川はどうしてできるのか (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社
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本棚登録 : 380
感想 : 48
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062578851

作品紹介・あらすじ

「山はどうしてできるのか」「海はどうしてできたのか」に続く「地球に強くなる三部作」完結編!

黄河、アマゾン川から多摩川、天竜川まで――いままでになかった「推理小説のような」川の本!

地球上には無数の川が存在しています。最初は同じ雨水なのにその姿は千差万別で、ときに人間には信じられないふるまいを見せます。

川の面白さは、家で地形図を広げて眺めているだけで、「なぜこんな姿をしているんだ?」という謎が次々に浮かんでくるところにあります。

標高数千メートルのヒマラヤ山脈を越える川、砂漠でいきなり洪水を起こす川、黄河・揚子江・メコン川の不思議な流路、

平地より高く流れる川、ほかの川の流れを奪う川……まるで魔術のような数々の現象は、なぜ起こるのでしょうか? 

第1部では「地形の名探偵」とともに、これら川のマジックの謎解きに挑んでいただきます。

また、一つの川の流れには、いくつものドラマチックな物語があります。第2部では、川の「運命」を大きく分ける分水嶺にはじまり、

上流・中流・下流それぞれに秘めた川という地形の正体を、最もポピュラーな川の一つ、多摩川を下りながら見ていきます。

プレートテクトニクスとの密接な関係から、その意外な「終着駅」まで、大きなスケールで多摩川をとらえなおします。

そして第3部では、著者が地形図をにらみながら独特の推理を働かせて、川の定説に大胆に挑みます。なかでも圧巻は、

「天竜川の源流は諏訪湖」という常識への挑戦です。想像の翼を広げた仮説が指し示す、驚きの「源流」とは?

時空を超えた、壮大な地形のミステリーツアーをぜひ体験してください。

感想・レビュー・書評

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  • あまり知識のない人にも楽しめるように、工夫して書かれている
    著者の地学以外の知識の広さも感じられ、面白く、
    良書であった

    ヒマラヤを乗り越える川、河川の争奪、流れる川、さまよえる川、海底を流れる川
    このようなタイトルだけで「ハテナ?」でいっぱいになる

    気になったものをピックアップ

    ■富士山には川がない
    静岡県にある柿田川は源流がない
    いきなり平地から現れる
    正確には崖下からいきなり川が始まるらしい
    これを柿田川湧水地という
    しかしながら柿田川の水は実は富士山から来ている
    だが富士山には川がない
    なぜか
    富士山というのは山内の内部に3つの山が隠されている
    一番古い「先小御岳(せんこみたけ)」は今から約27万年前、順に「小御岳」、「古富士」で、この「古富士」が約10万〜1万年前にできたと言われている
    これらの山の上に噴火により今の富士山が乗っかったいわば4階建ての構造
    この噴火で流れ出したのは玄武岩の溶岩でさらさらしており、流動性が高い
    そのため、富士山に降った雨や雪解け水は表面を覆うそれらの割れ目や穴を通して山体の中へ浸み込んでしまう
    ところが古富士の溶岩は同じ玄武岩でありながら、緻密で割れ目や孔がほとんどない
    よって古富士に浸み込まず表面を流れ下りる
    (これを伏流水という)
    柿田川は富士山からえんえんと流れてきたこの伏流水が顔を出すところなのだ

    ちなみに柿田川は四万十川、長良川とともに日本三大清流のひとつ
    (初めて知った!この辺りだと富士山にばかり魅せられちゃうからなぁ…行ってみたいものだ)


    ■川の終着駅は
    川は海に注ぎ込まれ終わりといえばそうであるが、さらに海の傾斜に沿って流れ下る
    その行き先は海溝で、ここが終着地である


    ■海底谷
    なぜ海に入った川の水が拡散せず海底を流れるか
    海底には陸上の川を延長した谷である「海底谷」という海底を流れる川がある


    ■海底谷が運んだ堆積物
    海底谷が陸上から運び込む堆積物のとてつもない量に驚く
    相模湾の中央に4000m以上、富士山より高く積もっている
    もっと凄いのはベンガル湾
    こちらは9000m、エベレスト以上
    このように堆積物が大量にたまるとその中に含まれる有機物が変質する
    これが天然ガスや石油などの有用な資源へと生まれ変わるのである
    やはり川の規模の大きい場所は石油資源が大量に埋蔵されている
    (だから日本には石油がないのね…)
    川が地球の物質循環の大きなサイクルとなっている



