悪代官は実はヒーローだった江戸の歴史 (講談社+α新書)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062726900

作品紹介・あらすじ

借金だらけの質素な生活に文句もいわず、領民の生活向上のために汗を流した真の武士。

感想・レビュー・書評

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  • テレビの時代劇に出てくる代官さんは悪代官が多いけれど、実際の江戸時代の代官さんは今の一般国家公務員同様苦労多くて益が少なく、実直で優秀な実務家が多かったという。
    むしろテレビでは良い人の「遠山の金さん」のモデルの遠山金四郎さんは天保の改革で芝居小屋を閉鎖しようとした幕府に反対したことで歌舞伎役者の支持を得たからイケメン有能奉行として芝居になっただけで実際は見た目も能力も微妙な方だったらしい。
    この本を読んで実際の歴史とTVで知っている話は全然違ったりするのだな…と思いました。メディアの影響って大きいね。

  • 江戸時代を描いたドラマでも小説でも漫画でも悪者の代名詞として使われてしまう悪代官。
    しかしこの本を読むと代官への認識が180度変わるだろう。
    薄給で多忙ですすんでなりたがる人の殆どいない中間管理職。
    困窮した領民の為に私財を投げうったり切腹覚悟で行動を起こしたりした代官のなんと多いことか。
    それなのに現在はやたらと町奉行が英雄視され代官は悪いことをするという認識がまかり通っている。
    演出と史実を混同してしまうのも悪いといえば悪いが、名代官を主役にしたものがなさすぎるのもどうかと思う。

    読めばわかるが、史実にのっとった名奉行は殆どおらず名代官の多さにびっくり。 
    そして時代が下がるにつれての町奉行の腐敗ぶりにもびっくり。

    そして学校の教科書で習った歴史のいい加減さにも更にびっくり。 
    士農工商の厳しい身分制度で一生身分が変わらないなんて事はなく、才覚があれば農民から幕府の要職にまで上り詰めることも不可能ではなかったんだよねぇ。

    さらにはかなりの訴訟社会でもあった訳だ。 農民も町民も庶民もなにかありゃぁバンバン訴え出てたと。

    こんなの学校では習わなかったもんなぁ。

    試験の為の勉強より、こういった話を授業で沢山した方が確実に歴史を面白いと思う人が増えるだろうに。 

    とこの手の本を読むと毎回思う。

  • 江戸時代の「代官」の仕事ぶりについて、史料から明らかにしようとしている本。代官とは、天領(幕府領)の政務を取り仕切る多忙な役人であり、下級の旗本が務めることが多かったらしい。すなわち、現場の最前線で実務を指揮統括する立場であり、苦労が多いのに実入りが少なく、割に合わないポジションであったことは、現代とそれほど事情は変わらない。本書によると、災害や飢饉で困窮した民を救った結果、借金を返せなくなって切腹した代官は枚挙に暇がない。また、部下の役人が悪事を働くと、民衆はすぐに江戸に直訴に行き、代官は監督責任を問われ罷免されてしまう。3代続いた代官はいないとも言われるほど、代官の職は過酷であった。江戸時代の270年の平和を支えていたのは、江戸にいた将軍や老中や奉行ではなく、地域に根ざし、善政を布いた代官だったのかもしれない。水戸黄門に登場するようなステレオタイプな代官像を覆す良書。(いわゆる「悪代官」もいないわけでは無かったらしいが)

  • チェック項目8箇所。代官が誤解されているのは、江戸時代の農民が知られていないことにも由来する、江戸時代の農民たちは非常にしたたかであり、むしろ代官のほうがよっぽど苦労した。江戸時代、私領(大名領、旗本領)でも幕領でも、年貢は「五公五民」が基本だった。島原・天草一揆こそ、江戸時代の最初で最後の一揆だった、「信達騒動記」……「このたびの騒動、寛永の頃、天草四郎や由井正雪の類の一揆とは違い、強訴なので、て道具を持たないことはもちろん……」、一揆は武器を持って戦うが、強訴は戦わないので武器は持たない、信達騒動は大規模な百姓一揆のように見えるが、武器を持たないので一揆ではない。五代将軍綱吉の時代に、51名の代官が処分されている、このように幕政改革があると、最初に荒波をかぶるのは幕領支配の前線にいる代官たちであった、代官だけは家柄が通用しない実力の世界である。天保の飢饉に見舞われ、奥州出羽は飢餓に陥る、それをきっかけに天保6年(1835)藩は、「女買入」を代官に命じた、そこで、飢餓に苦しむ最上領から女性を買い入れ、「村々の妻なき男に配当する」ことになった、買い入れる女性は14、5歳以上、場合によっては12,3歳でも可能とした、これは数え年なので、現代の女子高生以前の年齢にあたる。秀吉政権下でも何かというと、「一郷一町曲事。御成敗くわえられるべきこと」と連帯責任で村や郷、一町全員が殺された。八大将軍吉宗と大岡越前守忠相の最大の功績は、農民出身の高級官僚を作り出したことにある、ここに江戸幕府中興の祖たりえた理由があった。林鶴梁代官は異国船騒ぎのあと、海防を憂うあまりか、激務のせいか、突然吐血した、その後、快方に向かったが、再び夜中に吐血して、翌朝駆けつけた医師に「童便」を指示された、「童便」とは、童子の便のことで、子供の大便を干して粉にし、これを丸薬として生姜汁とともに飲む。江戸の歴史をつぶさに見てみると、代官たちは真摯な姿勢で領民と向き合い、領民の生活を少しでも改善させるために日々奔走していたことが分かる、水戸黄門が定着させた「悪代官」のイメージとは対極に位置する代官たちが、現実には大勢いたのである。

