新しい物性物理―物質の起源からナノ・極限物性まで (ブルーバックス)
- 講談社 (2005年6月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784062574839
作品紹介・あらすじ
量子論、相対論の融合から始まった物性物理学によって、身の回りに存在するあらゆる物質の本質が明らかにされてきた。半導体、液晶、超伝導などの新物質を創り出し、ナノテクノロジー、極限の世界を切り開く物性物理学の最前線に迫る。
感想・レビュー・書評
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新の物性物理を俯瞰的に網羅した本、であっていると思う
(苦笑)。絶対零度に近づくと物質を磁気や光によって冷やす
なんてことがあるらしい。スピントロニクス・量子通信・
人口原子・単電子素子etc. 読んでいる間はわかった気に
なっているし、とても楽しく読めているのだが、読後に何が
残っているかというのはまた別のお話である(笑)。今度は
宇宙論のブルーバックスを借りてこよう。 -
電子は粒子であり波であるということは知っているはずなのに、頭の中に思い浮かべるのは粒子の姿であることがほとんどだ。
だが、電子が原子核を周回するとき。電子が波であることを改めて意識してからK殻、M殻、s軌道、p軌道を考えてみると、その意味がようやく理解できる。
本書は陽子数、中性子数などの基本的なところからアップクォーク、ストレンジクォークなどの複雑なところまで。電子の世界から改めて物理の世界を学ぶための教科書。
入門書と言うには説明不足で難易度の高い局面も見受けられるが、ガラス・カーボンナノチューブ・ATPなどの具体的な事例も豊富でとっつきやすい。
日常世界と地続きである電子の世界のスケールは、量子力学の入門として最適だ。新書サイズで読み切りやすく、深く悩まずに手に取って良い一冊だろう。 -
物質とは何かを追求する科学の最前線を網羅的に描いた本です。量子論なんか普通に生きていくには何の関係も無いと思っていた文系人間には理解が及ばない部分も多々ありましたが、ページを行きつ戻りつしながら、何となく分かった様な気分となりました。また最先端技術がどの様に工業的に利用されているか、どの様な可能性があるかも精力的にカバーして頂いているので、今後、新聞とかを読む際の辞書として使うこともあるかなと考えます。
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ブルーバックスなので、前提となる基礎的な物理を理解してないと理解が難しいとは思ったが、それでも平易に書かれていて丁寧で読みやすい印象は受けた。
また読み直したい。 -
磁場の話が興味深かった。分かりやすく書かれているかと思う。
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他の方のレビューとはだいぶ違う感想を持った。この本は特に網羅的でもなければ厳密でもない。例えば本書で1章が充てられている超伝導と並ぶ,物性物理学上の潮流である電子構造の大域的な性質に基づく物性(量子ホール効果等)について書かれていないし,モット絶縁体についても然りである。要するにこれは,筆者の興味の赴くままに書いたという事だろう。
ついでにケチをつけるならば,物理学上の非常に基礎的な概念の解説が始めに書かれているものの,後半部に行くにしたがって高度な応用について述べられており,残念ながらそうした知識はあまり役に立たない。
しかしまあ,多少物理学を知っているならば,間違いなく読んでいて非常に楽しい本である。 -
講談社ブルーバックスの1冊。
但し、狭いテーマを取り上げて解説したものではありませんし、けっして軽い読み物ではありません。
総302頁に書かれている内容は簡潔にして高度で充分に網羅的です。
基礎的な内容、物性物理の成果、研究の最前線のテーマいづれも盛り込まれてます。
これは入門する人用の書。
これ読んで簡単に薀蓄が語れるといった類の本ではないです。ザ・「最初の1冊目(総論)」。
「物性物理学」「固体物理学」「材料学」「固体化学」...など、この世界に興味を持った、或いはこの世界(学部?製造業界?)に
足を突っ込む覚悟の決まった若者(+もちろん年配も!)が最初に自分でお金を出して購入することをお勧めする素晴らしい入門書です。
これから自分の前に広がってくる世界を見渡せる最初の高台。
これでお値段1040円(税別)!
コストパフォーマンスも最高です。ブルーバックス侮りがたし!
