心はどのように遺伝するか―双生児が語る新しい遺伝観 (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062573061

作品紹介・あらすじ

ヒトゲノム、クローン技術と、21世紀は遺伝子の時代に突入しようとしている。そしていま一卵性・二卵性双生児の研究から、身長や体重だけではなく、IQや性格への遺伝的影響も明らかになってきた。遺伝子はどのように人間の心を操っているのか?遺伝をめぐるさまざまな誤解を解く「心と行動の遺伝学」。

感想・レビュー・書評

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  • 違う環境で育った「一卵性双生児」と「二卵性双生児」の違いを比べる事によって「何が遺伝的に決まるのか」を調査した結果が書かれている。 心情的には「肉体的特徴」が遺伝で決まるのは納得できるが、「精神的特徴」が遺伝するのは認めたくない。しかし、実験結果的には多くの「精神的特徴」が遺伝により決まるという。本書には具体的にどの特徴が遺伝してどの特徴が遺伝しないかなど詳しく記されている。遺伝に興味がある人には必読な一冊。

  • 行動遺伝学の入門書。遺伝子に関する本を読んでいると、環境より遺伝か、と思ってしまうが、この本を読むことで、環境と遺伝の相互関連で人間の性格、能力などは発現されているのだと思う。環境だけも間違い。遺伝だけも間違い、なのだと思う。

  • 「教育とは人間の遺伝的制約を「乗り越えて」、環境によって人間の可能性を開花させることではないということだ。」

    遺伝の多様性は人間の数よりずっと多い。だから、同じ遺伝的組成を持つ人は2人いない。みんな個性的。
    知能に対して、遺伝の貢献度は0.5、環境は0.35、それ以外が0.15。しかし、政治の世界では知能は遺伝しない。
    学習方法により特定の技術を促進できる。

    とても面白い本だった。

  • 人間の心と行動の遺伝を研究する人間行動遺伝学をわかりやすく解説していた。遺伝学ときくと、農学ないし分子生物学でのシーケンサーを使ったDNAを分析することが頭に浮かぶ。しかし本書は、統計的手法を用いた心理学や教育学のアプローチで書かれていた。この意味で個人的には、遺伝学を少し身近に感じることができた。

    双生児をサンプルとし、一卵性と二卵性との間の特徴の異同が分析が主となっている。なおこの前座として、IQの相関係数の中央値が、一卵性双生児、二卵性双生児、きょうだい、親子、親・養子の順で高くなっていることがまず紹介される。

    社会的関係性の分析は興味深い。上司からのサポート、自律的な関わり、プレッシャーの側面、親からのあたたかさは遺伝的規定性があるという。

    遺伝的な条件を加味した上で、活動の場を与えて発達を促すことが理想だということは発見だった。つまり、教育や環境だけでは解決できない問題を、冷静に整理できるということである。

  • すごく分かりやすくて面白かった。
    肉体的、精神的なものが遺伝するのは事実であり、そのような主張が人権侵害にあたると非難するのは、キリスト教信者が地動説を否定するようなものだ。でもそれは親子がそっくりになるという意味ではない。
    鳶が鷹を産むのも、蛙の子は蛙なのも、遺伝であり、しかし、鷹も蛙も周りの環境と努力で将来どうにでもなれる可能性はあるのだ、という、まったく非センセーショナルな内容だった。
    遺伝子の組み合わせの話は、「ひとりひとりがかけがえのない存在」という主張をはじめてピンとくるものにしてくれた。

  • 人間行動遺伝学をわかりやすく紹介した本。双子の研究とか、興味深かったわ。

  • 安藤寿康先生の一般書デビュー作(のはず)。すごく分かりやすく面白く遺伝と双生児研究の話がまとめられている。最後の方の、安藤先生ご自身の博論の内容をまとめた章もすばらしい。「遺伝」とか「双生児研究」に興味のある方は、安藤先生の近著も良いけど、この本もぜひ。なんでしょう。2010年代の本よりも、もっと臨場感の溢れる感じがあります。

  •  心を働きと捉え、心は遺伝的であることを言っている。人間の心理現象も生命現象の一部なのだから、遺伝するのは当然だと言えるのだろう。運命論的遺伝観を否定し、教育や環境の重要さも説いている。

     遺伝を決定論者的に解釈するのではなく、自然なものとして素朴に受け入れ、自分にとって有益な情報とし、生きてゆくために学ぶべきこととをして捉えられるきっかけになると思います。

  • 行動遺伝学の入門書。一卵性双生児に関する統計調査の重要性が強調されています。統計データの解釈に関わる部分でもありますので、取り付きにくいところもありますが、なかなか興味深い結果がたくさん紹介されています。

    著者の主張は全くマット・リドレーが『やわらかな遺伝子(原題:Nature Via Nurture)』とほぼ重なるように思われます。知識能力や性格などは遺伝的要素が高いのだけれども、その発現は教育を通して顕れるのだということを強調しています(そう記述する動機はよく分かります)。いくつか参考文献が最後に挙げられているのですが、それなりに売れているマット・リドレーの著作が挙げられていないのは残念です。
    また、『心はどのように遺伝するか』は疑問ありです。必ずしも心が"遺伝"するわけではない、というのは著者の主張だと思いますので。

  • 心は遺伝するか。
    本書はYESと答える。

    一卵性双生児などの統計的な検査が根拠だ。
    資質が共通していることが非常に多いという。

    ただし、運命決定論ではない。
    遺伝がすべてではない。

    たとえば、親の資質がそのまま子どもに遺伝するわけではない。なぜなら遺伝するのは遺伝子であり、それ自体ではなく、その組み合わせが意味をもつものであるからだ。

    ここからたとえば、「適性が違えばそれにあった教育環境は違う」などの知見に結びつく。

    人は一人ひとり違うのだから、その人自身をしっかり見つめなければならないという、いってみれば当たり前のことを再確認。

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著者プロフィール

慶應義塾大学文学部教授
主要著作・論文:『生まれが9割の世界をどう生きるか―遺伝と環境による不平等な現実を生き抜く処方箋』(SBクリエイティブ,2022年),『なぜヒトは学ぶのか―教育を生物学的に考える』(講談社,2018年),『遺伝と環境の心理学―人間行動遺伝学入門』(培風館,2014年)など

「2023年 『教育の起源を探る 進化と文化の視点から』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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