  • 実在の人物は、真っ黒な人も居ないし、真っ白の人も居ない。勧善懲悪なんてお芝居の世界だけ。まぁ、さらっと読めるのは良かった。

  • 時代劇や常識としての江戸の認識とのギャップ。具体的な史実。伊奈家が代官としての栄枯盛衰を体現?でもやっぱり昔の人の名前はややこしい。
    「うんこ」に反応してしまう自分の下品さに苦笑いだが、「童便」薬は中国の「童子蛋」に通じるものがあるかも。

  • ご先祖様が登場してちょっと嬉しくなったが,タイトルの「悪代官・・」というのは納得しがたい~水戸黄門の都合で悪者にされた代官であるが,全国に名代官が存在し,大飢饉で実力を発揮するものもいれば,教育・雇用・福祉政策に力を入れたものもいた。天領というのは明治以降の言い方で,江戸時代の幕府直轄領を召し上げてから始まったので,江戸時代は代官所と言うべきだが,幕領でいいだろう。身分は高くなく,少人数で仕事をこなし,経費の半分は人件費に消え,借金まみれで商人との関係も良好に保たざるを得なかった。徳川家康も一目置いた名代官は伊奈忠次,「神」と崇められた農民の味方が岡上(登)景能,天草代官の鈴木重成は領民第一を考え,御家人から身を興した小野一吉は遠国奉行まで出世した。山口高品は土地開拓に命を懸け,上州代官・野口辰之助は手代の不始末でノイローゼとなった。名代官・中井清太夫こそ例外的な悪代官であったが,領民と癒着していた程度のものだ。浅間山噴火(1783)では代官が人助け精神を発揮し,奥州から始まった打ち毀しは小名浜の蔭山外記は穀止め・酒造禁止で飢饉を救った。飢饉を食い物にする高級官僚がいる中で,町奉行は無能ぶりを見せ,長谷川平蔵も千人を捕縛したが,関東郡代・伊奈忠尊の人気で豪商が動き,飢饉は収拾に向かった。飢饉後の復興では,早川正紀が美作で間引きの実態に心を痛め,銅山の復興で農村経済を立ち直らせた。無宿人を農村に定着させようとしたのは竹垣直温で,大阪代官の篠山十兵衛は青物市場に農民の立ち売り店を開かせることに尽力した。大岡越前によって登用された代官は八王子を中心に活躍。遠山金四郎は水野忠邦が芝居小屋を廃止しようとしたことに反対して,芝居で名奉行との誉れを得た。幕末には学者から代官に鞍替えした岡田寒泉や林鶴梁がいたし,羽倉外記は劇盗忠次小伝を引退後に書き残した。最後の代官・荒井顕道は牧民金鑑を遺して明治時代の土地政策に影響を与えた~ご先祖様というのは,岡登景能で,佐倉宗五郎のついでに出てくる感じで,しかもちゃんと事績を紹介していないので,他の部分もいい加減なのかと疑ってみたくなる。代官に注目する点は良いんだけどね

  • 正直『代官』という役職が一体何をしているのか知らなかったし、あまり興味もなかったのですが…まさしくヒーロー!!
    弱きを助け、高級官僚には意見する!
    辛い仕事だけど、人の生き死にが関わるから妥協はしない!

    …な、なんて素晴らしいんだ…!こんな名代官たちがいたなんて!

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著者プロフィール

古川愛哲(ふるかわ・あいてつ)

 1949年、神奈川県に生まれる。歴史資料収集家。日本大学芸術学部映画学科で映画理論を専攻したあと放送作家として活躍。同時に、東西の歴史や民俗学をはじめ「人間とは何か」を追求。また、世界の映画大学ともいえる「国際学生映画祭」の創設に加わり、新しい視点から芸術をバックアップする。
 著書にはベストセラーになった『江戸の歴史は大正時代にねじ曲げられた』『九代将軍は女だった!』『江戸の歴史は隠れキリシタンによって作られた』『坂本龍馬を英雄にした男 大久保一翁』『悪代官は実はヒーローだった江戸の歴史』『原爆投下は予告されていた』(以上、講談社)などがある。

「2017年 『西郷隆盛の冤罪 明治維新の大誤解』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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