マニ教 (講談社選書メチエ)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062584869

作品紹介・あらすじ

ゾロアスター・イエス・仏陀の思想を綜合し、古代ローマ帝国から明代中国まで東西両世界に流布しながら今や完全に消失した「第四の世界宗教」。「この世」を悪の創造とし全否定する厭世的かつ魅力的なその思想の全貌を、イラク・イラン、中央アジア、北アフリカ、ヨーロッパ、中国に亘りあまねく紹介する世界初の試み。

感想・レビュー・書評

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  • 本書では、キリスト教から異端として徹底弾圧され、イスラム教徒の戦いに敗れたのち、中国で14世紀まで生き残った「マニ教」の盛衰を描かれている。
    マニの想像力のたくましさに驚くと同時に、滅びたために「壮大なるいかさま」と中傷を受けるこの世界宗教の底知れなさに慄然とした。

  • 図書館で借りた。
    第四の世界宗教とも言われるマニ教。中東から発祥しているだけに、日本人には馴染みが薄いイメージがあるが、「マニ教が分からなければ、世界史は分からない」とも言われる。そんなマニ教について記述された一冊。
    マーニーの伝記的な生涯の記述や、史料から見えるマニ教といった語り口。

    天才的なマーニーの考えをなんとなく理解することができた。文字まで発明したってのは、他の宗教指導者とは一線を画す天才なのだろうと感じた。

  • ゾロアスター教やイランイスラーム教を専門とする著者による,マニ教についての概要。教祖であるマーニーの生涯について,その後世界各地での拡大と衰退について書かれている。

  • 軽妙な筆致で、マニ教文献の再現過程、マーニーの生涯とその思想、マーニー後の歴史等がつづられる。特にマーニーの生涯と思想の件(くだり)は、筆者の目線によるツッコミが随所にちりばめられ、読みながらフイてしまうこともしばしば。たしかに時代も文化背景も違う現代のわれわれからは、古い宗教的要素は珍妙に見えることもあるものだが。
    だが、マニ教の神話などは現代人の目から見ても興味深く、壮大なファンタジー物語のようだ。というよりたぶん、現代人の思い描くファンタジー物語にも、その根底に古い時代からの宗教的イメージと同じものが流れているのであろう。

    若きマーニーの孤独と苦悩から発せられるメッセージは、世界から疎外されたように感じている現代のわれわれに差し込む、一条の光のようである。

  • 陳舜臣「桃源郷」つながりで。死後、弟子たちが書き留めたものが聖典になるケースにくらべ、マニ教は開祖マニが存命中に、かっちりとした聖典をさだめ、各地に布教者を派遣。メリットでもあり、後世にて、思想の伸張性が失われるというデメリットもあった。聖典と細密画を軸に、布教。ただし、言語的には東アラム語、中世ペルシア語が死語になるという誤算、物質的には羊皮紙重視で、一部例外をのぞきまったく残らず。ササン朝で、シャープール一世期の30年間、繁栄を誇ったが、その後は、弾圧、異端視など、紆余曲折を経て、一時期、百年たらずのあいだ、天山ウイグル王国の国教となったのが最後のきらめきだった、と。以下備忘録的に。/マーニー=ゾロアスター教、キリスト教、仏教の総合者という学説は影を潜め、それらの要素は壮年期以降の伝道の過程で吸収した、という見方/セム的一神教の諸預言者の封印、という地位は、予見していたマーニーではなく、ムハンマドの方へ移行していった/アラム文字から独自のマーニー文字を開発、イラン語文化圏に大きな影響、書写で母音表記を可能にし、面倒なロゴグラム、一文字多音、史的表記を廃止させた。/マーニーの教えの魅力は、宇宙の起源や人間の使命について途方もない瞑想を可能にする点/日本への間接的影響としては、藤原道長ら公家の日記で、日曜日を「密」と記すのは、マーニー教の影響なのだとか。/聖職者:殺生・暴力・自殺の禁止、肉食、飲酒、性交の否定 一般信徒:肉食、飲酒、性交は可能、聖職者を支えることで功徳を積む 異教徒:マーニーが示した倫理とは無縁の存在

  • アウグスティヌスが若いころに入信していたとは聞くが、なかなかその全貌が分かりにくマニ教についての本。なかなかここまで全体像を解説した本も少ないのではないだろうか。

    内容は、マニ教の史料の発見史、マーニーの生涯を追い、その教理を説明するととともに、さまざまな宗教を飲み込みながら成立し、人工の宗教といわれるようにその限界性にも追及している。

    マーニーの死後、マニ教の教会史として、発展とともに、中国で残っていく様子も書いてある。

    ゾロアスター教やマニ教に興味がある人は一読すべき本。

  • アウグスティヌスの「告白」を読んで以来、マニ教については気になっていたが、無精して辞典を引いた程度にしか調べなかった。

    今回、入門書として本書を購入し、一読。マニ教の教義をはじめ、開祖マーニー・ハイイェーの生涯、マニ教教会の歴史と各地への伝播の様子を知ることができた。

    マニ教が、この世界を「光と闇の闘争の歴史」として描いたのは知っていたが、その神話の内容がこれほど面白いとは思わなかった。

    「闇の勢力」が〝光の要素〟を取り込み、その回収を図った「光の勢力」その闇を封じ込めるため、この宇宙を創造。光の勢力が差し向けた神々たちが、封じ込められた闇に迫り、はき出されたのが、いま存在する人間を含めた生物たちだという。したがって肉体という闇の要素が滅ぶことで、光の要素が回収されるという、ペシミスティックな筋書きが内蔵されている。

    教祖マーニーはこういった神話を独力で完成し、人々に説いただけでなく、自ら数々の聖典を執筆。最終的な預言者を意味する〝預言者の封印〟を自称した。弟子たちはそれら聖典を書写し、世界各地の文化や地域性にあわせ内容を改変し、教えを広めていった。キリスト教圏では当然ながら異端扱いされ、イスラーム教とも相容れず、迫害の憂き目にあう。ウイグル国では国教とされるも、遠く中国で細々と命脈を保った信者も16世紀には完全にいなくなり、滅亡する。

  • マニ教についての概説本。マニ教についての研究、マニ教の概説、教祖マーニーの生涯、マニ教の盛衰まで書かれている入門書。

    マニ教を知るうえでは便利な本だと思う。今まで、あまり語られていない宗教だが、中世のアラブ圏、欧州圏の宗教、文化の理解には必要なものかもしれないと、この本を読んで思った。

    個人的には、マニ教の教えが面白く読めた。こんな時代にこんな厭世的な考え方を持った宗教があったとは驚きだ。

    面白い本。歴史が好きな方はどうぞ。

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著者プロフィール

昭和19年生 名大卒 愛知淑徳大学非常勤講師 「中原中也の会」理事 詩人 作家 文芸評論家
著書「星からの風」(新潮新人賞)「中原中也」「幕末漂流 日米開国秘話」ほか

「2019年 『季刊文科 79号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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