選択されている各章のテーマ(下記目次参照)はオーソドックスな固体物理学入門と同様の構成になっている。
目次
第1章 物性物理学の誕生
第2章 物質の起源
第3章 物性の出発点
3-1 電子の素顔
3-2 原子の構造
第4章 物質の構造
4-1 原子の結合
4-2 構造を決める
第5章 電気伝導の世界
5-1 半導体
5-2 超伝導
第6章 磁気の世界
6-1 磁気学序説
6-2 磁性体
6-3 磁気の応用
第7章 物性の新局面
7-1 ナノ科学の世界
7-2 カーボン科学の台頭
7-3 物質からみた生物
第8章 極限科学
序説 自然科学の定石
8-1 温度の世界
8-2 圧力の世界
8-3 磁場の世界
第1章にて物性物理の歴史と本分野における我が国の強さの文化的必然性に軽く触れた後、
第2章で本書の最初の特徴である、電子からではなく、物質の起源としての素粒子(クォークとレプトン、ゲージ粒子)
に関する記述から始まる。研究の最前線の紹介も盛り込む本書の意図を反映している。
第3章にて量子論(3-1 電子、3-2 水素原子→軌道→原子の構造→元素)、
第4章にてイオン結合、共有結合、金属結合等と結晶構造の記述、続いて、構造決定(観測)手法の紹介と
標準的なテーマの進み方をする。手堅く本格的である。
第5章、第6章でそれぞれ物性物理学が20-21世紀に多大な成功を収めた「半導体物理」と「磁性体物理」の成果
を章の前半に記述し、後半において、現代の課題である超伝導(5章)、磁気の応用、スピントロ二クスへの展望(6章)を描く。
基礎(1-3章)、現在までの成果(5-6章)を入門書の体裁の中で記述して、第7章 物性の新局面と題して、最新のテーマとして、ナノ科学、カーボン科学、生化学ならぬ生物理のトピックスを取り上げている。
最期の第8章は、極低温(ヘリウム3、希釈冷凍、断熱消磁など)、超高圧、強磁場(パルス、超伝導磁石、磁場濃縮法)
と3つの基本的な物理変数である温度、圧力、磁場の制御範囲の拡大と極限物性を描き、
同著者の手になるブルーバックス「極限の科学」へも繋がる。
~前著「物性物理学の世界」と私の思い出~
私(管理人)は、1980年代に大学(工学部)に入学しました。
既に材料物性工学科へ進むことが決まっておりましたが、
「はて?物性って何だろう??電子工学科や建築学科、化学科ならなんとかイメージが湧くが...。」というお粗末なものでした。
そこで出会ったのが、同著者の手になるブルーバックス「改訂新版 物性物理学の世界」でした。
「新しい物性物理」はこの旧著の単なる改訂版では無く、ほぼ新構成の本でありますが、入門書(もしくはプレ入門書)としての影響力を今でも持っているかと思う。
どちらかというと旧著の方がブルーパックスっぽい感じ。新著の方がより本格的(やや硬めになった)かな。 -
コメント:この一冊に物性物理の主要トピックが網羅されている。物性物理の本はどれも煩雑な計算がつきものであるが、この本は数式を一切用いずに物理現象を直感的に説明している。物性物理を学んだことのない人もこの一冊を読めば物性物理全体を見渡すことができ、一通り学び終えた人も知識が整理され、物理現象に対する直感的な見方を得ることができると思う。(電気電子工学科)
配架場所:工2号館図書室
請求記号:428:D44
◆東京大学附属図書館の所蔵情報はこちら
https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=2001961343&opkey=B148064392702829&start=1&totalnum=1&listnum=0&place=&list_disp=20&list_sort=6&cmode=0&chk_st=0&check=0 -
正直に言って、決してわかりやすくない。
が、非常に多岐にわたる物性物理の内容それぞれについて、原理原則に終始せず、それがどのように実用に生かされているかが述べられており、その結果非常に広範囲にわたってさまざまな話題が扱われている。
これを読めば物性物理がわかるという本ではないが、いろいろなことに興味をもつきっかけを与えてくれるつくりになっている。