    多摩川を例にし、源流から海までを下りながら、川の基本を教えてくださる…と読者への見せ方がなかなか面白い
    他にもたくさんの興味深いトピックがあった
    もう少し知識を増やしてから再読してみたい

    子供の頃、断然「川」より「海」!
    と川の魅力を理解していなかったが、年を重ねたせいか?近頃は奥深い川がとても気になっている
    立派な一級河川である最上川を見た時は圧倒され、黒部の源流近くでは力強い生命を感じ、長良川はもう見てるだけで清められていく…(笑)
    もちろん視覚的だけでなく、音も大好きだ
    (癒されますよね!)
    著者も日本人が川に独特の思い入れを持つのは「流れ」があるから…だと言い、はかなさや無常さを感じ取るからではないかとのこと

    この「流れ」が生み出す地球上の神秘をもっと知ってみたい

    • goya626さん
      地学系の本も面白そうですね。5合目から富士山登山をしたとき、川はなかったですね。何合目あたりに湧水があるのだろう。それとも、もっと下の方?清...
      地学系の本も面白そうですね。5合目から富士山登山をしたとき、川はなかったですね。何合目あたりに湧水があるのだろう。それとも、もっと下の方?清流ですが、四万十川は意外ときれいじゃないらしいですよ。ブラタモリで言っていました。
      そうそう蒲郡ですが、ときどき竹島に行ったり水族館に行ったりします。竹島水族館は小さいけどなかなかいいです。いつも日帰りなので、クラシックホテルに泊まって海を一日中見てるっていうのもいいですねえ。一度やりたい。
      2020/09/11
    • ハイジさん
      goya626さん
      コメントありがとうございます
      富士山自体に川がないのです!
      富士山の地中に浸み込んでしまうため、地下水(伏流水)となって...
      goya626さん
      コメントありがとうございます
      富士山自体に川がないのです!
      富士山の地中に浸み込んでしまうため、地下水(伏流水)となって流れ、地表に現れるのです
      こちらで紹介した柿田川をはじめ、白糸の滝や、羽衣の湧水、忍野八海、など富士山周辺には富士の水が湧き出る場所が沢山あるみたいですよ
      地学の面白さに最近ハマり始めたばかりです!

      蒲郡の竹島水族館はリニュアルしてから行っておりませんのでぜひ行ってみたいです
      楽しそうなところになったみたいですね
      名古屋方面から蒲郡へ向かう23号線の高台から、蒲郡の海が見えるあの瞬間がとても大好きです(^ ^)
      2020/09/11
    • goya626さん
      23号線の高台、いってみます。
      23号線の高台、いってみます。
      2020/09/11
  • ◯山はどうしてできるのか、海はどうしてできるのか、から最後の一冊とのことだが、すっ飛ばして山の次に川を読んでしまった。しかし、内容的には特に問題ない。それでいてわかりやすく面白い。読み物としての工夫がふんだんに凝らしてあり、読者を惹きつける。
    ◯四万十川の下は、ブラタモリで出た話でもあったため、興味深く読んだ。しかし番組の方が詳しいのは紙面の問題もあると思われる。
    ◯巻末の著者による試論も面白い。超大陸の川の話はロマンがあると思う。
    ◯しかし、川は流れていくものだけに、物的客観的資料も流されてしまうことで研究も難しくなるという面があるが、地学も近年でも大きな進歩を遂げていることから、いつか川の歴史も判明していけば、今後の治水にも役立つ上に、何よりも面白かろうと思う。

  • ブルーバックスによる川の入門書。
    第1章で川にまつわる数々の謎を解き明かした後、第2章では多摩川を取り上げて上流から下流へと旅をし、最後の第3章には地球と川のちょっと大胆な仮説まで。
    読みやすく、エキサイティングで、すこぶるおもしろい。

