失踪中の祥吉。
    自分の自由を束縛されたのが嫌で吐いた暴言が、母に言った最後の言葉になり、亡母が悲しみのあまり空き家に留まっていると感じている繭。
    思春期の親との葛藤を空き家を巡るエピソードを中心に描いていく。

    親の愛が重い、ウザいと感じる年ごろの娘たちの言動に、母としては傷つきますが、身に覚えもあるので、文句も言えません。
    この心理の掘り返しはとっても見事ですが、さりとてそう簡単に解決もしないので、この物語も空き家の崩壊で幕を閉じてしまいます。
    きっとこの先にもいろんな葛藤があって大人になっていくんでしょうね。

    空き家の幽霊の存在が、ちょっとこの物語をファンタジーにしていますが、かえって歯切れが悪くも感じました。
    特に繭はもう大人なのに、母親の呪縛から逃れられていず、それが中学生たちの不安感を増大させる役割になったのではないかと思うからです。

    児童書ですから、なんとか彼女だけでも、何となくではない親からの自立を希望として持たせてほしかったと感じます。

    ウザい母親へのきつい切り替えしの言葉が載っているので、子どもには薦めたくないですね(笑)。←冗談です。

  • 中学一年生の思春期の子どもが抱く親への強い反抗の気持ちと、それを辛辣に伝える台詞が、私自身も子どもを持った今、思った以上にこたえる。大人のちょっとした言動を子どもはよくみてるんだなあ。自分自身を振り返ってもそうだけど。

    幽霊屋敷での探検と、自由人に見えるが実は彼女も亡くなった親との葛藤を抱える繭との交流も、最後は伏線が回収されて、話の筋も面白かった。

    クライマックスでは、やっぱり子どもではなくて大人が子どもをしっかり救ってあげられて、カタルシスがあった。

    美月のお母さんの下記の台詞を、私自身も忘れずに、毎日一生懸命家庭をつくっていきたいと思った。

    「もしも私なら 、最後に大嫌いって言われたってどうってことないわ 。子どものついた悪態なんてなんでもない 。覚えてもいないわ ! 」
    「子どもが自分のことをどう思ってるかなんて 、気にしてらんないの 。そんなひまはないのよ 。きっとあんたのおかあさんも娘の言葉に傷ついたりしてないと思うわ 。だからだいじょうぶ 。なんにも悲しむことなんてない 。」

  • YAものではよくある親との関係がうまくいってない系の本。ちょっとファンタジー。

  • 思春期の子どもって、考えることが純粋と残酷が入り混じっていて、でも時々周りの大人たちよりもしっかりしていて…。危ういストレートさが、大人の代わりに行動や言葉にできる、10代の特権なのかなと少し羨ましくもなりました。自分の思春期を思い出しながら、共感したりちょっと懐かしくもなりながら読み終えました。
    あの白い影は繭さんを守ろうとしていたのだと、大人になった私は思いました。 優しい物語。

  • 最後まで一気に読みたくて時間を忘れてしまった。がみがみうるさい母親に対する気持ち・・・・改めて、まさに同じ年齢の子たちを持つので、親としての関わりについて、色々身に染みるところがあった。明日以降、気を付けていきたい。

  • 中学生の娘と母親。
    娘は自分の目から見えている母親のことしか知らない。
    母も同じく。この時期、こじらせちゃうと大変だからね。
    ちょっとホラーで友達と助け合っちゃう、いいお話でした。

  • 母と娘の話
    掃除は物をどかすことで、片づけられたゴミは別のところへ形を変えてずっと存在し続ける
    この考え方がしっくりきました
    死別した人の家を片付けない繭さんの気持ちの描写が好きです

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著者プロフィール

山梨県甲府市生まれ。1994年に「ふゆのひだまり」で小さな童話大賞大賞、「いただきます」で同選者賞今江祥智賞、2001年に『天のシーソー』で椋鳩十児童文学賞、2018年に『満月の娘たち』で第56回野間児童文芸賞を受賞。主な作品に『頭のうちどころが悪かった熊の話』(新潮文庫)、『星につたえて』『ふゆのはなさいた』(アリス館)、『夜叉神川』(講談社)などがある。

「2021年 『メンドリと赤いてぶくろ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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