    取り上げられている謎は、例えば標高4000mのヒマラヤを超えていく川、源流がない川、砂漠で起こる洪水とさまよえる湖、河川間の争奪合戦とさまざま。
    意外に数が多い天井川(平地より高いところを流れる川)や河岸段丘の出来る経緯も興味深い。

    中でも驚いたのは、海の中でも川が流れているというお話。源流から流れ出た川は、長い旅をして海へと至る。けれどもそこで終わりではなく、川に含まれる土砂はさらに海底の傾斜に沿って流れていく。行く先は海溝だ。日本海溝の最深部は水深9000mを超える。ここから例えば富士山を見上げれば、1万3000mもの高さに見える。日本に降った雨水は、最大それだけの落差を流れ下っていることになる。こうしたことがわかってきたのは海底の研究が進んだことが大きい。
    海溝に流れ込んだ土砂はプレートの運動により地球の内部に運ばれ、火山活動などで再び地表へと戻る。
    川は地球の物質循環の大きなサイクルを形作る1つであるわけだ。

    多摩川を例にとりながら、上流・中流・下流に関するトピックを語る第2章では、分水界とは何か、日本の川は世界の川の中で本当に急流なのか、扇状地や中洲はどうしてできるか、などを解説していく。多摩川の特徴的なスポットを巡り、ちょっとした河川散歩の気分である。章の最後にはイラスト地図付き。

    第3章では、著者による大胆仮説が3つ。アマゾン川とニジェール川は実はつながっていたのではないかなど、素人が聞いてもちょっと大胆過ぎて、証明のしようもなさそうなのだが、何だかわくわくさせられる話でもある。
    地球の大きな動きと川のなりたちに深いつながりがあるのだとしたら、あるいは太古の超大陸パンゲアには、想像もつかないような大河があって、今の川はその名残りである、のかもしれない。
    滔々たる大河がたたえるロマンである。

  • 初めの二章で川の基本を学び,最終章で川にまつわる大胆な仮説を紹介。著者は地球科学者で,山や海の本もブルーバックスから出しているそう。
    第一章で世界の川の豆知識13,第二章で多摩川を源流(笠取山水干)→河口→海溝(坂東深海盆)と辿る旅,というように工夫されていて,楽しく読める。
    最後の大胆仮説は,著者自身「妄想に近くて検証もほとんど不可能」と断っているのだが,そのぶんスケールが大きくて面白い。天竜川の本来の源流は諏訪湖でなくロシアで,1700万年前まではウスリー川から信濃川→天竜川→大平洋と流れていたとか,超大陸パンゲアではアマゾン川とニジェール川は一つの川だったとか,標準的サイズの大陸には必然的に大河が三本できるとか。一見突拍子もない話ってつい警戒してしまうけど,およそ現世と関わりがない話だったりすると安心して楽しめるのがいい。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99703948

  • ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB16901831

  • 様々なトピックを交えながら、わかりやすく解説。
    川、河にはロマンと文学の香り…

    楼蘭、敦煌、柿田川、多摩川の源流などに特に興味を惹かれた。

    学問的考察は少なめ

    読了60分

  • 多摩川を源流からなぞっていく箇所は、親しみのある川なので面白く読めた。

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著者プロフィール

ふじおか・かんたろう
静岡大学防災総合センター客員教授。1946年京都市生まれ。東京大学理学系大学院修士課程修了。理学博士。専門は地球科学。東京大学海洋研究所助手、海洋科学技術センター深海研究部研究主幹、グローバルオーシャンディベロップメント観測研究部部長、海洋研究開発機構特任上席研究員を歴任。「しんかい6500」に51回乗船し、太平洋、大西洋、インド洋の三大洋初潜航を達成。海底地形名小委員会における長年の功績から2012年に海上保安庁長官表彰。著書に『山はどうしてできるのか』『海はどうしてできたのか』『川はどうしてできるのか』『三つの石で地球がわかる』『フォッサマグナ』『見えない絶景 深海底巨大地形』(いずれも講談社ブルーバックス)など。


「2022年 『天変地異の地球学 巨大地震、異常気象から大量絶滅まで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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